アラフィフ女性にとって、身近なテーマである「更年期」。でも、更年期に起こる心身の不調の症状や程度、改善法は本当に人それぞれですよね。そこで、薬剤師やジャーナリストの方に、漢方で更年期症状が快方に向かった方のケースをお聞きする「更年期『漢方』相談室」を連載形式でお届け。第14回は、漢方薬・生薬認定薬剤師の清水みゆきさんに「更年期の関節痛」についてお聞きしました。
こんにちは、「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」で薬剤師として働いている、清水みゆきです。
40代になってから、手のこわばりが続く、手指や膝関節が痛むようになった、肩こりや腰痛が悪化したなどのお悩みをお持ちではありませんか?
それはもしかしたら更年期のせいかもしれません。
45~55歳の閉経前後の10年間は更年期と呼ばれており、この時期は、ホルモンバランスの影響で手や膝、腰に関節痛を発症することがあります。
私の対応したお客様でも、更年期の年代の方で、手のこわばりや膝の痛みにお悩みの方がいらっしゃいました。
整形外科を受診しても原因がわからず、湿布や鎮痛剤もあまり効果がなく、美容師の仕事や趣味のテニスができなくなってつらい日々を過ごしていたそうです。
そんなTさん(54歳)が漢方で関節痛を改善できた事例を通して、更年期の不調の改善方法をお伝えいたします。
1.更年期の関節痛の原因
更年期の不調は、卵巣の老化による女性ホルモンの減少が原因です。
関節痛の場合、軟骨の成分であるコラーゲンの生成に関わる女性ホルモンが減少すると、関節の軟骨が不足して、痛みを引き起こす原因となります。
また、加齢による軟骨や筋肉の衰え、関節内の水分の減少も、関節痛を引き起こすと考えられています。
漢方では、「不通則痛:通ぜざれば則ち痛む」とあるように、特に血や水の流れが滞ることによって関節痛が起きると考えられています。
女性は月経の度に血(血液)を消耗するため、更年期になると血が不足し、血から栄養を与えられる気(生命エネルギー)の量や巡りが悪くなります。気血の巡りが悪くなると水(水分)も滞ってしまうのです。
また、慢性的な関節の痛みには冷えも深く関わっています。TT
2.こんなに痛いのに検査で異常なし・・・美容師の仕事も趣味のテニスもやめるしかない
54歳女性Tさんのエピソードをご紹介します。
美容師として働いており、ご主人と社会人の息子さんと三人暮らしです。
趣味はテニスで、休日はご主人や友人たちとゲームをして楽しんでいるそうです。
もともと冷え性だったのですが、4年ほど前に閉経を迎え、その頃から冷えが悪化し、ほてりやのぼせも伴うようになったそうです。
さらに半月ほど前から、朝起きると手がこわばって動かしにくいと感じるようになったとのことでした。
気のせいかとそのままにしていたところ、手の痛みはますますひどくなり、さらに膝の痛みも加わるようになってしまったそうです。
「年齢のせいかな」「美容師の仕事で疲れているからかしら」と思いつつ、ストレッチや市販の湿布薬を貼って痛みをやり過ごしながら過ごしていたそうです。
でも、手や膝の痛みはおさまるどころがひどくなり、このままでは仕事も趣味のテニスもできなくなる・・・と思い悩む日々が続いていらっしゃいました。
「私の仕事は美容師なので、手が思うように動かせないと仕事になりません。一番調子が悪い朝さえのりきれば何とか仕事はこなせていたのですが、膝の痛みが加わってからは立ち仕事もつらくて・・・。痛みを感じながらも続けていた趣味のテニスも、仕事に影響しないようにと後ろ髪ひかれる思いでやめました。
それでも痛みは続き、テーピングやサポーターでのセルフケアや、鎮痛薬を飲んで痛みを我慢しながら仕事をしている状態でした。私の負担にならないようにと他のスタッフは気遣って休ませてくれるのですが、お店が忙しい時に休んでいると、心苦しく身の置き所がない気持ちになってつらかったです。
先日なんて、立て続けに予約の電話があったのに、私の調子が悪く動けなかったので、せっかくのご新規のお客様をお断りすることが続いてしまいました。美容師の仕事はやりがいもあって大好きなのですが、お店に迷惑をかけて申し訳ないと仕事をセーブするように。
どうにかして痛みを止めたいと整形外科を受診しましたが、レントゲン検査などでは異常なし。結局、鎮痛剤と湿布薬をもらっただけでした。『こんなに痛いのにどうして?』と苛立ちが募るばかりでした」
Tさんはネット検索で、更年期障害のひとつに手のこわばりや関節痛があることを知ってびっくり。
女性ホルモンが原因なら、痛み止めや湿布だけでは治らないはずだと妙に納得したそうです。
整形外科での検査でリウマチではないことはわかっていたので、婦人科を受診。
ホルモン補充療法には抵抗があると医師に相談したところ、漢方薬を処方してもらったそうです。
「正直言って、痛みに漢方薬が効くなんて半信半疑だったんです。だって、鎮痛薬を飲んでも湿布を貼ってもしつこくずっと続いていた痛みなんですよ。漢方薬を飲み始めて一番感じた変化は、からだがじわじわと温まっている感覚です。もともと冷え性なので冷えているのが当たり前だったのですが、からだが温まるとこんなに楽なんだと本当に驚きました。
1か月ほど漢方を飲み続けた頃には手や膝の痛みも和らいできました。痛みが和らぐと気持ちも落ち着きますね。自分では気付かなかったのですが、よくつらそうな顔をしていたようで『笑顔が戻ってよかった!』と家族からもお客様からも言われます。
まだ朝は手のこわばりを感じることもありますし、冷えると痛むこともありますが、だんだんといつも通りに動けるようになってきました。手や膝の痛みで泣く泣く休んでいた趣味のテニスも再開することができてうれしいです。漢方薬だけではなく、からだを冷やさないように食事などにも気を遣うようにしています。これからも仕事も趣味も元気に楽しんでいきたいです!」
うれしそうにお話してくださったTさんの明るい笑顔が印象的でした。
3.更年期の関節痛は漢方で根本的に改善
女性ホルモンの変化は目に見えないので気がつきにくいですが、40代に入り、以下のような症状が見られる場合は、更年期の影響による関節痛かもしれません。
<これって更年期の関節痛?チェックリスト>
・閉経前後から手足の節々の痛みやしびれを感じるようになった
・朝に手のこわばりや関節痛がある
・のぼせやほてり、汗などのホットフラッシュも気になる
ただし、変形性関節症や関節リウマチなどでも更年期の関節痛とよく似た症状がみられます。痛みが悪化する場合は整形外科やリウマチ内科などを受診するようにしましょう。
「できるだけ体に負担のない薬がいい」
「飲み続けても大丈夫な薬が欲しい」
そんな方には漢方薬がうってつけです。
漢方は数千年の歴史を持つ伝統医療です。これまで実に多くの人々のさまざまな症状を治してきました。
古臭いからあやしいというイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、長年の臨床経験をもつ信頼できる医療です。
また漢方は、自然の草木や鉱物からできた生薬で作られています。
こうした自然のもつ力を上手に使うことは、私たちの体の摂理に沿った無理のないやさしい作用をもたらします。
とくに漢方薬は、もともとの体質だからとあきらめていたようなことや、検査では異常が見つからないような不調の根本解決を目指したいときに、その力を発揮してくれます。
また、食事の栄養バランスを意識したり、毎日運動を続けるのは難しいという場合でも、漢方薬なら自分の体質や症状に合うものを飲むだけなので、気軽に継続できるという点もメリットです。
今回Tさんが服用した漢方は「五積散(ごしゃくさん)」という更年期女性の関節痛によく使われる漢方でした。
五積散は、気、血、水、食(飲食物)、寒(冷え)の滞りを改善し、痛みをやわらげます。
胃腸が弱い方や疲れやすい方の慢性化した冷えで悪化する痛みに対する処方で、月経痛や更年期障害にも使われます。
更年期の関節痛の改善には、他にも以下の漢方が使われることがあります。
<更年期の関節痛におすすめの漢方>
●水太りで膝関節の痛みや下半身のむくみがある方:防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
水分代謝をよくして余分な水分を排泄し、むくみや痛みを改善します。
●足腰の痛みやしびれ、月経不順も気になる方:疎経活血湯(そけいかっけつとう)
血を補い巡りをよくしつつ、冷えや湿気からくる痛みをちらし、痛みやしびれを改善します。
ただ、どのような体質がその不調を招いたのかは人によって異なりますので、ご自身の状況に応じた漢方薬を選ぶことが大切です。
症状だけを見て漢方薬を選択すると、合っていない場合には副作用のリスクも高まります。
できるだけ漢方に精通した医師、薬剤師等にご相談の上で、ご購入ください。
4.漢方でつらい関節痛を改善して更年期を元気に過ごそう!
「急に手のこわばりを感じるようになった」
「膝が痛くて正座するのがつらい」
その症状は更年期が原因かもしれません。
関節の痛みを我慢する、鎮痛薬や湿布で痛みをやり過ごすのはもうやめませんか?
漢方で体の内側から関節痛を改善して、更年期も元気に過ごしていきましょう!