股関節(こかんせつ)が痛むと歩くのが不自由になり、生活に支障が出てしまいます。股関節に痛みを感じている人は、簡単にできる4つの体操で痛みの原因となっている部位を見つけ、股関節痛を改善させましょう。「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」などの股関節痛が起こるしくみや、家庭で実践できる「痛みのタイプ別体操」、日常生活で痛みを和らげるコツについて医学博士の銅冶英雄先生に教えていただきました。
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さまざまな部位の異常が股関節痛を引き起こす
「股関節に痛みがあるといっても、痛み方や痛みの強さは人によってさまざまです。レントゲンで見た変形性股関節症の症状と、実際の股関節の痛みの強さは一致しないことがあります。レントゲンで変形性股関節症の進行期だと診断されても、痛みを感じていない人もいるのです」と銅冶先生。
股関節の痛みは、股関節の不具合だけが原因だとは限りません。実は、股関節以外の部位が原因で、股関節に痛みを感じるケースも多いのです。股関節痛が起こりやすい部位には次の4つがあります。
1. 腰椎型
股関節痛と腰痛は密接な関係があり、下図のように腰椎から出ている神経根が、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)などのために圧迫されると、その痛みが股関節痛として感知されます。腰部脊柱管狭窄症とは、腰部の脊柱管が変形して狭くなり、中を通る脊髄を圧迫している状態です。
腰椎部分の神経根が圧迫されて神経痛を起こしたとき、股関節の痛みとして現れる。
2. 関節包型
股関節を包み込む関節包が一方向に引っ張られたり、関節唇がずれたりするために生じる痛みです。
股関節の関節包がゆがんで炎症を起こしたり、関節唇が傷んだりするせいで股関節痛を感じる。
3. 関節軟骨型
関節軟骨同士がこすれてはがれた破片が滑膜を刺激し、痛みが起こります。
関節軟骨の小片が滑膜に当たって痛みを感じる。骨棘は痛みを起こさない。
4. 筋肉型
股関節周辺の筋肉の痛み。股関節を守るため、筋肉の緊張が長期間続く「痙縮(けいしゅく)」の状態が、痛みの原因になります。
股関節の不具合を保護するために、図のような股関節部分の筋肉が硬く緊張して痛みが起こる。
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取材・文/松澤ゆかり イラスト/やまだやすこ