年を重ねるにつれ、誰もが感じるのが視力の衰え。いわゆる「老眼」ですが、これは加齢によって目の中の奥の水晶体が老化することから発症するもので、45歳前後を迎えるころから、ならない人はいない症状です。その仕組みや最新の医療技術、また、老眼になってからの生活を少しでも快適に送る方法などを、みなとみらいアイクリニック主任執刀医でクイーンズアイクリニック院長の荒井宏幸先生にお聞きしました。
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合わない人も多いのでまずはサンプルから
老眼初期の人やメガネに慣れていない人、老眼鏡をかけたくない、という人には、老眼用の遠近両用コンタクトレンズを使うという選択肢もあります。
「遠近両用コンタクトレンズ」というものがあり、これはレンズのピントが遠くだけでなく、近くや中間距離にも合うように設定されています。一般的にはドーナツ状に遠近の度が入っているレンズで、真ん中が遠距離用、その周りが中距離用、そのまた周りが近距離用というように何層にもなった構造で、逆に真ん中が近距離用、外側が遠距離用といったものなど、主要メーカーがいろいろな設計のレンズを作っています。ソフトタイプもハードタイプもあり、価格は1日使い捨てタイプのソフトで1カ月1箱3,000円ほどです。
遠近両用の老眼鏡の場合、自分の視線の移動で遠くのものや近くのものを見ますが、コンタクトレンズの場合は目の上に終始のっているので、視線の移動で見るわけではありません。網膜というスクリーンに、ピントが遠くと近くにそれぞれ合った2枚の絵が映り、脳が瞬時に見たいほうの絵を認識する「同時視」という仕組みでものを見ます。
光を分散させるため、暗いところで見づらくなったり、人によってはぼやけたり、にじんだり、まばたきでレンズが動くことによって視界が揺らいで見えるという違和感を持つこともあります。
同時視の見え方を脳が学習するまでに時間を要する人も多く、自分に合うレンズを見つけるのには少し時間がかかるでしょう。さまざまなメーカーのものを根気強く試してみることが大切です。
とはいえ、老眼を発症する40歳ころまで一切コンタクトレンズを使わずに生活してきた人がいきなり使うのは無理がある場合も。装用感が慣れない、コンタクトの見え方が慣れないという人もいます。逆に、コンタクトをずっと使ってきた人は、一度試してみるといいと思います。眼科で相談すれば、たいていの場合、無料のサンプルをくれるので、まずそれをつけて生活してみましょう。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)
荒井宏幸(あらい・ひろゆき)先生
みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。1990年、防衛医科大学校卒業。近視矯正手術、白内障手術を中心に眼科手術医療を専門とする。米国でレーシック手術を学び、国内に導入した実績から、現在は眼科医に対する手術指導、講演も行っている。著書に『「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療』(講談社)、『目は治ります。』『老眼は治ります。』(共にバジリコ)ほか。