更年期障害のドキドキも放置しないで! 「動悸」を遠ざける生活習慣と治療法

季節の変わり目や自律神経の乱れ、過度なストレスなどで生じる動悸。もしそれが心臓病の不整脈に関わるものだったら、突然死につながるような病気もあるので注意が必要です。そこで今回は、東京都健康長寿医療センター副院長の原田和昌(はらだ・かずまさ)先生に「動悸を遠ざける生活習慣や治療法」についてお聞きしました。

【前回】あなたの心臓は大丈夫? 胸が苦しい、脈が飛ぶ...命に関わる場合もある「動悸」の原因と背景にある症状

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更年期障害のドキドキも放置しないことが大切

一言で心臓病といっても、たくさんの種類があります。

生活習慣病や喫煙歴を持つ人は、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の発症リスクが高くなります。

また、風邪をひいた後に1~2週間動悸が続く場合は、心筋炎を起こした可能性があります。

その後、心筋が薄く広がって機能が低下する拡張型心筋症を発症するケースも見られます。

「高血圧の方は、心筋が肥大する肥大型心筋症を発症することもあります。心臓の壁が正常の2倍も厚くなり、心臓のポンプ機能が低下するのです。拡張型心筋症も、肥大型心筋症も、動いたときの動悸や息切れが起こりやすいので注意しましょう」と原田先生。

動悸には怖い心臓病のサインが潜むのですが、日ごろからストレスや更年期障害などで動悸を感じている人は、見逃してしまいがちなので自己判断は禁物といえます。

「動悸の原因にはたくさんの種類があるため、一度は医療機関を受診して診断を受けましょう。心臓病以外の可能性が高くても、動悸を放置しないことが大切です」と原田先生はアドバイスします。

心臓病以外に、甲状腺の病気でも動悸は起こります。

また、貧血でも酸素を運ぶ血液中のヘモグロビンが減少するため、心臓が血液をたくさん送り出そうと心拍数を増やし、動悸を感じやすくなるそうです。

いずれにしても、医療機関で動悸の原因を突き止め、適切な対処・治療を受けることが大切といえます。

「命に関わる心臓病でも、近年、治療法は格段に進歩しています。早期診断・早期治療で治る病気も増えました」と原田先生は話します。

生活習慣を見直し不整脈の予防から

動悸を防ぐには、脈が乱れる不整脈を予防することが重要です。

不整脈を起こしやすい増悪因子は、(1)睡眠不足、(2)疲労・過労、(3)カフェインのとり過ぎ、(4)喫煙、(5)香辛料のとり過ぎなどです。

喘息の薬などの副作用で不整脈が生じることがあるため、薬の服用後に動悸を感じたら主治医に相談しましょう。

「筋肉量が減ると心臓の機能が悪くなりやすいので、無理のない範囲で運動習慣を維持していただきたいです」

コロナ自粛で運動不足が続いている人も、3密を避けながら、少し息が上がるようなウォーキング習慣を心掛けると良いそうです。

もちろん、ウォーキングで動悸を感じたら医療機関へ。

「高血圧は心臓に負担をかけるため、減塩などの生活習慣の見直しや薬による血圧コントロールは重要です。家庭血圧測定で135/85mmHg以上は高血圧で、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが上がります」

こう話す原田先生おすすめの予防法の一つが、入浴中にゴムボールを握ったり離したりする「ゴムボール運動」。

ゴムボールを握ると血管を柔らかくするNO(一酸化窒素)が増え、血圧改善に役立ちます。

また入浴することで、心房から産生されるホルモン・心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が上昇して不整脈予防につながります。

つまり、入浴しながらの「ゴムボール運動」は、高血圧改善で心臓を守り、不整脈も予防する一石二鳥の方法なのです。

「第二の心臓といわれるふくらはぎをスクワットなどで鍛えることも重要です。いずれにしても、運動を始めるときにはかかりつけ医に相談し、ご自身の体調に合わせて取り組むようにしましょう」

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心房と心室の電気信号を伝える経路が余分にあるため、脈が速くなる頻拍性不整脈が生じやすくなります。心房で速い心拍が起こるため動悸を感じやすく、失神や息切れなどの症状に見舞われることもあります。電気信号を正すカテーテル治療などが行われます。

「動悸」を遠ざける生活習慣&治療法

【生活習慣】

しっかり休養&たっぷり睡眠

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過労や睡眠不足は脈を乱して動悸を起こしやすくします。無理をし過ぎず睡眠時間の確保を。

減塩&バランスの良い食事を

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高血圧は心臓に負荷をかけます。減塩やバランスの良い食事を心掛け高血圧を改善しましょう。

【運動】

ウォーキングは、ちょっとだけ負荷をかける

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少し息が上がる程度のウォーキングがベスト。ふくらはぎを鍛える筋トレも併せて行いましょう。

入浴しながらゴムボール運動

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入浴中にゴムボールを握ったり離したり。繰り返すだけで高血圧予防&心臓病予防になります。

治療法

睡眠時無呼吸症候群の改善には
寝るときにCPAP(気道に空気の通り道を確保する機器)を装着すると不整脈が減って心臓病のリスクを下げ、動悸の改善にも寄与します。


心臓病の治療なら
薬による治療、カテーテル治療(アブレーションを含む)、外科的な治療など病態に合わせて行われます。


その他にも
更年期障害や甲状腺の病気などにも薬による治療法があります。医療機関の受診を。

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取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>

東京都健康長寿医療センター副院長
原田和昌(はらだ・かずまさ)先生
1985年東京大学医学部卒。米国ハーバード大学研究員、東京大学医学部附属病院などを経て2012年より現職。日本循環器学会循環器専門医、日本高血圧学会専門医など。

この記事は『毎日が発見』2022年3月号に掲載の情報です。

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