今年3月、オムロン ヘルスケアは、日本初の心電計付きの上腕式血圧計「HCR-7800T」を発売。不整脈の一種である心房細動の早期発見や治療に結びつけることを目的に開発。血圧と心電図を一緒に記録できます。今回は京都府立医科大学 大学院医学研究科 循環器内科学 教授の的場聖明(まとば・さとあき)先生に、「心電図も記録できる血圧計」についてお聞きしました。
心房細動の患者数は推定100万人超
心房細動とは
不整脈の一種で、心房が小刻みに震えるようにけいれんし、血液をうまく全身に送り出せなくなる病気。左側の心房につながる肺静脈から発生する異常な電気興奮のせいで起こると考えられています。
症状は
「胸がどきどきする」「息切れがする」「めまいがする」などの症状が出ることがあります。血栓ができやすくなり、その血栓が血流によって脳に運ばれ血管を塞ぎ、脳梗塞を引き起こすことも。心房細動の人はそうでない人に比べ、脳梗塞発症のリスクが約5倍高いというデータもあります。
原因は
- 高血圧
- 糖尿病
- メタボリックシンドローム
- 高尿酸
- 睡眠時無呼吸障害
- 喫煙 など
早期発見・治療で脳梗塞を予防
心房細動でできる血栓は大きくなりやすく、脳の血管を閉塞させるため、他の原因で起こる脳梗塞よりも重症化しやすいといわれています。また、一命をとりとめても重い後遺症が残る可能性も。心房細動を早期発見、治療することは、脳卒中の予防にもつながります。
オムロン 心電計付き上腕式血圧計「HCR-7800T」。自社サイト販売価格は29,800円(税込)。カフを腕に巻き、指で本体の電極に触れて血圧と同時に心電図を記録。
アプリで心電図を解析
アプリが心房細動の可能性を指摘
世界で死亡者数が最も多い疾患は、脳卒中や心不全など心臓や血管に関わる病気。
中でも重度の脳梗塞を引き起こす要因が心房細動だと的場聖明先生。
「心房細動は、早期発見・治療で確実な効果を期待できますが、自覚症状がなく、健康診断などで確認できないことも。高血圧の人はそうでない人と比べて、無症状でも心房細動である確率が3倍とのデータもあり、高血圧との関係も見過ごせません」
心電計付き上腕式血圧計「HCR-7800T」は、血圧と心電図を同時に記録できるもの。
毎日の血圧測定時に、気軽に計測して習慣化できます。
使い方は通常の血圧計と同様に付属のカフを腕に巻き、同時に指で本体の電極に触れることで心電図を30秒間記録します。
これを、スマートフォンのアプリで自動分析。
心疾患のリスクが確認されると、スマートフォン上に「心房細動の可能性」などと表示されます。
記録データは、医師との共有にも活用できます。
「心電計付き血圧計と、心電図を医師がみて診断した結果とを比較したところ、医師並みのレベルで、正確に心房細動を感知できることが分かりました」(的場先生)
心房細動の症状は個人差が大きく、気付かない間に重症化することも。
特に、高血圧の人はリスクが高め。
家庭で血圧と心電図を記録し、心房細動のリスクを「見える化」することは、病気の早期発見や健康管理に役立ちそうです。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子