なんで!?出産直後の「栄養不足でうつ病」に・・・女性教員を回復させた精神科医の栄養療法

心を蝕む「うつ」。それはストレスだけでなく「"質的な栄養失調"が引き起こすこともある」と栄養学に精通する精神科医・藤川徳美さんは言います。そんな藤川さんの著書『うつ消しごはん』(方丈社)から、実際に行ったサプリメントを用いる栄養療法「メガビタミン療法」で回復した症例エピソードを抜粋してご紹介します。

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※症例の血液検査が示す数値などについて......症例の中には、受診時の血液検査の数値が頻繁に登場します。栄養療法を実践するにあたり、タンパク質や鉄の充実度を測る指標にするためです。よく出てくる検査項目についてはエピソードの下で解説しています。

【症例】鉄・タンパク不足を頭が回らない女性もすっかり回復

学校の先生をしている20代後半の女性です。

平成24年に第一子を出産しました。

その後育児休暇を経て、平成27年4月より教師の職に復帰します。

ところが、すぐに体調不良に悩まされます。

頭痛がし、朝は吐き気がしたり、下痢になったりする。

そうして気分がどんどん落ち込んでいきました。

そんな毎日がつづき、焦燥感が強くなってきました。

生徒に勉強を教える先生なのに、頭はぜんぜん回りません。

夜も眠れなくなり、夜中に何度も目覚めてしまいます。

寝起きの気分はますます悪くなりました。

また、食欲がないと思えば、ドカ食いをすることもあり、体重の変動が大きくなりました。

その様子を見かねた夫と共に、平成27年6月に当院を受診しました。

153cm、51kg。

BUN14・7、フェリチン23。

問いかけへの反応が明らかに鈍く、頭の回転が明らかに悪いと実感していました。

まずは高タンパク/低糖質食を指導し、ジェイゾロフト25mg+ドグマチール100mg+メイラックス0・5mg+フェルム(鉄剤)を処方しました。

このとき病気休暇のための診断書もお書きしました。

平成27年7月、かなり落ち着いてきたということで、復職することができました。

しかし、3カ月間治療を中断していたところ、11月になって受診。

また調子が悪くなってきたということでした。

朝、出かけようとすると吐き気がすることがあり、そのうち学校で過呼吸となり救急搬送されてしまいました。

そこで、処方薬を再開し、その後ジェイゾロフトは50mgに増量しました。

再度、病休の診断書を書くことになりました。

翌28年の1月、かなり元気になったということでしたが、まだ1人では外出できない状況でした。

食事は卵、肉をしっかり食べているそうです。

夜は眠れているのでメイラックスは中止しました。

2月には、血液検査の結果はBUN13・0、フェリチン114。

かなり元気になったので復職の可能性が大きくなりました。

2月には復職訓練を受け、4月に見事、復職されました。

7月の受診時には、その後は安定した状態が持続し、仕事も普通にこなしているとのことでしたので、ジェイゾロフト、ドグマチール、フェルムを1日毎に減量することにしました。

9月の血液検査は、BUN19・9、フェリチン100と、タンパク質も回復していました。

「今年は夏バテがほとんどなかった」とのことでした。

平成30年7月の受診では、4月に異動となったそうですが、問題なく仕事をこなせているとのことでした。

診察したところ、とても元気で、受け答えからも頭の回転がよい状態であることがわかりました。

食事は卵と肉をしっかり食べていました。

まだ薬を完全に止めるのはこわいということなので、時々は服用することにしました。

彼女は典型的な妊娠出産後の鉄・タンパク不足でした。

動物性タンパク質をしっかり摂取するという食事アドバイスを守って、BUNが19 ・9に回復できたのは素晴らしいことです。

鉄・タンパク不足が解消すると夏バテしなくなる。

彼女の初診時は、当院ではまだプロテインを推奨していなかったことから、回復まで時間を要しましたが、プロテイン+ATPセットなら、さらに早く回復できたと思います。


※症例の血液検査が示す数値などについて

「一般的な基準値」というのは、健康な人の多くの検査データをもとにして、統計学的に求められた数値のことで、95%の人が基準値の範囲に該当しているといわれています。なお、BUN(尿素窒素)とMCV(赤血球恒数)、およびフェリチンについては、当院独自の基準で判断しておりますので、「当院の目標値」として記しておきます。

・BUN(尿素窒素)......血液中の尿素に含まれる窒素成分のことです。高い場合は腎機能障害、基準値未満はタンパク質摂取不足です(重症の肝機能障害のときにも低くなります)。一般的な基準値8~20(mg/dl)、当院での目標値15~20(mg/dl)。

・RBC(赤血球数)......赤血球の数で、基準値未満は貧血が疑われます。一般的な基準値 男性:430~570(万個/μl)女性:380~500(万個/μl)。

・HGB(ヘモグロビン)......血液中の鉄の量で、基準値未満は貧血が疑われます。一般的な基準値 男性:13・0~16・6(g/dl)女性:11・4~14・6(g/dl)。

・MCV(平均赤血球容積)......赤血球の大きさで、基準値未満では鉄欠乏性貧血が疑われます(鉄欠乏性貧血=小球性貧血)。逆に大きすぎる場合(大球性貧血)には、ビタミンB12不足、葉酸不足が疑われます。一般的な基準値80~100(fl)、当院での目標値95~98(fl)。

・フェリチン......鉄分を貯蔵しているタンパク質の量です。一般的な基準値 男性:20~220(ng/ml)女性:10~85(ng/ml)、当院での目標値100(ng/ml)。

・メガビタミン療法......ビタミンやミネラル、プロテインなどのサプリメントを活用した栄養療法の考え方。

・ATP......アデノシン三リン酸。生体内のエネルギーを貯蔵したり、供給したりする、生きるための「エネルギー通貨」とも呼ばれる。「ATPセット」は、ATPをつくるためのサプリメントの組み合わせ。


栄養で完治させた精神科医のエピソード「うつ消しごはん」記事リストを見る

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薬に頼らない栄養療法メソッドを全5章に渡って解説。著者が行う「メガビタミン療法」のサプリレシピも収録

 

藤川徳美(ふじかわ・とくみ)
1960年広島県生まれ。医学博士。1984年広島大学医学部卒業。2008年に「ふじかわ心療内科クリニック」を開院。うつ病の薬理・画像研究や、MRIを用いた老年期うつ病研究を行い、老年発症のうつ病には微小脳梗塞が多いことを世界に先駆けて発見。著書に『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』(光文社新書)などがある。

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『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』

(藤川徳美/方丈社)

やる気がない、目覚めが悪いなど体の不調は、あなたが摂っている「栄養の質」が悪いからなのかもしれません。何をどれだけ摂ればいいのか、どんな栄養が体にいいのか、薬に頼らず病を改善させる栄養療法をまとめた、心と体の処方箋です。

※この記事は『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』(藤川徳美/方丈社)からの抜粋です。
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