眠れない...と悩まない。年をとると夜間の睡眠時間は短くなると知るべし/眠りの新常識

成人の約5分の1が「不眠」と言われる現代。市場には「快眠」のための情報やグッズが溢れています。しかし実は睡眠に関しては多くの誤解や不正確な情報が氾濫しているのが現実です。精神神経学・睡眠学・時間生物学の第一人者が、中高年男女のための「快眠法」を伝授。本当にぐっすり眠りたい現代人のための「睡眠ガイド」です。

※この記事は書籍『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』(KADOKAWA)からの抜粋です。

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【実例:女性60代の睡眠のケース

夫が早く就床してしまうので自分もつい寝室に入ってしまう。もう少し起きていようとは思うが、睡眠不足だと認知症になると聞いて、心配になった。

明るいと目が覚めて寝つけなくなってしまう。夜にテレビをみると頭が興奮して寝つきが悪くなるらしい。かといって夜にやることがない。寝室の暗い中で、眠れるのを待っていると些細なことが心配になってくる。また眠れないのではというあせりが加わると、本当に苦しくなってくる。

夜眠れない分、時間があるので日中にベッドに入って補おうとするが、日中に横になっても眠ることができない。充分に眠った、身体も休めたという満足感がほしい。身体の不調を改善するためにも、しっかり眠りたいと切実に思っている。

夫と海外旅行に行くようになって、飛行機の中でじっとしているのをつらく感じるようになった。席は通路側にとって、脚を動かすようにはしているが、乗っている間がとてもつらい。眠ろうと思っても眠れない。

 

●原因・背景
60代女性の睡眠は基本的には50代と大きな変化はなく、50代と同じような特徴が続いていきます。眠くないのに就床したり、長く眠るために朝あえて遅く起きようとしたりすると、充分な睡眠への期待とは反対の結果をもたらしているケースが多く見られます。

寝つきの悪さが続くと、早くから眠る支度をして、就床しがちになりますが、これが寝つきの悪さをさらに悪化させます。さらに、眠る前から、眠れるかどうかが一番の関心事になってきます。

こうなると、夕方になると眠れるかどうかが気になって心配を始めます。一定時刻になると眠気と関係なく、眠れるかどうかの不安をもちながら就床してしまうのです。すると眠れなかったらという心配のために頭が冴えてきて、眠りにつくことができません。明るいと睡眠に悪いということで寝室は真っ暗にしますが、そうしているとますます心配や不安は強くなります。いわば不眠恐怖症の状態で眠りが悪くなるのです。

男性よりも時期は遅いものの、女性にも加齢による体内時計機能の変化が起こることも考慮しておきたいところです。男性にくらべて程度は小さいにしても、朝型化が起こってきます。生活の仕方が、その変化に合っていなければ不眠になりがちです。

時差ぼけや飛行機内でのレストレスレッグス症候群(注:夜の時間帯になって安静にしていると出現する下肢の異常感覚が苦痛となって、よく眠ることができない睡眠障害)が、せっかくの海外旅行の楽しみを損なっている場合もあります。更年期以降に増える足の冷感や、レストレスレッグス症候群などが睡眠不足の原因となっていることもあります。

関連記事:「50代の女性は早く寝ようとしても寝られない。男女の睡眠リズムの違いを理解しよう/眠りの新常識」

 

●対策のポイント
身体がもっている年齢に合った自然な睡眠リズムを考慮に入れずに、希望や期待感や思い込みのやり方で眠ろうとするのはお勧めできません。意識して早寝をすると、寝つきに時間がかかるようになります。自然な眠気を催してから、つまり身体が休む準備を始めてから寝床に入ることが大切です。それが多少遅い時刻になっても問題はありません。そして朝は目覚ましをかけて同じ時刻に起きるようにします。すっきりと起きられれば、睡眠時間の長短はあまり気にしないことです。

健康であれば、年を重ねるにしたがって夜間の睡眠時間は短くなってきます。6~6.5時間程度が目安でしょう。これよりも長く寝床で過ごすと、夜中に目が覚めたり、睡眠が浅くなったりして起床時の休養感や目覚め感が悪くなります。休養感や目覚め感が悪いと、さらに睡眠が足りていないと思って長く寝床にいるようになりがちです。つまり、ひどい悪循環にはまってしまうことになります。こうなると、この悪循環になかなか気づけなくなります。こうした中途覚醒に睡眠薬やサプリメントは無効です。就床している時間を適正化することがすべてです。

遅寝早起きで、まず働いていたときのスケジュールに戻してみるのが第一歩です。就床時刻から起床時刻を6~6.5時間に設定しましょう。最初は心配かもしれませんが、1~2週間で落ち着いてくるものです。年をとったら睡眠が浅く不安定になるのは当たり前なので、それを受け入れることが大事だという話も聞くと思いますが、そんなことはありません。長く眠るということにこだわらなければ、熟睡感や安定感は充分に得られるものです。

睡眠時間が短いことを気にしがちですが、加齢とともに短くなるのが自然で、反対に長く眠るようになるのは、どこかに不調がある可能性があります。長く眠るほど健康に良いというわけではないのです。

昼間は活動的に過ごし、夜はゆったり過ごすなど意識してメリハリをつけることです。昼間にウォーキングやジョギング、水泳、テニスなどスポーツをすることもお勧めです。ただし、やり過ぎは禁物で、くたくたになるほどよく眠れるのでは、というのは間違いです。運動をすると脳が使われ、脳が疲れる分だけ眠るようになるのです。身体を動かさないと睡眠は浅くなります。一方で、身体に過度な負担をかけると、筋肉の不快感や痛みなどをもたらし、眠りにくくなります。

海外旅行でゆったりと旅行してくると、現地の時間に体内時計が順応してしまうため、帰ってからの時差ぼけを強く感じると言う人もいます。こうしたことは、経験的に知られていて、仕事で忙しく時差地域を往来する人が、仕事のみして最短期間で行き来しているのは帰国後の時差ぼけが起こるのを予防するためです。これには、体内時計の性質を知って対策を立てることが必要です。

 

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内山 真(うちやま まこと)

1980年、東北大学医学部卒業、東京医科歯科大学精神神経科研修医。91年、現・国立精神・神経医療研究センター室長、 92~93年、ドイツ・ヘファタ神経学病院の睡眠障害研究施設に留学、同センタ一部長を経て、2006年より日本大学医学部精神医学系主任教授。著書に、「睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識」(KADOKAWA)、「名医が教える不眠症に打ち克つ本」(アーク出版)、「睡眠のはなし」(中公新書)、「睡眠障害の対応と治療ガイドライン第2版」(じほう)、『別冊NHK きょうの健康 睡眠の病気」」(NHK出版)など多数。NHK 「きょうの健康」 をはじめ、メディアヘの出演も多い。日本睡眠学会理事長、日本臨床神経生理学会理事、日本時間生物学会理事、日本女性心身医学会監事、日本精神神経学会代議員など。


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『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』

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この記事は『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』からの抜粋です
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