閉経後の女性は特に注意! 筋肉が減少する「サルコペニア」の危険度チェック

転倒・骨折につながる、『サルコペニア』は筋肉低下の症状です。一度なってしまうと悪循環で治りにくくなりますので、日頃の生活から改善していきましょう。今回は、東京都健康長寿医療センター 副院長の荒木 厚(あらき・あつし)先生に、要介護のリスクが高まる「サルコペニア」についてお聞きしました。

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サルコ(筋肉) + ペニア(減少) = サルコペニア(筋力低下)

サルコペニアの悪循環

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転倒・骨折につながり要介護リスクアップ

寒い日が続き、室内でじっとしていると運動不足になりがちです。

しばらくすると、以前は問題なく行けた買い物も、「つらい」と思うようになることがあります。

自宅の階段を上ろうとしても脚が思うように動かず、家事をするにもひと苦労。

そんな生活が続いたある日、部屋の中で転倒・骨折してしまう...。

このような事態を招くのが「サルコペニア」です。

「サルコペニアは、筋肉量が減って筋力や身体能力が低下した状態です。体を動かすことが難しくなるため、さらに筋肉量が減るといった悪循環に陥ります。結果として、寝たきりの一歩手前の『フレイル(心身の虚弱)』につながるのです」と、荒木厚先生は説明します。

サルコペニアは、ギリシャ語の「サルコ(筋肉)」と「ぺニア(減少)」を合わせた造語です。

高齢になるにつれて発症しやすく、要介護リスクのみならず、糖尿病、肺や腎臓の病気を悪化させ、心筋梗塞や脳卒中、認知症のリスクも上がると報告されています。

「女性の場合は閉経に伴う骨密度の低下や生活習慣病の悪化、定年などの社会環境の変化で、運動習慣がない人はサルコペニアに陥りやすいのです。最近は、骨粗鬆症とサルコペニアが合併した『オステオサルコペニア』という新しい概念も注目を集めています」と、荒木先生は話します。

閉経後は、女性ホルモンの減少により骨密度が低下する骨粗鬆症のリスクが上がります。

同時にサルコペニアが進行して筋肉量も減ることで、さらに転倒や骨折につながりやすくなるのです。

「背骨や大腿骨などの骨折をしてしまうと、入院治療が必要になり、サルコペニアをより悪化させることにつながってしまいます。そうなる前に、サルコペニアを改善・予防する心がけが重要といえるのです」と荒木先生はアドバイスします。

サルコペニアは医薬品や手術による治療法はないため、自分で運動したり、食事に気を付けたりするしか予防する方法がありません。

ならないための習慣を続けることが、なにより大事です。


「サルコペニア」の見分け方

《身体測定などで行うテスト》

●「5回いす立ち上がりテスト※」で12秒以上かかる
※両腕を胸の前で組み、できる限り早く、いすから5回立ち上がる。
※行う際には、いすがきちんと安定して置かれているか要確認。
  ↓
身体機能の低下
  ↓
サルコペニアの可能性あり

●握力が女性18kg未満、男性28kg未満
  ↓
筋力の低下
  ↓
サルコペニアの可能性あり

《自分でできる「指輪っかテスト」》

(1)両手の親指と人さし指で輪っかを作る。

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(2)ひざが90度になる状態でいすに座り、両足を床につける。前屈みになり、利き足でない方のふくらはぎの一番太いところを(1)の輪っかで囲む。閉経後の女性は特に注意! 筋肉が減少する「サルコペニア」の危険度チェック 2302_P079_02.jpg

指先どうしがつかず、ふくらはぎを囲めない
⇒サルコペ二アの可能性はほぼない

ちょうど囲める
⇒サルコペ二アの危険性あり

隙間ができる
⇒サルコペ二アの可能性が高い

サルコペニアの「可能性あり」「危険性あり」「可能性が高い」の場合はサルコペニア外来やフレイル外来、高齢診療科外来で専門の検査を受ける


有酸素運動、筋トレにたんぱく質も大切

自分がサルコペニアかどうかは、ふくらはぎの「指輪っかテスト」(上記)が一つの目安になるので、やってみましょう。

また、運動習慣がなく「最近、歩く速度が遅くなった」という人も要注意です。

筋肉は動かしていないと、どんどん減少していきます。

「健康のためにウォーキングをしている人もいると思いますが、歩いているだけではサルコペニアの予防には不十分なことがあります。筋力を養うためのレジスタンス運動(筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動)も不可欠です」と荒木先生は話します。

「筋肉を養うには食事も大切です。筋肉の材料となるたんぱく質を含む肉類、魚類、乳製品、豆類などをバランスよく食べることも意識していただきたいと思います」と荒木先生はアドバイスします。

閉経すると、女性ホルモンの減少に伴って生活習慣病が悪化しやすく、主治医から「食生活の見直し」をすすめられることがあります。

高LDL(悪玉)コレステロールや高血糖、高血圧の改善のためにダイエットをがんばっても、その結果、サルコペニアやフレイルを招いてしまうことも。

「ダイエットで体重が落ちると、脂肪だけでなく筋肉量も減ります。食事量は維持しながら、体を動かすことを心がけましょう」と、荒木先生。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

東京都健康長寿医療センター 副院長
荒木 厚(あらき・あつし)先生

京都大学医学部大学院修了。英国と米国に留学後、東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科部長を経て、2019年から現職。糖尿病と老年病の専門医・指導医で、フレイルを考慮した高齢者診療の普及に尽力。

この記事は『毎日が発見』2023年2月号に掲載の情報です。

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