70歳の90%は「白内障」に! 「手術の前に知りたいこと」を解説。保険は利く? 手術のタイミングは?

70歳で90%、80歳以上はほぼ全員がなる白内障は、目のレンズである水晶体が白く濁って硬くなる病気です。モノが見えにくくなることで転倒や骨折しやすくなるほか、脳への刺激が少なくなり、認知症のリスクが高まります。今回は、二本松眼科病院 副院長の平松 類(ひらまつ・るい)先生に「白内障手術の前に知りたいこと」をお聞きしました。

【前回】あなたは大丈夫?  「白内障」セルフチェックで「見えやすさ」を診断。リスクを高める「NG行為」も

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教えて! 平松先生「手術の前に知りたいこと」

【質問1】眼内レンズはどう選べばいいですか? 保険は利きますか?

見たいものや生活スタイルに合わせて選びます

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※「近く」は前方約30cm、「中間」は前方約1m 、「遠く」は前方約5mを指します。

「眼内レンズはさまざまな種類があります。基本的には『近く(前方約30cm)』『中間(前方約1m)』『遠く(前方約5m )』のどこを見たいかと、生活スタイルによって選びます。

例えば、裁縫で手元をよく見る人は『近く』に、車を運転することが多い人は『遠く』にピントが合うレンズを選ぶといった具合です。

保険適用の単焦点レンズを選ぶ人は約95%。

最近は、従来のものより少し広くピントを合わせられる単焦点レンズもあります。

多焦点レンズはより広くピントが合いますが、現在は『選定療養』といって手術費用や薬代は保険適用、眼内レンズ代は実費となります」

【質問2】手術を受けるタイミングはいつがいいですか?

生活に支障が出ていると感じたら検討すべきです

「白内障の場合、手術のタイミングは医師が全て決めるのではなく、ある程度自分で決められます。個人差はありますが、一般的には両目の矯正視力が0.7に満たなくなったときが手術のタイミングとされています。ですが、生活に大きな支障がなければ急ぐ必要はないでしょう。生活に不自由を感じたり、目を使うことが多い人には早めの手術をおすすめしています」

《読者のお声》
右目が、遠くの明かりが二重に見えるようになり、運転中に対向車のヘッドライトがまぶしく感じたころに眼科を受診し、白内障と診断。経過観察後、手術を受けました。(72歳・女性)

【質問3】多焦点レンズを入れられない人はいますか?

目に白内障以外の病気がある人は制限がかかります

「多焦点レンズは、単焦点レンズよりも広い範囲でピントが合うことが魅力ですが、白内障以外の目の病気がある場合は、使用できないこともあります。また、『グレア・ハロー(光の周りに輪がかかったように見えたり、光が花火のように見える状態)』があるので、夜間の運転が多い人、細かいものを見ることが多い人にはすすめられません。病院によっては、それぞれ特徴が異なる多焦点レンズを何種類もそろえているところもありますが、保険適用外のものも。病院のホームページを見たりする他、医師によく相談しながら選びましょう」

《読者のお声》
車の運転をしないので、近くが見える単焦点レンズを選び、遠くを見るときは眼鏡を使っています。新聞の株式欄まで見えるようになり、生活の質がアップしました。(68歳・女性)

【質問4】手術は1回しか受けられないのですか? 見え方に不具合が出たときが心配です。

どうしても見えづらい場合は再手術も検討できます

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「白内障の手術は、そもそも2回以上やる必要がほとんどない確立された手術です。単焦点レンズの場合は、レンズが原因で見えづらくなる人は0.1%以下とごくわずか。しばらくは見えづらくても徐々に慣れるので、検査で異常がなければ気にしなくていいと言えます。多焦点レンズの場合は、遠くも近くもよく見える代わりに視界の鮮明度がやや落ちるので、不具合を感じて単焦点レンズに入れ替える人が2~3%程度いますが、これも1度目の手術後の検査で問題がなければ、少しずつ慣れてきます。また、ごくまれですが、単焦点レンズから多焦点レンズに入れ替える人もいます。いずれの場合も一度手術を受けたら二度と受けられないことはありません。どうしても見えづらい場合は再手術ができないわけではないので、医師に相談してみてください」

【質問5】日帰り手術と入院手術、どちらを選んだらいいですか?

病院との往復が難しい人、不安が大きい人は入院がおすすめ
70歳の90%は「白内障」に! 「手術の前に知りたいこと」を解説。保険は利く? 手術のタイミングは? 2207_P053_03.jpg「白内障の眼内レンズへの交換手術は、目だけの局所麻酔で、所要時間は10~20分。安全で簡単な方法が確立されており、日帰りで受けられます。元気に歩いて帰ることができ、介助もいらない人であれば、日帰りが主流となっています。ですが、当日は眼帯もしますし、手術後はすぐ見えやすくなるわけではないので、病院との往復や直後の生活に不安が大きい人は入院して受けるといいでしょう。日帰り手術しか行っていない病院の場合は、希望を言えば入院できる病院を紹介してくれます」

 

<教えてくれた人>

二本松眼科病院 副院長
平松 類(ひらまつ・るい)先生

高齢者の診療経験は10万人以上。目の病気について分かりやすく伝えることをモットーとし、登録者数11万人のYouTube「眼科医 平松類チャンネル」を毎日更新中。近著に『自分でできる! 人生が変わる 緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など。

この記事は『毎日が発見』2022年7月号に掲載の情報です。
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