数十年に一度の大流行! 来るべき「パンデミック」にどう対処する?/やさしい家庭の医学

数十年に一度の大流行! 来るべき「パンデミック」にどう対処する?/やさしい家庭の医学 pixta_8067144_S.jpg病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。

書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。

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世界的に大流行する感染症

「パンデミック」

●スペインかぜで4000万人が死亡

パンデミック」とは、ある感染症がかぎられた期間に世界的に大流行することをいいます。この意味合いから、現在では主に新型インフルエンザをさしていうことが多くなっています(本項でもパンデミックは新型インフルエンザの意味で扱っている)。パン(Pan)は「全世界的に」、デミック(Demic)は「広がる」という意味です。

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一方、局所的ないし一時的な流行については「エピデミック」という言葉が使われています。エピ(Epi)には「局所的に」という意味があります。

パンデミックという言葉が使われ出したのは、1918年に世界的規模で蔓延(まんえん)したスペインかぜのときで、当時の世界人口(約18億人)のうち、約4000万人以上が死亡したとされています。世界人口の中の約2%の人びとが死亡した計算になります。このとき、日本国内でもスペインかぜによる死亡者は多数発生し、約39万人ともいわれています。

スペインかぜも新型インフルエンザによるパンデミックなわけですが、その後、アジアかぜ(1957年・世界で200万人以上が死亡と推定)、香港かぜ(1968年・世界で100万人以上が死亡と推定)と続き、記憶に新しいところでは2009年の新型インフルエンザの蔓延(まんえん)となります。2009年のものでは、世界の210以上の国々・地域で感染が確認され、約2万人が死亡したとされているのです。

なぜパンデミック(新型インフルエンザ)が10~40年の間に定期的に起こるかといえば、それは人口の入れ替わりと関わりがあるかもしれません。つまり、新型のウイルスに対して免疫を持っていない人が多くなればなるほど、より多くの人が感染することになるためです。女性の多くは20代や30代のときに子どもを産みますが、それが新たな世代が形成される年月とイコールになるわけです。

2013年11月、WHO(世界保健機関)の報告により、中国で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに2人が感染したことが確認されました。現時点では人から人へ感染しているという根拠は確認されていませんが、今後も人から人へ感染しないとはいえないという研究結果もあります(東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染研究分野教授の河岡義裕氏の研究による)。

日本のみならず、世界を見回しても、人口密度が高く、高度な交通機関が発達した現代においてパンデミックが発生した場合の死亡者数は、スペインかぜのものを遥(はる)かに超すのではないかともいわれています。

私たちにできるパンデミックへの対策としては、マスクやうがい薬の備蓄や、流行中になるべく外出を控えることができる生活の仕組みを整えるといったことが挙げられるでしょう。

 

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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)

1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。


 

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『やさしい家庭の医学 早わかり事典』

(中原英臣[監修]/KADOKAWA)

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この記事は書籍 『やさしい家庭の医学 早わかり事典』からの抜粋です

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