骨盤底筋体操で予防も。症状別に解説「骨盤臓器脱」の治療法

膀胱や子宮、直腸といった骨盤内の臓器が腟の外に出てしまう「骨盤臓器脱」。主な治療法には何があるのでしょうか? また予防のために普段から気を付けることはあるのでしょうか。 今回は日本医科大学付属病院教授・明樂重夫(あきら・しげお)先生に「骨盤臓器脱」の治療法についてお聞きしました。

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症状が軽い場合の治療法

症状が軽い場合は、生活習慣の見直しと骨盤底筋体操から治療を始めます。

・生活習慣の見直し

肥満や便秘、咳に要因がある場合はそれらを改善したり、日常的に重い物を持たないようにする。

・骨盤底筋体操

肛門と腟に力を入れてゆっくり締める。
5つ数える。
緩める。
①~③を生活の中で実践して長続きさせることが大切。初期の場合はこれらで症状が軽くなることがあります。また、骨盤底筋体操は予防にもつながります。

症状が進行した場合の治療法

症状が進行すると、ペッサリーリングという装具による治療をします。ペッサリーリングは医療用シリコンでできた輪状のもので、子宮の出口にはめ込んで固定し、臓器が外に出ないようにします。

・ペッサリーリング

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自己着脱は難しいというイメージを持たれがちですが、現在は細くて入れやすいタイプや折り畳めるタイプもあるので、挿入しやすくなっています。

・医療機関で着脱する場合

医療機関で一度挿入すると長期間入れたままになるので、炎症が起きたり、おりものが増えたり、出血したりすることも。2~3カ月に1度、交換してもらいます。

・自分で着脱する場合

朝挿入して夜寝る前に外します。医療機関で着脱する場合と比べて挿入している時間が短く、腟への負担が軽減されるため、自己着脱の方が望ましい。腟に炎症が起きにくく、おりものや不正出血も少ないです。性交渉も可能です。

症状が重い場合やペッサリーリングでも改善しない場合は手術が検討されます。

近年はメッシュというポリプロピレン製のシートを使った「腹腔鏡下仙骨膣固定術」が注目されています。

おなかに小さな孔(あな)を開けて腹腔鏡や手術器具を入れ、子宮の上半分を切除し、残った子宮と腟壁の前後にメッシュをぬい付けて引き上げ、骨盤の一部である仙骨に固定します。

特に子宮脱と腟断端脱に効果的で、再発が少なく、術後の痛みや合併症はあまりありません。

最近ではメッシュを用いない従来型の手術方法も、再発リスクはやや上がるものの合併症が少ないため、見直されています。

年齢や症状、本人の希望を踏まえ、治療法を決めていきます。

骨盤底筋体操で予防も。症状別に解説「骨盤臓器脱」の治療法 1910p091_04.jpgペッサリー挿入前(子宮脱の場合)と挿入後

取材・文/桑沢香里(デコ) イラスト/片岡圭子

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<教えてくれた人>

日本医科大学付属病院教授

明樂重夫(あきら・しげお)先生

日本医科大学大学院修了後、米国オハイオ州立大学に留学。日本産科婦人科学会専門医。日本産科婦人科内視鏡学会常務理事。2008年に日本で初めて腹腔鏡下仙骨腟固定術を発表、普及に務め、同手術は保険適用となった。

この記事は『毎日が発見』2019年10月号に掲載の情報です。

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