年を重ねるにつれ、誰もが感じるのが視力の衰え。いわゆる「老眼」ですが、これは加齢によって目の中の奥の水晶体が老化することから発症するもので、45歳前後を迎えるころから、ならない人はいない症状です。その仕組みや最新の医療技術、また、老眼になってからの生活を少しでも快適に送る方法などを、みなとみらいアイクリニック主任執刀医でクイーンズアイクリニック院長の荒井宏幸先生にお聞きしました。
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遠近両用タイプ1本では目に負担がかかります
老眼と切り離せないのが、老眼鏡です。通常の老眼鏡は単焦点の凸レンズですが、最近、メガネ店では遠近両用タイプをすすめられることが多くなってきました。1本で遠くも近くも見えて便利ですし、見た目もスマートなので、選ぶ人も多いでしょう。
1本で済むのはとても便利ですが、目が疲れないようにするには数種類のメガネを使い分けるのがおすすめです。
遠近両用タイプは、1枚のレンズの中に遠くと近くが見える度数のレンズを組み込んだ構造になっています。2つのレンズが混ざっている部分が多いうえ、その遠近の度数の差が大きいので、どうしても視界にゆがんで見える部分が出てきてしまいます。例えば、下を向いて見たとき、手元の字はよく見えるけれど、少し離れた足元の階段はゆがんで見えて危ないということになるのです。
デスクワークをする時や本を読む時は近くが見えればいいので単焦点の老眼鏡、旅行に行っていろいろなものを見るなら遠近両用タイプ、ドライブをするなら遠くが見える近視用のメガネというように使い分ければ、目の負担を和らげることができるうえ、快適に見ることができます。
遠近両用タイプのほかに、遠くから中間の距離が見える弱めの度数を入れたものや、中間と近くを見るための中近両用タイプなどを使い分けるのもいいでしょう。見え方のゆがみも少なく、例えば、会社で仕事をする際に中近両用タイプを使用すると、書類、パソコン、向かい合った人の顔などが負担なく見えるようになります。
ただし、あまりに老眼鏡に頼りすぎると、目のピント調節を担う筋肉を使わなくなり、調節力の低下につながる可能性があります。無理して裸眼で見て目を疲れさせるのはよくありませんが、明るい昼間には老眼鏡をかけずに見るなどして、適度に目のピント調節機能も使うことが理想的。年齢や生活スタイルに合ったものを上手に取り入れるようにしましょう。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)
荒井宏幸(あらい・ひろゆき)先生
みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。1990年、防衛医科大学校卒業。近視矯正手術、白内障手術を中心に眼科手術医療を専門とする。米国でレーシック手術を学び、国内に導入した実績から、現在は眼科医に対する手術指導、講演も行っている。著書に『「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療』(講談社)、『目は治ります。』『老眼は治ります。』(共にバジリコ)ほか。