身体活動量が3割低下した人も...。新型コロナによる生活の変化で気をつけたい「フレイル」とは

コロナ禍での外出自粛などで、いま全国のシニアがフレイル(要介護の前の虚弱状態)の危機にあります。そこで、東京大学高齢社会総合研究機構の教授である飯島勝矢さんの著書『在宅時代の落とし穴 今日からできるフレイル対策』(KADOKAWA)より、自宅でできる感染予防や、要介護予防についてご紹介します。

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自粛をきっかけにフレイルに。予防の第一歩は「気づき」です

「私たちは、どんなふうに衰えていくのだろう」。

年をとると、ふと思い浮かぶ疑問を徹底的に調査するため、スタートしたのが、「大規模高齢者フレイル予防研究」(通称・柏スタディ)です。

この研究は2012年から、東京大学高齢社会総合研究機構が中心になり、千葉県柏市などの協力を得て行われています。

そこから、「衰え」に関するさまざまなことが明らかになってきました。

そのうちの1つが、早い段階での「気づき」の大切さです。

人は衰えていくとき、健康な状態からフレイル(虚弱)を経て、介護が必要な状態になります。

できるだけ健康な状態を長く続けるには、どうしたらよいのか......。

それには、フレイルになる一歩手前のプレフレイルといわれる段階で、ちょっとした衰えに気づき、少しでも健康な状態に戻す努力をすることが重要です。

なぜなら、要介護状態になってから前の段階に戻ろうとしても、戻り幅がとても小さいのです。

「最近、疲れやすくなった」「あまり食べたいものがなくなってきた」「人に会うことが、前よりめんどうに感じる」。

このようなわずかな変化が、フレイルの前兆になります。

今年は新型コロナウイルスの感染予防のため、外出の自粛要請が出されました。

それによって、デイサービスの利用、かかりつけ医への通院をはじめ、買い物、家族や友人とのお出かけなども控えがちになり、外出の機会が減った人が多いことでしょう。

その結果、歩き方がぎこちなくなったり、ひざが痛くなったりするなど、数か月の自粛だけでもフレイル状態が悪化する人が出てきました。

高齢者は、もともと生活不活発になりやすく、新型コロナウイルスのために自粛要請が出た際には、その後の3か月ほどで、身体活動量が3~4割減少した人がいたようです。

「2週間、寝たきりの生活をすると、7年分の筋肉が失われる」といわれるだけに、身体的に衰えてくると、今まで難なくできていたことにも支障が出てきます。

しかも、体の衰え=身体的フレイルだけでなく、メンタルな部分や社会的な要素も絡み合い、フレイルが加速しやすくなります。

そうならないように、小さな変化に早く気づくこと。

本人も、周りの人も気をつけましょう。

老いの坂道の中間地点、フレイルってどういうもの?「体と心が衰えていく流れ」

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東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢 作図
葛谷雅文. 日老医誌 46:279-285, 2009 より引用改変

上図の左の「健康」なときは生活習慣病予防を行うために、腹八分目の食事、ウォーキングなどの運動が欠かせないが、50代を超えたあたりから、従来のメタボ予防を意識しつつ、「フレイル」を念頭においた健康づくりをするとよい。「プレフレイル」、「フレイル」の段階で気づけば「健康」の状態に戻れる可能性がある。

イラスト/中村知史

『今日からできるフレイル対策』記事リストはこちら!

身体活動量が3割低下した人も...。新型コロナによる生活の変化で気をつけたい「フレイル」とは 71b6ze8LnIL.jpg要介護の手前の「フレイル」状態を防ぐために自宅でもできる健康法について、5章にわたって分かりやすく解説

 

飯島勝矢(いいじま・かつや)
東京大学高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター教授。医師、医学博士。フレイル(虚弱)予防のための大規模コホート研究およびシステムを構築し、なかでも市民フレイルサポーター主導型健康増進プログラム(通称フレイル・チェック)を推進している。

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『在宅時代の落とし穴 今日からできるフレイル対策』

(飯島勝矢/KADOKAWA)

新型コロナによる外出自粛、人との接触制御という生活不活発によって全国のシニアが「フレイル」の危機、同時に感染症リスクが高まっています。「要介護の前の虚弱状態」であるフレイルには可逆性があり、早く気づいて生活習慣を見直すことで進行を食い止め、健康な状態に戻ることができます。自宅でもできる感染・要介護予防法を実行して、フレイルを防ぎながらwithコロナ時代を前向きに過ごしましょう。高齢の親と離れて暮らす家族も参考になる一冊です。

※この記事は『在宅時代の落とし穴 今日からできるフレイル対策』(飯島勝矢/KADOKAWA)からの抜粋です。
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