股関節(こかんせつ)が痛むと歩くのが不自由になり、生活に支障が出てしまいます。股関節に痛みを感じている人は、簡単にできる4つの体操で痛みの原因となっている部位を見つけ、股関節痛を改善させましょう。「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」などの股関節痛が起こるしくみや、家庭で実践できる「痛みのタイプ別体操」、日常生活で痛みを和らげるコツについて医学博士の銅冶英雄先生に教えていただきました。
前の記事「「4つのタイプ別体操」で痛みの原因部位を特定!股関節痛にさようなら(3)」はこちら。
痛みの原因がどの部位からきているのかを見極めて正しい体操を行うために、「痛みのタイプ別体操」の具体的な方法を一つずつ紹介していきます。順番に体操して「痛みの強さ」「痛みの範囲」「歩きやすさ」が改善したかどうかをすぐ確認しましょう。痛みの原因が分かれば、その原因に合った体操を毎日繰り返すことで、症状を軽減させることができます。
◆「痛みのタイプ別体操」を行うときはここに注意しましょう
「痛みのタイプ別体操」を始める前に、体操してもよいかどうか、股関節の痛みの程度や動く範囲、病歴などを確認します。下記の「行ってはいけない人」に該当する人は体操を控えます。「注意して行う人」の場合は、痛みが強くなったら体操を中止し、整形外科を受診しましょう。
行ってはいけない人
・転倒が原因の股関節痛の人は、骨折の疑いがあるので行わない。
・感染症の発熱による股関節痛の人は行わない。
・進行がんで股関節に転移し、痛みがある人は行わない。
注意して行う人
・関節リウマチの人は関節炎の疑いがあるので注意する。
・人工股関節手術を受けた人は脱臼に注意する。
・ステロイドホルモン剤を投与したことがある人は主治医に相談する。
さぁ、「痛みのタイプ別体操」を始めましょう
「痛みのタイプ別体操」は、股関節痛の悪化や再発を防ぐばかりではなく、股関節痛を予防する要素もすべて含まれています。「クリニックで体操を行った患者さんの改善率は84%にのぼります。股関節痛がある人は『痛みのタイプ別体操』で自分に合った体操を見つけ、毎日続けることが大事です」と銅冶先生。
腰椎型(後屈改善タイプ):腰椎を意識して腰を反らす「体反らし体操」
腰を後ろに反らすことで、異常の起こりやすい腰椎の下部の緊張をほぐします。
●1セット10回、1日に5、6セット、3時間おきに行う
1. 壁に向かって立ち手を壁につける
壁に向かって1歩離れたところに立って、両脚を肩幅に開きます。両手は前に出して壁につきます。
2. 腰を反らして姿勢を保つ
両手を壁についたまま、腰を反らします。そのままの姿勢で2~3秒間保ち、1の姿勢に戻します。
<やり方のコツ>
・腰の力はできるだけ抜き、腰を反らすようにします。
・反動をつけないようにゆっくり腰を反らします。
・ひじやひざを十分に伸ばすことを意識します。
ひじやひざが曲がっていると、腰椎があまり動かないため、なかなか効果が得られません。
腰椎型(前屈改善タイプ):腰椎を意識して腰を曲げる「壁おじぎ体操」
腰を前にかがめることで、腰椎の背中側の関節を広げて腰や股関の痛みをやわらげます。
●1セット10回、1日に5、6セット、3時間おきに行う
1. 両脚を肩幅に開いて立つ
壁に背中をぴったり付けて、脚は壁から半歩の位置で肩幅に開いて固定します。
2. 骨盤を壁につけておじぎする
骨盤を固定するように壁につけ、そのままの姿勢でゆっくりとおじぎをして上半身を前に倒します。
3. 腰椎を丸めて姿勢を保つ
腰椎をしっかり丸めて、そのままの姿勢で2、3秒間保ちます。ゆっくり上半身を起こして1の姿勢に戻ります。
<やり方のコツ>
・お尻の上部が壁から離れないように気を付けます。
・勢いや反動をつけないでゆっくり行います。
・無理に深くおじぎをする必要はありません。
体を前に倒したとき、腰椎より下にある股関節を曲げないで、腰椎を丸めることを意識します。
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取材・文/松澤ゆかり 写真/齋藤ジン