患者&予備軍が700万人に上るといわれ、痛みとともに手指が曲がってしまう難病の「関節リウマチ」。これまで「不治の病」と思われてきたこの病気の治療法は、実は新薬の登場で劇的に変化しているのだそうです。そこで、10万人の患者を救ってきたリウマチの専門医・湯川宗之助さんの著書『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』(KADOKAWA) より、「リウマチを治すための最新情報」をご紹介します。
関節リウマチの合併症は防げる!新型コロナのリスク低下の期待も
関節リウマチの治療で薬を長期的に服用すると、合併症としてさまざまな障害が現れることがあります。
基本的には、血液検査や診察ごとの症状の変化などから、医師がリスクの度合いをきちんとチェックしていますが、どのような症状が現れるのかおおよそ知っておけば、きちんと防ぐことができます。
合併症予防に自分でもできることがある
合併症の臓器障害が現れやすいのは、「肺」「肝臓」「腎臓」などの器官です。
すべてに共通して早期に気づくカギは、「著しい倦怠感」があること。
ほかにも、それぞれについてポイントがあるので覚えておきましょう。
●肺の障害に気づくポイント
「38度以上の高熱がある」「咳が続いて痰がからむ」「仕事や家事でいつもと同じ動作をしているのに、呼吸が苦しい」「普段より唇の色が悪く、安静にしても改善しない」
●肝臓の障害に気づくポイント
「眼球・皮膚に黄疸が出る」
●腎臓の障害に気づくポイント
「靴下を脱いでしばらくしても、靴下の跡が消えない」「浮腫(むくみ)の部分を押すと、へこんだまま戻らない。または、戻りが非常に遅い」「体重が急激に増加した」また、薬の作用とは関係なく、関節リウマチの特徴である炎症が、関節だけでなく全身で起こることもあります。
●間質性肺炎
関節リウマチの合併症として、昔からよく知られているのが間質性肺炎です。
肺には、「肺胞」という袋状の組織がつまっていて、そこで酸素と二酸化炭素の交換を行っています。
この肺胞どうしの間を埋めて、肺胞の〝壁〟の役割をしているのが「間質」なのですが、ここに炎症が起こり、次第に線維化していくのが「間質性肺炎」です。
実際に起こると、肺は弾力を失って硬くなり、呼吸効率が悪くなるので、息切れや呼吸困難などに注意しましょう。
●リウマトイド血管炎
一方、関節リウマチに伴って、血管の壁に炎症が発生したものは「リウマトイド血管炎」と呼ばれます。
これが皮膚の小さな静脈で起こると、症状としては「皮疹」「発疹」「紫斑」などが現れることがあります。
中小の動脈に起こると、「皮膚の潰瘍」「手足の指の壊疽」などが起こります。
心臓・肺・腸・腎臓・睾丸・リンパ腺などの臓器で、「動脈炎」として起こることもあります。
心臓の血管での炎症は心筋梗塞を招く恐れがあるので、要注意です。
末梢神経を養っている血管に起こると、「しびれ」や「感覚麻痺」が現れます。
血管炎が特に重症だと、特定疾患に指定される「悪性関節リウマチ」と診断され、医療費の補助が受けられます。
●シェーグレン症候群
関節リウマチと同じく、自己免疫異常で起こるとされている「シェーグレン症候群」も、合併しやすい病気です。
こちらは、涙を出す涙腺や、つばを出す唾液腺に炎症が起こるので、眼の乾き(ドライアイ)や口の乾き(ドライマウス)が起き、それに伴って角膜が傷ついたり、虫歯になりやすくなったりします。
唾液腺の炎症が激しくなると、耳の下(耳下腺)が腫れることもあります。
また、半数ぐらいの人に、うつ症状が現れるとされています。
●続発性アミロイドーシス
関節リウマチの炎症を抑えられない状態が長く続くと、炎症に伴って発生する異常なたんぱく質が臓器に沈着し、その臓器に機能障害が起こる場合があります。
この異常なたんぱく質がいったん臓器に沈着してしまうと、取り去るための有効な治療法はありません。
そのため、関節リウマチの炎症をコントロールすることが最も大切なのです。
●骨粗鬆症
骨粗鬆症とは、鬆(す)が入ったように骨の中がスカスカになり、骨がもろくなる病気です。
そのため、わずかな衝撃でも骨折をしやすくなります。
関節リウマチに伴って現れる骨粗鬆症では、厳密に言うと2つのタイプの骨粗鬆症が併存しているのですが、いずれも「痛みによる運動不足」が関係していると考えられています。
●貧血
貧血(鉄欠乏性貧血)も、関節リウマチではよく併発します。
繰り返しますが、これらの合併症については、医師がリスクの度合いをきちんとチェックしています。
そのうえで、患者さんのほうでもできることがあります。
バランスのよい食事をして、良質な睡眠を取り、動けるかたは無理のない範囲で動き、できるだけストレスのない生活を送る──。
それが、合併症の予防にもつながっているということなのです。
イラスト/松野 実
関節リウマチの正しい知識や、最新治療を受けるためのアドバイスを5章にわたって解説