コロナ禍での外出自粛などで、いま全国のシニアがフレイル(要介護の前の虚弱状態)の危機にあります。そこで、東京大学高齢社会総合研究機構の教授である飯島勝矢さんの著書『在宅時代の落とし穴 今日からできるフレイル対策』(KADOKAWA)より、自宅でできる感染予防や、要介護予防についてご紹介します。
食べているつもりでも、実は低栄養。70歳以上の6人に1人が「新型栄養失調」にかかっている!
今、日本で栄養失調の人が増えていると聞いたら、みなさんはピンときますか?
かつてのような食糧不足や経済的な理由によるものではありません。
1日3食きちんと食べていても次のような症状を感じている人が、高齢者の間で増えているのです。
・いつの間にか体重が減った
・疲れるようなことをしていないのに、体がだるい
・低体温や低血圧に悩まされる
・夏でもよく風邪をひく
など、免疫力が低下しているこのような傾向がある栄養失調を「新型栄養失調」といい、70歳以上の6人に1人が該当するといわれています。
高齢になると食が細くなり、必要な栄養をとりにくくなりがち。
また、肉や卵、脂っこいものを避けたり、糖質を制限するなど、「体によい」と思ってしたことが、かえって栄養不足の原因になることもあります。
しかし、これこそ、「フレイル」につながる大きな原因。
老化を早め、抵抗力を低下させ、骨折や各種疾患のリスクを高めたりします。
高齢期になってからの体重減少は、フレイル予防に欠かせない「筋肉」を失う可能性もあるので要注意。
栄養管理には年代ごとに次のような段階があることを、頭に入れておきましょう。
【40~65歳】
過栄養に気をつけ、メタボを予防。
【65~75歳】
過栄養に気をつけたほうがよい人と、低栄養に気をつけたほうがよい人がいるので、個別に対応する。
【75歳~】
新型栄養失調(低栄養)に気をつけ、フレイルを予防する。
低栄養のいちばんの原因は、たんぱく質不足
年をとると新陳代謝が低下し、内臓の働きも衰えてきます。
脂質や糖質をとりすぎないよう、気をつけたほうがよいのも確かです。
しかし、たんぱく質は十分にとるべき!
フレイルの引き金になる新型栄養失調は、たんぱく質不足が最大の原因なのですから。
いまやほとんどの人が、健康のためにはバランスよく栄養をとることが大切だとわかっています。
「毎日、肉や魚を食べていますよ」という人が多いことでしょう。
しかし、摂取していても、たんぱく質の絶対量が足りていない!
とっているつもりでも、意外にとれていないのです。
人間の体をつくっているものは......
水分を除くと、体の半分はたんぱく質でできている!
体に必要なたんぱく質は、約20種類のアミノ酸からつくられる。アミノ酸の組み合わせによって、たんぱく質の種類は約10万種類にも及ぶ。
たんぱく質は私たちの体の約20%を占める成分で、上の図のとおり、水分を除けば体の半分がたんぱく質でできています。
食事からとったたんぱく質は、体内でアミノ酸に分解され、また結合して体に必要なたんぱく質につくり替えられます。
その数は、なんと約10万種類。
ところがそのうち、私たちの体をつくるアミノ酸は、およそ20種類だけなのです。
なかでも、必須アミノ酸といわれる9種類(成人は8種類)は、体内ではつくることができず、常に肉や魚などのたんぱく質を含む食品から補給しなければなりません。
イラスト/中村知史
要介護の手前の「フレイル」状態を防ぐために自宅でもできる健康法について、5章にわたって分かりやすく解説