「かくれ心不全」という言葉を聞いたことがありますか? 「心不全」は心臓の働きが不十分なために、じわじわ命を縮める病気。「かくれ心不全」は、心不全のリスクはあるものの、自覚症状が出ていない「心不全予備軍」のことで、日本人に急増しているそうなんです。そこで、北里大学北里研究所病院の猪又孝元(いのまた・たかゆき)先生に、「心不全にならないためのセルフケア」について教えていただきました。
予防できる病気です。心不全にならないためのセルフケア
①血圧を測る
心不全の大敵、高血圧を予防するには、血圧コントロールが重要。病院では緊張から正しく測れないこともあるため、家庭で測定することで正しい血圧が把握できます。「正常高値血圧」とされる130未満(※1)を目標にがんばりましょう。
いつ?:毎朝、朝食前
起床直後ではなく、朝ごはんを食べる前に測るのがおすすめ。
目指せ!:最高<130
②減塩がポイント
塩分の摂り過ぎで血中の塩分濃度が上がると、濃度を一定に保つために血液の量が増えます。血液量が増えると、流すための血圧も上昇。高血圧の減塩目標とされている1日6gまでに。
【POINT1】だし煮にする
煮物はとくに塩分が多め。だしだけで煮込み、味付けは食べるときにちょい足し程度に。
【POINT2】減塩調味料を選ぶ
しょうゆ、みそのほか、ソースやポン酢、めんつゆ、ドレッシングも減塩タイプを選びましょう。
【POINT3】主食に注意
パンや麺類(そばやうどんなど)は塩分量が多いので、減塩するなら主食はお米に。
目指せ!:1日6g未満(※2)
※1・2とも参考:「高血圧治療ガイドライン2019」(※1の正常高値血圧は高血圧ではないが要注意の数値です)
③足やせを防ぐ運動
心臓から送り出された血液を、心臓に押し戻すのはふくらはぎの役目。「足やせ」は、この足のポンプ機能低下の危険信号です。下半身の持久力を高める有酸素運動と、筋トレ効果の高い無酸素運動を組み合わせて7:3の割合で行いましょう。
目指せ!有酸素運動7:3無酸素運動
有酸素運動:ウォーキング
● 目線は遠く、あごを引く。
● 胸を張る。
● 背筋を伸ばす。
● 腕は前後に大きく振る。
● かかとから着地。
● 歩幅はできるだけ広く。
《ステイホームでできるカンタン運動:踏み台昇降》
太ももの筋肉を鍛えることができる運動です。階段を上るように、片足ずつ上げて、最初に上げた方から片方ずつ下ろします。これをリズミカルに10分間繰り返します。高さ20cm程度の踏み台か、階段でもOK。
無酸素運動:スクワット
1.足を肩幅に開き、背筋を伸ばして、両手はいすなどにつかまるか前に伸ばす。
2.つま先とひざが同じ方向を向くようにして、約3秒かけて、いすに座るよう腰を落としてひざを曲げる。この姿勢で1秒キープし、約3秒かけて1に戻る。
※心臓病がある際にはかかりつけ医と相談のうえ、軽く息が上がり、いつもの心拍数より20~30/分上がるまでを目安にします。
④心臓にいい入浴法
心身をリラックスさせ、心臓をいたわる入浴の仕方は、お湯はぬるめ(40~41℃)で、10分以内の半身浴。急に熱いお湯に入ると、急激な温度差で血圧が急上昇、心臓に大きな負担となり、突然死の危険もあるので要注意。
⑤禁煙
喫煙は動脈硬化に加え、心筋梗塞や狭心症のリスクとなり、心不全を急激に悪化させる危険因子です。心臓を守るためには、まずは禁煙を成功させましょう。
取材・文/湊 香奈子 イラスト/角 裕美