「不老」や「若返り」は人類が夢見る恒久の願い。しかし、老化学研究の最先端をもってすれば、それも夢ではないかもしれません。いまや、老化のコントロールさえも現実のものとなりつつあるというのです。生命科学博士の早野元詞氏が著した『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』より、エイジング研究の最前線をお届けします。
※本記事は早野元詞著の書籍『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』(朝日新聞出版)から一部抜粋・編集しました。
エイジング・クロック(生物学的年齢の測定)が導く可能性
私は今、血液中のゲノムをすべて読んで、その人の健康年齢や疾患を予測する共同研究を進めています。実際に取り組んでいるのは、検死の際に得られるサンプルを活用した研究です。
日本は世界の中でも、健康診断情報がとても充実しています。ですから検死で得られるサンプルと、その方の過去の健康診断情報を突き合わせれば、さまざまなことがわかります。この知見をエイジング・クロック(生物学的年齢の測定)に活かしたい、と日々挑んでいます。
この研究がうまく進めば、1人の人間の未来がわかるようになります。つまり、ある年齢でエイジング・クロックを測れば、その人の老化度がわかる。さらに何年後にどんな疾患を発症するのか、どんな身体機能の低下が起こるのかまでわかる。人生を"未来予測"できる可能性があるのです。
自分の未来がわかってしまう、などというと抵抗を感じる人もいるかもしれません。ですが、サイエンスの力をもって、未来は不確かなものではなく予測可能であると理解すれば、エイジング・クロックの確立も人類の進歩の1つです。そのサイエンスの力をどのように利用するかは、あくまでも1人ひとりの認識次第です。ですから、私たちは来る未来に備えて、科学リテラシーを高めておいたほうがいい。
それでは、さっそくエイジング研究のこれまでの道のりを遡ってみましょう。