「ワクワク」「コツコツ」が健康には必要? 心と体を元気に保つ5つのキーワード

年齢を重ねるにつれて、「肩が上がらない」「足元がおぼつかない」など、若いころにはなかった体の不具合が出てきますよね? そんな悩みを解決できる1日たった10秒の運動があるんです。それは、全国で1万人以上に健康体操を教えてきた簗瀬寛さんが考案した介護予防&未病のための健康体操。今回は、簗瀬さんの著書『ごぼう先生と楽しむ大人の健康体操』(あさ出版)から、そのエッセンスを連載形式でお届けします。

「ワクワク」「コツコツ」が健康には必要? 心と体を元気に保つ5つのキーワード pixta_54005447_S.jpg

日常生活も意識が大事

今日の自分をキープするには、体の調子と心の調子をよい状態で保つことです。どちらか、もしくはそれぞれが弱ってしまっていては、健康的な状態、つまり"元気"とは言えません。

たとえば、風邪ひとつひいていないうえに、ケガも痛いところもないけれど、外に出かけたり、人と会ったりするのが嫌だからずっと自室に引きこもっている。そんな状態を元気で健康的とは言わないですよね。

元気で健康的な日々を送るには、日常生活において、特に次の5つを意識するといいでしょう。

〈行動〉〈キーワード〉
●運動~テクテク~
●食事~モグモグ~
●趣味~ワクワク~
●継続~コツコツ~
●期待~ドキドキ~

それぞれ、お話ししていきましょう。

運動~テクテク~

健康であり続けるには、適度な「運動」が欠かせません。

運動と聞くと、走ったり、ジムに行ったりといった激しい運動を思い浮かべるかもしれませんが、「今日の自分」の健康状態をキープするために必要な「運動」は、激しいものではありません。

「テクテク」、つまり、「歩く」ことです。

何歳になっても、自分の足で立って「歩ける」というのはかけがえのない財産です。ただし、それにはある程度の筋肉量や強い骨が必要になります。

筋肉の再生は何歳になってもできることがわかっています。

ちょっと前のお話ですが、100歳の双子姉妹として有名になった"きんさん"は、デビュー作となるCMに出た当初は車椅子で移動していましたが、「自分の足で歩きたい」と意識して簡単なトレーニングをしたことで、杖を使って歩けるようになりました。100歳過ぎても「意識」すれば、体も応えてくれるというわけです。

まずは1日1回、「お出かけ」しましょう。

散歩でも、お買い物でも、誰かとお茶をするのでもかまいません。1日1回、外に出かけましょう。それだけで、介護予防、未病につながります。

1歩外に出るだけで、太陽の暖かさ、風の匂い、季節の移り変わりなどを感じることができ、それが脳への刺激になります。

また、「歩く」ことによって全身を動かすことになるので、自分の「老い」や「弱っているところ」に気づく機会が増えます。「老い」や「弱っているところ」を自覚できれば、自然と気をつけることができるというわけです。

食事~モグモグ~

「よく食べる人は元気」です。

栄養バランスのいい食事をとりましょう、と言っているわけではありません(私は食の専門家ではありませんし)。

10000人以上の高齢者の方とお会いしてきた中で、「元気な方だな」と感じる人はほぼ例外なくよく食べます。

それも、おいしそうに、そして、楽しそうに召し上がります。一緒に食べている私まで楽しくなってくるほどです。

さて、ここで質問です。「なんでも好きなものを食べていい」と言われたら、何を食べたいですか。

パッと何かが頭に浮かんだなら、健康な証拠です。

「食べたい!」と思ったその気持ち、その感覚を大切にして、体の状態に合わせながら「食べたいもの」を食べましょう。

食べたいものが具体的に思い浮かばなくても問題ありません。日々の生活の中で食べること、味わうことを楽しめているかどうかを振り返ることが目的だからです。

人は活動のパワーを食べ物や飲み物から得ますが、栄養の吸収され具合はポジティブな感情のときほど高く、ネガティブな感情のときほど低いということがわかっています。

食事でポジティブな感情になるのは、「食べたいものを食べる」ことでしょう。「おいしい」「うれしい」と幸せな気持ちになるので効果的です。

そして、「誰と食べるか」「どこで食べるか」「どのように食べるか」によっても変わります。スーパーで買ったお刺身で作った海鮮丼より、海の近くのお店で食べる海鮮丼のほうが魅力的に感じませんか?

これも、感情がなせる業。

1週間前、自宅で食べたものは覚えていなくても、友達や家族と外食をしたときに食べたものは覚えているのも同じです。

おいしいと感じられるものをおいしく食べる。

「おいしい」と声に出すことも、周りの方々の健康にもつながります。

趣味~ワクワク~

「趣味はありますか?」と尋ねると、半数の方が「ない」とおっしゃいます。

時折「趣味は持たないといけないのでしょうか」と質問をいただくこともあります。私は「趣味は持ってほしい」とお伝えしています。

人はワクワクすると幸せ脳内物質とされるセロトニンが発生し、脳が活性化されることがわかっています。

おいしいものを食べる、面白い人と過ごす、旅行する、音楽を聴くなどなんでもかまいません。楽しいな、ワクワクするなと思うことをすればするほど、脳細胞が増える、遺伝子レベルで若さを取り戻すという研究結果も出ています。

笑うことでNK(ナチュラルキラー)細胞が増え、がんが消えたという事例もあるほどです。

つまり、ワクワクすることを続けることが予防にも未病にもつながるというわけです。

言い換えると、ワクワクすること、楽しいと思うことを「趣味」にしてしまえば、それだけ楽しい時間、ワクワクする時間が増えるということ。

「趣味」は上手である必要も、得意なことである必要もありません。「好きこそものの上手なれ」ということわざもあるように、好きなこと、楽しいことは、おのずと熱中できるので上達も早いです。

また、始めるのに遅いということもありません。実際、80歳から写真を撮り始めて本を出した人もいますし、60歳を過ぎてからフルマラソンに初めて挑戦した人、70歳を過ぎて水墨画を始めて大きな賞(経済産業大臣賞)をとった人もいます。

「趣味」を通じて、お仲間、友達ができることも少なくありません。

心から楽しいと思えること、無理せずできること、そしてワクワクすることで、これからの人生を彩りましょう。

継続~コツコツ~

若い頃から何か続けていることがあるようなら、ぜひ続けてください。

若い頃と同じようにはいかないこともあるでしょう。でもそれでいいのです。現在の自分に合ったスタイルで継続することに意味があるからです。

まずひとつは、人は好きなことをしているとワクワクするからです。人は嫌いなことは続けられません。苦痛を感じるからです。大人になっても続けることができているということは、もしかしたら意識はしていないかもしれませんが、好きだからです。思い当たる節があるのではないでしょうか。

「ワクワク」のところでお話ししたように、ワクワクすることを続けると、脳内ホルモンが分泌し、予防にも未病にもつながります。つまり、好きなことを続けることは、健康的な生活において、とても大切なことなのです。

講演会などで、そうお話しすると、「たしかに、ちょっと前までは楽しかったし、好きだったと思う。でも、最近は歳のせいで思うようにできなくてイライラする。だからやめた」とおっしゃる方が時折いらっしゃいます。その気持ち、よくわかります。

ですが、「歳のせいで思うようにできなくなっている」ことを感じることもまた、とても意味があるのです。

人は、無意識に生活していると、自分の状態の変化にも無頓着になってしまい、気づいたときには手遅れだった、なんて事態に陥ってしまう可能性が高まってしまいます。実際、多くのシニアの方から「気づいたらこうなっていた」というお話を伺います。

ところが、ひとつのこと(複数でもいいのですが)を続けていると、自分の変化に気づくことができます。

たとえば、テニスを続けてきた人が、最近ボールが上手に打てなくなったとします。ボールが打てないから、下手になった、だからやめてしまおう、と考えるのはちょっともったいないです。もしかしたら、筋力が衰えたことで今まで使っていたラケットが重くてボールのスピードに間に合わないだけで、ラケットを替えればまた上手にボールを打つことができるかもしれません。

つまり、自分の老いに気づくことで、自分がすべきこと、意識すべきことが見えてくるのです。もし、いったんやめてしまっていたとしても再開してみてください。

私の祖母は、大好きだった絵画を一度やめてしまいましたが、認知症になってから再開しました。昔使っていた大きなキャンバスではなく小さな紙皿に絵をつけるというものですが、描いているときは、とても幸せそうで、見ている私たち家族も元気になります。

囲碁や将棋、絵画、習字、ゴルフに野菜づくり、なんでも結構です。コツコツ続ける中で、自分を知ってください。

期待~ドキドキ~

遠足や旅行の前の日、期待でドキドキして眠れなかったという経験はありませんか?

「会いたかった人にようやく会えそうだ」「長年の夢だった富士登山。実現できるかもしれない」といった自分に関すること、または「オリンピックの体操競技、この種目でメダルの色が決まる」「ノーベル賞、今年こそ大好きな作家がとれるかな」など、興味があることでもかまいません。

ドキドキが達成すると、今度は「感動」があります。

「会いたかった人にようやく会えた!」「富士山に登れた!!」「オリンピック金メダルだ!」など。涙するようなこともあるでしょう。

人は、心が揺さぶられたり、感動を経験したりすると、強く心に残り、「また」この感動を味わいたいと考えます。認知症でいろいろなことを忘れてしまっていても、強い感動を味わったことは覚えています。

そして、「また味わいたい」「また会いたい」「またやりたい」と思い、そのために頑張ろうという活力、パワーが生まれます。

私は時折、自身が経営するデイサービスに息子を連れていきます。私の妻も一緒に仕事をしているため、お腹が大きくなる姿を多くのご利用者がご覧になっていました。そして誕生した息子のことを、とてもかわいがってくださり、日々の成長を楽しみにしていただいています。

認知症の方も多いのですが、息子の名前も顔もすぐに覚えてくださり、デイサービスに連れていかない日は「肇ちゃん(息子の名前)元気?」と、挨拶より前に聞かれるほど。息子に会うことを期待してくださっているのです。

赤ちゃんの力は素晴らしいなと、心から感じます。

また、「桜」の力もすごいです。毎年、桜を見ることを楽しみにしている人もたくさんいます。

実際に「あそこから見る桜がキレイだった」「桜の木の下で食べたお弁当がおいしかった」など、桜に関する話を聞く機会も多いのですが、鮮明に記憶されていて驚くと共に、「来年もまた桜の季節が楽しみだ」と先のお話をしてくださるときのお顔がとても輝いていて、聞いている私も元気をいただきます。

最後に手前みそで恐縮ですが、私「ごぼう先生」も、誰かの「ドキドキ」になれたらと考えています。

健康体操のDVDを発売して以来、全国の施設でご利用いただいていることもあり、私がお伺いすると「本物が来た!」と喜ばれることも増えてきました。

「ごぼう先生が来るから」と、わざわざおしゃれをしたり、お化粧をして待っていてくださる方も少なくありません。本当にありがたいことです。

笑顔で迎えていただくたびに、この笑顔を守りたい、「ドキドキ」していただくお手伝いができたら、1日でも長く元気に過ごしていただくためのきっかけになれたら......と身が引き締まるばかりです。

ごぼう先生考案の楽しい介護予防「大人の健康体操」記事リストはこちら!

「ワクワク」「コツコツ」が健康には必要? 心と体を元気に保つ5つのキーワード 056-syoei-gobou.jpg介護予防・未病にために効果を発揮する、10の「大人の健康体操」が写真でわかりやすく紹介されています

 

簗瀬 寛(やなせ・ひろし)

1985年、愛知県生まれ。通称、ごぼう先生。株式会社GOBOU代表取締役。鍼灸師。社会福祉主事任用資格。2014年より「リハビリカフェ倶楽部岡崎店」を運営。全国各地の介護施設で“大人の体操のおにいさん・ごぼう先生”として「介護予防」をテーマに講演、健康体操の普及に努める。さまざまなテレビ、新聞、雑誌等活動の幅を広げている。

監修:白澤卓二(しらさわ・たくじ)
1958年、神奈川県生まれ。医学博士・医師。米国ミシガン大学神経学客員教授。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。

shoei.jpg

『ごぼう先生と楽しむ大人の健康体操』

(簗瀬 寛、監修:白澤卓二/あさ出版)

テレビ、新聞などで人気の“大人の体操のおにいさん”ごぼう先生が考案した、介護予防や未病のための健康体操、介護の心得などがまとめられています。長く元気な生活を送るために、手元に置いておきたい一冊です。

※この記事は『ごぼう先生と楽しむ大人の健康体操』(簗瀬 寛、監修:白澤卓二/あさ出版)からの抜粋です。
PAGE TOP