消化管の中を撮影するカプセル内視鏡が、患者数の多い大腸の検査にも使えるようになってきました。2020年度には、保険適用となる患者の範囲が拡大。従来の内視鏡検査が難しい人の新たな選択肢となっています。そこで広島大学病院 内視鏡診療科教授の田中信治(たなか・しんじ)先生に「カプセル内視鏡検査」についてお聞きしました。
飲み込んで消化管の中を撮影する大腸カプセル内視鏡。
2020年度の保険適用拡大で、降圧薬を服用していてもコントロールが難しい高血圧症や慢性閉塞性肺疾患、心不全の人、大腸が長めで内視鏡検査が困難な人など、広く使えるようになりました。
カプセル内視鏡は長さ約3cmで小指の先ほどの大きさ。
検査のときは、前日から下剤を飲んで準備。
当日は、病院でカプセル内視鏡を飲み込み、撮影データを受信する装置を携帯。
医師の指示で薬剤などを飲み、数時間後にカプセルの排泄を確認できたら終了。
撮影中は自由に歩き回れます。
「大腸はがん検診で要精密検査と出ても受診率が低い臓器。精密検査は主にチューブ型の内視鏡を使いますが、肛門から内視鏡を入れるのが恥ずかしい、痛そう、怖いなどと感じる人が多いようです。カプセル内視鏡は口から飲み込むだけで検査ができ、普及すれば、精密検査の受診率向上や大腸がんの早期発見につながります」と、田中信治先生。
気になるのはその精度。
「カプセル内視鏡は、大腸の中を回転しながら撮影します。精度は高く、正面から撮影する内視鏡では見逃されがちだった部位の病変も見つけられる可能性も高い」(田中先生)。
検査費用は3割負担で約3万円から。
検査できる施設はウェブサイト(※)での案内もあります。
(※)カプセル内視鏡による小腸・大腸検査が受けられる医療機関は、「飲むだけカプセル内視鏡」または、https://nomu-capsule.jp/ で検索を。
これまで検診を控えてきた人は一度医師に相談してみるといいでしょう。
部位別がん死亡率
(全年齢/女性、2019年)(人口10万人対)
資料:国立がん研究センター がん対策情報センター
女性のがん死亡率、1位は大腸がん
女性のがんの部位別死亡率、1位は大腸がん。
ですが、大腸がんの検診率は、40.9%(2019年)にとどまっています。
また、便潜血などの検診で陽性反応、つまりがんの可能性があるという結果が出たのに精密検査を受けに行かない人は、約4割にのぼります。
大腸がん検診の種類
便潜血
いわゆる検便。手軽だが、時に、進行がんでも陰性に出ることも。料金:2,000~3,000円
大腸内視鏡
前夜からの絶食、当日の下剤服用が必要。腫瘍やポリープは、その場で処置が可能。病変の位置によっては見つけにくいことも。料金:1万5000~2万5000円
カプセル内視鏡
検査中、患者は自由に行動ができる。ひだの裏側などの病変も見逃しにくい。ただし、ポリープなどの病変の切除や組織の採取はできない。料金:12万円程度
表中の料金は、自費の場合の目安。
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取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/坂木浩子