成人の約5人に1人が不眠!? 眠りたいなら目が冴える時間帯を避けるべし/眠りの新常識

成人の約5分の1が「不眠」と言われる現代。市場には「快眠」のための情報やグッズが溢れています。しかし実は睡眠に関しては多くの誤解や不正確な情報が氾濫しているのが現実です。精神神経学・睡眠学・時間生物学の第一人者が、中高年男女のための「快眠法」を伝授。本当にぐっすり眠りたい現代人のための「睡眠ガイド」です。

※この記事は書籍『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』(KADOKAWA)からの抜粋です。

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5人に1人が不眠!?

寝床に入り、眠ろうとしているのになかなか眠れず、ただ悶々と過ごすのはつらいものです。
「いまごろは誰もが眠っている時間帯なのに、なぜ私だけ眠れないの」
「この苦しさは誰にも理解してもらえない」
そんな孤独感を味わうことにもなりかねません。

不眠に悩む人は、なぜ自分だけが......と思いがちですが、実は眠りに不満を抱えている人は意外に多いものです。
日本大学が全国の成人を対象に実施した調査(2009年)によると、週に3回以上、
●寝つくのが困難な人............7%
●夜中に目が覚めてしまう人...15%
●朝早く目が覚めてしまう人...5%
であり、三つのいずれかに問題がある人、つまり睡眠がうまくとれない不眠の人は19%でした。これは、それ以前の調査とも一致し、成人の約5人に1人が不眠であることが確認されました。

こうした調査から、不眠を感じている人は推計で1500万~2000万人いることになります。別の調査では睡眠薬を飲んでいる人が成人の4~5%と、約400万人にのぼることがわかりました。こうした不眠の背景には、人口の高齢化、ライフスタイルの多様化、〝24時間社会〟における生活リズムの乱れ、ストレスなどの原因が考えられています。

いまや不眠は現代社会が生んだ国民病とでも呼ぶことができそうです。つまり眠れないと悩んでいるのはあなただけではないということです。

ここでは、患者さんから寄せられた眠りに関する相談や疑問のなかから、多くの人に心当たりがありそうなケースを紹介しながら話を進めていきます。

 

【CASE1】

早寝をしようと努力したら、よけい眠れなくなった

55歳の女性です。町会の役員になってから、町会の会議がある前日には決まって寝つきが悪くなりました。

もともと夜は11時頃に寝床についていたのですが、そのうちに、今晩もまた眠れないのではないかと気になり、9時頃から寝床に入って、眠るための準備をするようになりました。しかし、そうすると却って寝つけなくて、ますます眠る自信がなくなってきました。そのせいか一日じゅう眠りのことばかりが気になるという状態にまでなってしまったのです。

睡眠不足を感じたことから、日曜日には昼まで寝ているようになりました。
昔から「早寝早起きは健康のもと」と言われますが、早寝をしたからといっても早くに眠れるわけではありません。

 
眠りたいなら目が冴える時間帯を避ける!

快適な睡眠を得るためにやっていることが、却って眠りの質を悪化させ不眠の原因となることがしばしばあります。仕事に余裕が出てきたり、子どもが独立して手が離れるようになったりすると、いままで睡眠時間を削って苦労してきた分、沢山眠って取り戻そうとするのも、その一例でしょう。

ある50代後半の女性は、それまで帰宅の遅い息子さんを待っていたため、寝床につくのは午前0時過ぎで、翌朝6時半には起きるという生活をしていました。その後、息子さんが独立したので午後10時前に寝床につくことができるようになりました。

ところが、そうなってからは、いざ眠ろうとしてもなかなか寝つけません。そこで、かかりつけの医師に相談し、睡眠薬を出してもらったのです。たしかに、薬を飲んだときは寝つきがよくなるものの、こんどは飲まないと眠れないという状態になってしまいました。

睡眠には自分の意思の力ではどうにもならない性質があります。寝床に入ればいつでも寝つくことができると考えがちですが、そうはいきません。体内時計のはたらきによって、朝起きてから14~16時間が経過し、身体全体が休息モードに入っていないと眠りの準備が始まらないからです。寝床に入って10分程度ですんなり寝つけるのは、寝床につく2時間くらい前から眠りの準備が始まっていて、つまり、寝つきやすくなった状態になり、だるくなったり、眠くなったりした良いタイミングで寝床に入ったからです。

睡眠スタイルを自分の意思の力で無理に変えようとしたために不眠になる人はとても多いと思います。たっぷり眠ろうとして早くから寝床に入るというやり方は、けっして勧められる方法ではないということです。さらに、早くから眠ろうとしても眠れない時間帯があるのを知っておくことも必要です。

身体が休息モードになって眠る準備が始まるその前に、一時的に目が冴える時間帯があることがわかっています。理由は明らかになっていませんが、健康な人では普通にみられるものです。たとえば、ふだん午後12時に眠る人は、午後8時から10時に床についても、すぐには眠れません。したがって、寝床につくのが下の図に示すような最も眠りにくい時間帯になっていると、いくら早めに寝床に入ってもスムースに寝つくことはできないのです。

nemuri_p47_01.jpg寝つきの悪さを解消するには、眠りの準備が始まっていることを自分で感じてから寝床に入るようにすることです。

「眠くなった」という感じはもちろんのこと、「身体がぽかぽかしてきた」「だるくなった」といった感じも多いです。わかりやすくいえば、眠くなってから寝床に入るという習慣をつけることが、良い眠りのためには大切だということです。

身体がぽかぽかするのは、身体の内部の熱を皮膚表面から逃がすときに感じるもので、熱が逃げていくことで身体の内部温度が下がって、身体が休息モードに向かうのです。

寝つきをよくするためには、いつもより少し早起きをして、早い時刻に光を浴びるようにします。光を浴びてから14~16時間経つと、先ほどお話しした眠りの準備が自然に始まって眠気が出てくるので、この光を浴びるタイミングを早めることが重要なのです。

早起きして早い時刻に光を浴びるのを1週間くらい続けると、寝つきが徐々に早くなってきます。

 

次の記事「シニア世代は「遅寝早起き」でOK。必要以上の睡眠は日中の不調につながる/眠りの新常識(9)」はこちら。

 

内山 真(うちやま まこと)

1980年、東北大学医学部卒業、東京医科歯科大学精神神経科研修医。91年、現・国立精神・神経医療研究センター室長、 92~93年、ドイツ・ヘファタ神経学病院の睡眠障害研究施設に留学、同センタ一部長を経て、2006年より日本大学医学部精神医学系主任教授。著書に、「睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識」(KADOKAWA)、「名医が教える不眠症に打ち克つ本」(アーク出版)、「睡眠のはなし」(中公新書)、「睡眠障害の対応と治療ガイドライン第2版」(じほう)、『別冊NHK きょうの健康 睡眠の病気」」(NHK出版)など多数。NHK 「きょうの健康」 をはじめ、メディアヘの出演も多い。日本睡眠学会理事長、日本臨床神経生理学会理事、日本時間生物学会理事、日本女性心身医学会監事、日本精神神経学会代議員など。


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『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』

1日8時間の睡眠を取った場合、私たちは人生の3分の1を睡眠時間に費やしていることになります。しかしこれほど多くの時間を睡眠に使っているにも関わらず、実は睡眠については未だ多くの誤解や不正確な情報が氾濫している状況です。本書は精神神経学・睡眠学・時間生物学の第一人者である著者が、中高年男女の様々な悩みに答えながら「快眠法」を具体的にアドバイス!忙しく睡眠リズムを崩しやすい現代人を良質な睡眠へ導くための「睡眠ガイドブック」です。

 

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この記事は『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』からの抜粋です
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