71歳の医師・鎌田實さんが語る「自分の1%を誰かに役立てる」思いのススメ

最期まで密度の濃い人生を送るために必要なのは、体・食・心のバランス! 医師で作家の鎌田先生が、独自の健康法のほか、ムリせず、焦らず、昨日よりも今日を元気にする生き方の秘訣を公開してくれました。今回は「誰かの役に立つことの喜び」についてご紹介します。

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新しい医療の形は患者とともに

鎌田實先生は大学卒業以来、終始一貫して地域医療に携わっています。

「シティーボーイというのが自分の性分に合わなかったんですね。それよりも医者と患者の距離を縮めて、患者さんと一緒に新しい医療の形をつくりたいと考えていました」

そんな鎌田先生が近年力を入れているのが、東京都町田市の「まちだ丘の上病院」のプロジェクトです。

この病院は2017年にリニューアルし、内科・呼吸器内科・消化器内科・循環器内科・老年内科・糖尿病内科・疼痛(とうつう)緩和内科・整形外科・リハビリテーション科などの外来と、入院診療できる78の病床を持っています。

さらに東京都からの委託事業として重症心身障がい児(者)を対象としたショートステイ(短期入所)も行っています。

そのため、地域の障がいを持った子どもたち、けがで入院しリハビリテーション治療に励む現役世代、経管栄養や胃瘻(いろう)などの高度な医療ケアが必要な高齢者、がんの疼痛緩和を受ける人々など、さまざまな患者さんが地域というつながりで集まっています。

その患者さんたちが、元の生活に戻っていくための場所が、「まちだ丘の上病院」なのです。
「難しい病気や障がいを抱えた患者さんが多いのに、みんなこの病院に来ると、笑顔でいる時間が多くなります。それを見ている病院のスタッフも元気をもらって、いい笑顔になっていく。笑顔の輪がどんどん広がって、患者さんが元気に前向きになっていく姿がうれしいですね」

この病院の素晴らしいスタッフとともに、鎌田先生は医師として患者さんのケアを行っています。

「自分の中の1%が誰かのために役立つように...という思いが集まると、大きなパワーになる。その力でこの病院をもっと幸せな空間にして、日本中にこのような病院を増やしたいです」。

鎌田先生の瞳は少年のように輝いて見えました。

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71歳の医師・鎌田實さんが語る「自分の1%を誰かに役立てる」思いのススメ 1910p023_02.jpg「温かで確かな医療を提供し、住民とともに歩む地域病院が目標」
という代表理事の藤井雅巳さん

鎌田先生の3つの言葉

◎誰かの役に立つ人間でいることが自分自身の生きる喜びになる
◎患者さんが望むことを目標に治療を進め喜びを共有する
◎夢を抱き、夢に向かって行動することで人を幸せにし、自分も元気になる

鎌田流の回診で患者が笑顔になる

鎌田先生は時間が許す限り病院のさまざまな職種のスタッフと一緒に、入院中の患者さんの病室を回診して患者さんのベッドサイドでいろいろな話をします。

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かつてバスガイドとして活躍していた女性患者のAさんのベッドサイドに行くと、「Aさん歌ってる?」と元気よく声をかけます。Aさんがちょっと恥ずかしそうにしていると、看護師さんが助け船を出して、Aさんがデイケアで元気に歌っていることを報告しました。

「Aさん、今度歌って聞かせてよ! 元気そうだから歩いてみようか?」と鎌田先生が誘うと、Aさんは満面の笑みを浮かべて歩く準備を始めます。

歩行器につかまり、うれしそうに鎌田先生と話しながらどんどん歩いていきます。そのAさんの歩く姿は、ほかのスタッフが注意深く観察しています。

Aさんの回診が終わると、次の患者さんの病室に移動しつつ、鎌田先生を中心に、スタッフたちがAさんに最適なリハビリテーションのメニューは何かについて話し合うのです。

「患者さんにいましてあげられる最善な治療は何かをみんなで考えるのがとても大切です」と鎌田先生。

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次の病室には、Bさん(94歳)と付き添いの娘さんがいました。
「Bさん、元気になったね。車いすに乗っておいしいものを食べに行けるように頑張ろうか?」と鎌田先生が話しかけるとBさんは、食事よりも自分でトイレができるようになりたいと伝えました。

そこで鎌田先生は周りのスタッフと相談して、ベッドから立ち上がって歩く訓練をスタートすることにしました。

「Bさん、起き上がってトイレに行く練習もするけど、お粥だけじゃなくて、たんぱく質を摂るように、嚙んで飲み込む練習もしようね。自立するのに必要な筋肉や骨を作るためにヨーグルトから始めようか...嫌いじゃないよね?」と鎌田先生は優しく問いかけます。

スタッフの中には、管理栄養士として入院食のメニューを管理する人もいます。

今日よりも元気な明日を迎えるために必要な医療は何かを病院スタッフが一丸となって考えてくれる。この病院にはみんなの笑顔があふれていました。

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患者さんの希望を聞き出し、それを治療の目標にしてスタッフと共有するという鎌田先生

病院の役割は病気を治すだけではない

「健康な人も病気を抱えた人も、必要なのは、体・心・食のバランスです」と鎌田先生。
一般的に病院では病気を治すことが中心になってしまい、患者さんの希望や夢に向き合ってくれることは珍しいことです。しかし、夢に向かって生きることで心を前向きにして、不安や怒りなどのストレスを和らげることもできるはずです。気持ちが前向きに明るくなれば、食欲も出るし、元気になるために食べることに関心も向くでしょう。

鎌田先生は「まちだ丘の上病院」を、40代の代表理事の藤井雅巳さんと一緒に軌道に乗せようと尽力しています。閉院の危機に追い込まれていたこの病院を、地域医療の中心を担うような病院に再生させたい...という藤井さんの熱意に共鳴したのです。
「以前から藤井さんとは地域包括ケア研究所という組織で学び合う仲間でした。20歳以上も年下の若い人たちと、年齢を意識せずに仕事ができるのも、僕の活力の源になっているかもしれませんね」

鎌田先生には、もう一つ、若者と付き合って楽しい! と思えることがあるそうです。

それは「筋トレ」なのだそうです。

「筋トレは自己流では行わずに、いい筋肉を蓄えた若いトレーナーに叱咤激励されながら行っています。この年になると僕を叱ってくれる人も少ないけれど、かといって『年長者になんて失礼なことを言うんだ!』と思うような心の狭い老人にはなりたくない。いくつになっても素直に人の話を聞く力を持つことが大切だということも筋トレを通じて学びました」

自分が成長するためには、上手に人の話を聞く必要があるのです。

「この年になって恥ずかしい」とか「プライドが許さない」などと思わずに、初心に戻って新しいことに挑み続けて、できなかったことができるようになった自分を褒めてあげることも必要なのですね。

71歳の医師・鎌田實さんが語る「自分の1%を誰かに役立てる」思いのススメ 1910p025_01.jpg健康な人も病気を抱えた人も、必要なのは、体・心・食のバランス。夢を抱き続けることです!

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<教えてくれた人>

鎌田實(かまた・みのる)さん

1948 年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

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「ぼくは67歳で筋トレを始めてから、人生が変わった!」と話し、ご自身を「スクワット伝道師」という鎌田實先生(71歳)の健康法を大公開。「スクワット」や「かかと落とし」など無理なくできる「筋トレ」の方法をはじめ、ゆで卵やジュースなどの「若返りごはん」レシピ、「心の若返り方」や、若々しい先生の「着こなしの極意」まで、盛りだくさん。保存版の一冊です!!

この記事は『毎日が発見』2019年10月号に掲載の情報です。

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