80歳以上のほぼ全員が「白内障」に! 「なりやすい人」や「手術後に気を付けるべきこと」などを解説

70歳で90%、80歳以上はほぼ全員がなる白内障は、目のレンズである水晶体が白く濁って硬くなる病気です。モノが見えにくくなることで転倒や骨折しやすくなるほか、脳への刺激が少なくなり、認知症のリスクが高まります。今回は、二本松眼科病院 副院長の平松 類(ひらまつ・るい)先生に「手術の後に知りたいこと」をお聞きしました。

【前回】70歳の90%は「白内障」に! 「手術の前に知りたいこと」を解説。保険は利く? 手術のタイミングは?

読者の質問にお答え

手術の後に知りたいこと

80歳以上のほぼ全員が「白内障」に! 「なりやすい人」や「手術後に気を付けるべきこと」などを解説 2207_P054_01_W500.jpg

【質問1】手術直後に気を付けることはありますか?

目を温めたりこすったりしてはいけません

「目をこすらないように注意してください。細菌が入って感染症を起こすと、失明する恐れもあります。目を温めるのも禁物です。術後は少なからず目に炎症が起きている状態なので、温めると血流がよくなり炎症を悪化させることも。術後翌日までは散歩、入浴・洗髪、洗顔は禁止です」

【質問2】手術後、「後発白内障」と診断されました。これは何ですか?

眼内レンズを包む目の囊に残った細胞により濁りが生じる症状です

「『後発白内障』は、白内障の手術を受けた後に白内障のような症状が出ている状態のことで、1~3割程度の人に発症する病気です。白内障の手術では白く濁った目の水晶体を取り除いて人工の眼内レンズを入れますが、細胞レベルで白内障の発症をゼロにできているわけではありません。眼内レンズを挿入した水晶体囊(袋)に残った「水晶体上皮細胞」が増え眼レンズに濁りが生じ、1枚が張ったようになって見えづらくなるのが『後発白内障』です。原因は体質によるものが大きいと考えられ、白内障の手術の半年後、5年後など発症する時期もさまざまです。治療はレーザー手術で行います。レーザーで囊に付いた水晶体上皮細胞を吹き飛ばし、5分ほどで終わります。レーザー手術後は、吹き飛ばした際の汚れにより視界にゴミのようなものが舞って見えることがありますが、検査で問題なければ、しばらくすると気にならなくなるので経過を観察すればいいでしょう」

【質問3】手術を受けたら、もう病院へは行かなくていいですか?

最低でも1年に1回は眼科で検査を受けましょう

「白内障の手術後は1カ月ほどでもとの生活に戻れますが、直後は医師の説明に従って検査を受けます。以降は『手術をして見えやすくなったから』ということで眼科に行かなくなり、緑内障や他の病気に気付くのが遅れることが心配です。白内障は手術を受ければ失明することはほぼありませんが、手術を受ける受けないにかかわらず、少なくても1年に1度は眼科で目の検査を受けるようにしてください」

《読者のお声》
白内障の手術を受けてから10年以上たちますが、半年ごとに検診を受けています。先日も「眼内レンズも濁っておらず、異常ありません」と、うれしい結果でした。(84歳・女性)

番外編

遺伝は関係ありますか?

「白内障と遺伝の因果関係は少ないといわれています。ただし、近視の人はそもそも白内障になりやすいので、目がよくない家系の人は注意した方がいいでしょう」

白内障になる人、ならない人の違いは何ですか?

「白内障は誰もが発症し得る老化現象なので、なりやすい人=体の老化が進んでいる人といえます。生活習慣や病気、偏った食事などが要因と考えられます」

 

<教えてくれた人>

二本松眼科病院 副院長
平松 類(ひらまつ・るい)先生

高齢者の診療経験は10万人以上。目の病気について分かりやすく伝えることをモットーとし、登録者数11万人のYouTube「眼科医 平松類チャンネル」を毎日更新中。近著に『自分でできる! 人生が変わる 緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など。

この記事は『毎日が発見』2022年7月号に掲載の情報です。
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