超・長寿時代の日本を生き抜くために最も重要な資産は「健康」です。複雑な社会をサバイブできるメンタル管理、ワクチン接種で予防できるがんのことなど、堀江貴文氏が医師に聞いた「ホンネ情報」をお届けします。高パフォーマンスで人生100年を生きるためのホリエモン流「ライフスタイル革命論」です。
※この記事は『健康の結論』(堀江貴文/KADOKAWA)からの抜粋です。
前の記事「HPVワクチン接種で子宮頸がん発症リスクは約70%下げられる/堀江貴文「健康の結論」(5)」はこちら。
「20歳以上の女性は2年に1度は婦人科検診へ。」
日本人は「モルモット」になってしまうのか
現状、 先進国の中で、日本だけHPVワクチン接種率がずば抜けて低い(HPVとは、ヒトパピローマウイルスHuman papilloma virusの略。女性の子宮頸がんの原因となるウイルス)。よって正確な調査がおこなわれていないものの、感染率も高いと予想される。一方、他国は着実にHPV感染率が下がってきている。たとえば、HPVワクチンの「ガーダシル」は世界53か国で政府により接種が推奨されており、53か国中、公費助成がないのはたった3か国のみである。日本はその53か国にすら入っていない。
2007年からHPVワクチンプログラムが始動したオーストラリアでは、ワクチン接種開始以前と比較して、HPV6、11、16、18型の感染率が、HPVワクチン3回接種群で93%減少した。
驚くべきは、非ワクチン接種者においても、感染率が35%減少したことだ。これは、HPVワクチン接種により集団免疫効果もあることを示している。ハイリスクHPV感染率が格段に下がったことにより、子宮頸がん検診自体も、HPV陽性者にのみ、しかも、以前は18歳からを推奨していたが25歳からに引き上げることができた。
他国で着実にHPVワクチン接種の効果が現れつつある中で、日本でこのまま接種の推奨が差し控えられた状態が続けば、日本だけがHPVが蔓延する国として取り残されるのは必至だ。実際、ワクチンの接種率は推奨されていた時期の約70%から1%未満にまで下がったという。
ある医師は、海外の学会で外国人医師に「日本は今、壮大な社会実験をしている」と言われたそうだ。「ほとんどの国では国がHPVワクチンの接種を義務化しているのに、日本だけがやっていない。数十年後の統計データが楽しみだ」と。将来的に他国と比較して、どれだけ子宮頸がんの罹患率が上がるのか、日本政府は国民をモルモットにした臨床実験をやっているようなものだ、という壮大な皮肉である。
「HPVワクチンは初交前が最も効果的。」
本来は初体験前に予防するのが最も効果的
前述の通り、HPVワクチンはHPVにこれから感染するのを予防してくれるワクチンである。そして、HPVは一度の性交渉でも感染しうる。
米国のデータではあるが、14~19歳のHPV感染率は24.5%だそうだ。つまり、性体験の年齢はそれぞれであるにしても、初交前にワクチンを接種するのがHPV予防において最も効果的である。アメリカなどでは男児へのワクチン接種も推奨している。
以前に日本で公費助成によるワクチン接種が推奨されていたときは、中学1年~高校1年の女性を対象としていた。HPVワクチンの有効性持続期間については、それぞれ世界で販売開始されてからまだ約10年のため、10年以上後についてはあくまで推測であるが、モデルシミュレーションでは、20~30年間にわたる抗体価持続が推定されている。
13~16歳で接種し、そこから20~30年有効、となれば、一般的に性的に活発な10代後半~30代が十分にカバーされる。そして、注意しておきたいのが、HPVワクチン接種ですベてのHPV型が予防できるわけではないため、あわせて子宮頸がんの検診はちゃんと受ける必要があるということだ。
ピロリ菌と違って除菌できないHPV
予防医療普及協会では、これまで胃がんの原因である「ピロリ菌」の検査と除菌の啓発活動をおこなってきた。
感染が原因でがんになる、という点ではピロリ菌もHPVも同じだが、細菌である「ピロリ菌」には抗菌薬が効くが、ウイルスに抗菌薬は効果がない。さらに、HPVは表面に「エンベロープ」を持たないため、消毒に対する抵抗性が高い。「エンベロープ」とは、ウイルス粒子の表面にある膜状の構造で、これを持つウイルスは消毒用アルコールや石けんなどで不活性化することが比較的簡単だ。つまり、残念ながらHPVを完全に排除する治療法は存在しないのが現実である。
不幸中の幸いというべきか、除菌することはできないが、子宮頸がん検診は、がんができる場所の細胞そのものを採取して検査することができる。画像診断や腫瘍マーカーなど間接的なスクリーニング法しかない他のがん種と比較して、この点は大きなアドバンテージであり、合理的に考えれば子宮頸がん検診を受けない手はない。現在、子宮頸がん検診については、自治体による公費負担もあり、厚労省では20歳以上の女性には2年に1度の検診が推奨されている。
これを読んでいるのが女性なら、最後にいつ婦人科検診を受診したか思い出してみてほしい。もし受けたことがなければ、まずは一度婦人科へ。最後の検診はもう数年前という人も、ぜひこの機会に検診を予約してみてほしい。