動悸・息切れ、立ちくらみ...その「貧血」は深刻な病気が隠れているサインかも!? 「貧血セルフチェック」

貧血なんて誰にでもあること、鉄剤でも飲んでいれば大丈夫...、なんて油断は禁物。貧血の背景には、重大な病気が隠れていることもあるんです。そこで今回は、筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター 教授の萩原將太郎(はぎわら・しょうたろう)先生に、「貧血の症状や主な原因、セルフチェック方法」についてお聞きしました。pixta_77396728_S.jpg

「貧血」とは、血液中の赤血球の数が減少したり、赤血球の色素(ヘモグロビン)が少なくなったりして、十分な酸素が体のすみずみまで行き渡らなくなる状態のことです。

65歳以上の約10%が貧血状態にあるといわれています。

貧血になると体中が酸素不足の状態に陥るため、心拍数を増やして多くの血液を流そうとします。

「階段や坂道で動悸や息切れが起こる」「何となく疲れやすい」などの症状はそのためです。

「年齢のせい」と見逃されやすい症状ですが、慢性的に貧血が続くと、心臓が過剰に働くことで大きな負担がかかり、やがて心不全を引き起こすリスクもあります。

「貧血=鉄不足だから鉄を補えばよい」と自己判断して安易に鉄を摂るのはよくありません。

私たち世代の貧血では、背景に重大な病気が隠れている場合が多くあるからです。

貧血の根本原因を突き止めて、適切な治療をすることが大切です。

医師から漫然と鉄剤を処方されている場合もあるので、患者側から医師に貧血の原因を確認する姿勢も求められます。


[主な症状]
動悸・息切れがする
立ちくらみ、ふらつきがある
疲れやすい、全身の疲労感
脚のむくみがある

[主な原因]
骨髄機能が正常でない
出血による鉄分不足(胃がん・大腸がん・子宮がんなど)
ビタミンB12や葉酸の欠乏(胃切除の影響)

貧血とは?

赤血球あるいはヘモグロビンの量が減った状態

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貧血の原因はさまざま赤血球の大小で分かる

最も多いのは「鉄欠乏性貧血」です。

私たち世代では、胃がん、大腸がん、子宮がんなどによって慢性出血を引き起こしていることを疑う必要があります。

また、この年代から発症しやすくなるのが、「骨髄異形成症候群」です。

血液の細胞を造るもとの造血幹細胞に異常を来し、造血が十分に行われないことで起こります。

3分の1の患者が「急性白血病」に移行するリスクがあります。

その他、鉄以外にビタミンB12や葉酸の不足も貧血につながります(巨赤芽球性貧血)。

特に胃がんなどで胃を全摘した後は、ビタミンB12の吸収に必要な糖たんぱく質が胃から分泌されないため、要注意です。

女性では甲状腺機能が低下する「橋本病」が貧血の原因になることもあります。


赤血球の大きさで分かる貧血の原因と対策

※MCV(平均赤血球容積)の数値が赤血球の大きさの指標となる。

小球性

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赤血球が小さく、Hb値が低い

MCVの数値(※)
<80

主な原因
鉄が不足する(鉄欠乏性貧血)

対策
・胃がん・大腸がん・子宮がんなど原因となる病気を特定し、適切な治療をする
・鉄の摂取量不足が原因の場合、鉄を多く含む栄養バランスのよい食事を心がける。鉄剤などで補充することも

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正球性2105_P091_04_W500.jpg

赤血球の大きさは正常だがHb値が低い

MCVの数値
80~100

主な原因と対策
鉄は十分あるが利用できない(慢性疾患に伴う二次性貧血)

感染症・膠原病(関節リウマチ)・悪性腫瘍など、原因となる病気を特定し、適切な治療をする
甲状腺機能が低下(橋本病)

原因となる病気の治療をする

大球性

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赤血球が大きく、Hb値が低い

MCVの数値
100<

主な原因と対策
ビタミンB12や葉酸の欠乏(巨赤芽球性貧血)
⇒適切な栄養素を補う(ビタミンB12は注射で、葉酸は飲み薬で)

骨髄の病気で赤血球が減少(骨髄異形成症候群など)
⇒造血幹細胞の移植や抗がん剤治療、輸血などを行う

肝機能障害
⇒原因となる病気の治療をする


貧血の有無は「血球計数検査(血算)」で分かります。

赤血球の数、ヘモグロビンの濃度(Hb値)などを調べます。

貧血と診断された後に行われるのが「MCV(平均赤血球容積)検査」です。

MCVとは赤血球1個の平均的な大きさのことです。

容積の大小によって「小球性」「正球性」「大球性」と呼ばれ、この3つのタイプで貧血の種類をおおよその範囲で診断します(上記参照)。

診断内容によって、専門科でさらに詳しい検査を受けて、適切な治療につなげます。

《もしかして貧血? セルフチェックの方法》

手のひらの線
手のひらの線(手相を見る線)の色に赤みがあるか?

爪の色や形
爪の色がピンクか?中央がへこみ、先が反り返っていないか(さじ爪)?

《貧血の判定基準は?》

血液検査の血算データの項目にある「ヘモグロビン(Hb、血色素)濃度」の数値を確認する。以下の数値を基準に貧血かどうかが判定される。

〈貧血の判定基準〉ヘモグロビン濃度
一般の基準(WHOの基準)
男性(15歳以上):13g/dl未満
女性(妊娠していない15歳以上):12g/dl未満

●「脳貧血」と貧血は違う?
急に立ち上がったときなどにクラッとなるめまいを「脳貧血」と呼んでいますが、"貧血"とあるのは俗称で、貧血とは別物です。「一過性の血圧の低下」で脳が酸素不足になることが原因。立ち上がるときなどは「ゆっくり」を心がけましょう。

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取材・文・構成/古谷玲子(デコ) イラスト/片岡圭子

 

<教えてくれた人>

筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター 教授
萩原將太郎(はぎわら・しょうたろう)先生
1990年浜松医科大学卒業。日本血液学会指導医。東京女子医科大学血液内科非常勤講師。編著に『やさしくわかる貧血の診かた』(金芳堂)。

この記事は『毎日が発見』2021年5月号に掲載の情報です。

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