「食べ物が歯に挟まる」「歯の根元がしみる」といった経験がある人は少なくないことでしょう。実はこれらの症状、歯ぐき下がりが原因かもしれません。30代の約60%、50代ではほぼすべての人に見られるという歯ぐき下がり。今回は、この歯ぐきが下がることでなりやすくなる「根面う蝕」(こんめんうしょく)について、東京歯科大学の杉原直樹先生に教えていただきました。
歯ぐきが下がることによって、歯の根元の象牙質に虫歯ができてしまう。これが「根面う蝕」です
歯を失うリスクが増す!歯の根元の虫歯にご注意
歯ぐきが下がることで歯の根元が露出し、その部分が虫歯になることを根面う蝕といいます。「歯ぐきが下がると歯の根元が露出します。歯の根元は柔らかく、酸に弱い象牙質でできており、エナメル質でできている部分に比べて虫歯になりやすいものです。初期段階では自分で見つけにくく、進行も早い。しかも、歯髄(しずい、神経)に近いので虫歯のみの治療が難しく、きちんとケアしてきた人でも歯を失うリスクが高くなります」(杉原先生)
根面う蝕を防ぐには、予防歯科が有効です。根面う蝕は進行が早いため早期発見が必須。異常がなくても定期的に歯科健診を受けましょう。また、日々のお手入れも大事です。歯磨きをするときには、鏡の前で歯や歯ぐきのチェックを行うことを習慣化しましょう。
「歯を磨く際は、高濃度のフッ素配合歯磨き剤を使用することがおすすめです。フッ素には、歯を強くしたり、根面う蝕を予防する効果があります」(杉原先生)。日々のセルフケアと歯科医でのケアを組み合わせて、いつまでも健康な歯を維持しましょう
■根面う蝕のまとめ
・歯の根元は弱く、とても虫歯になりやすい。
・歯の根元の虫歯は、自分で見つけにくいため進行してから気付くことが多い。
・折れてしまうことがあるなど、歯を失うリスクも高い。
■歯の根元が虫歯になりやすい理由は?
歯根部の象牙質は、エナメル質よりも酸に弱く、柔らかいので虫歯になりやすく、進行しやすい特徴をもちます。エナメル質は、pH5.5程度で歯が溶け始めるのに対し、象牙質はpH6.0~6.2とかなり中性に近い状態で溶け始めることが分かっています。
■主な飲料のpH値(※)
※参考:杉原直樹・高柳篤史監修『「サイエンス」×「超高齢化社会」で紐解く 根面う蝕の臨床戦略』より作成
取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/やまだやすこ