年を重ねるにつれ、誰もが感じるのが視力の衰え。いわゆる「老眼」ですが、これは加齢によって目の中の奥の水晶体が老化することから発症するもので、45歳前後を迎えるころから、ならない人はいない症状です。その仕組みや最新の医療技術、また、老眼になってからの生活を少しでも快適に送る方法などを、みなとみらいアイクリニック主任執刀医でクイーンズアイクリニック院長の荒井宏幸先生にお聞きしました。
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眼科医の検眼・診察で適切な1本を作りましょう
老眼鏡やメガネは街のメガネ店で気軽に作る人が多いと思いますが、目は非常に繊細な器官です。本当に自分に合った1本を作るには、基本的にまず眼科医の診察を受けてください。検眼をして、処方箋を書いてもらってから、メガネ店で作りましょう。
その理由は、作った後、医師がきちんとチェックして、目に合っていない場合にはメガネ店で作り直してもらえるからです。これは薬をもらうときに医師に処方箋を書いてもらうのと同じ。薬があまり効かなければ、後日改めて医師の診断によって症状を確認してもらうのと同じイメージです。
メガネには保証期間があり、通常、期間中1回は無料でレンズを替えてくれる場合が多いです。3カ月や6カ月などその期間は店によって違いますが、その間に眼科でチェックしてもらいましょう。
もちろん、メガネ店でも店員が専門の装置を使ってきちんと検査をしてくれます。認定眼鏡士(にんていがんきょうし)というメガネ合わせのプロがいるお店もあります。高い技術を持っているベテランもいますが、全てのスタッフがそのクオリティを持っているとは限りません。メガネ店はお客に「このメガネではよく見えない」と言われることが最も困るので、メガネの度数を強めに合わせることもありますが、遠くがよく見えるメガネで近くを見続けていると、まだ老眼世代でなくても目に負荷がかかり、目が疲れたり、目のトラブルを引き起こしたりすることになります。
メガネは個人個人の目の状態、目と目の間の距離、瞳の位置などに合わせて設計されています。眼科医はメガネの処方箋に瞳孔の間の距離などを記し、レンズの中心を瞳孔に合わせてフレームに入れるように設定しています。正しく見えるようにミリ単位で調整しているのです。度数についても、使う人の生活スタイルやよく見たいものなどを詳しく聞きながら決めています。
「最近よく見えないのはメガネが合わなくなったせい」と思い込んでいる方がいます。でも、それはメガネのせいではなく、目の病気によるものかもしれません。緑内障や網膜の病気だと、手遅れになってしまうこともあります。メガネの度数のズレが原因でなく、目の病気などの原因があって見えにくくなっている場合、眼科へ行けば、すぐに「それはメガネの問題ではないですよ」ということで必要な治療やアドバイスを受けて早期の解決を図ることができるのです。
メガネを作る時はまず眼科へ行く。これが基本です。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)
荒井宏幸(あらい・ひろゆき)先生
みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。1990年、防衛医科大学校卒業。近視矯正手術、白内障手術を中心に眼科手術医療を専門とする。米国でレーシック手術を学び、国内に導入した実績から、現在は眼科医に対する手術指導、講演も行っている。著書に『「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療』(講談社)、『目は治ります。』『老眼は治ります。』(共にバジリコ)ほか。