認知症にならないために!「脳寿命」を延ばす10の新常識【まとめ】

超高齢社会の現代において、認知症は誰もがなりうる病気の一つ。脳は体よりも老化が早いといわれています。10の新常識を知って、脳の健康寿命を延ばしましょう。今回は、アルツクリニック東京院長、順天堂大学医学部名誉教授の新井平伊(あらい・へいい)先生に「脳の老化・変化のポイント」について教えてもらいました。

認知症にならないために!「脳寿命」を延ばす10の新常識【まとめ】 2106_P038_01.jpg認知症にならないために!「脳寿命」を延ばす10の新常識【まとめ】 2106_P038_02.jpg

将来、5人に1人が認知症に。
日常の「変化」に注意を

厚生労働省は、2025年には高齢者の20%にあたる730万人が認知症になると推計しています。

「現在の医学では認知症の完全な予防はできませんが、できるだけ発症しないようにすることは可能です」と、新井平伊先生。

そのためには、ちょっとした「変化」に気を付けることが大切だそうです。

「いままで問題なくできていたことができない、ど忘れの頻度が増えているなど、これまでと比べて違う『何か』を見逃さないこと。少しでも気になったら、もの忘れ外来などを訪ねましょう」

見逃さないで!脳の老化・変化のポイント
●なぜかイライラする
●眠れなくなる
●外出がおっくうになる
●趣味が楽しくなくなる
●ど忘れが増える
●同じことを何度も聞くようになる
●頭痛や胃痛が多い気がする

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認知症になるまでの段階

主観的認知機能低下(SCD)
検査で認知機能の低下は見られないが、日常において上記(脳の老化・変化のポイント)のような変化の自覚がある状態。

軽度認知障害(MCI)
主な症状はもの忘れ。日常生活に大きな支障はなく、認知症とまでは診断されない状態。

10~15%がアルツハイマー型認知症に!


寿命を延ばすには体の老化予防をすること

脳はどのようにして老化していくのでしょうか。

「その仕組みは四つあります。これを知って日頃から老化予防を心がけることは、とても大切です」と、新井先生。

脳が健康な状態から認知症へと至るには、二つの段階(上)がありますが、この段階からアルツハイマー型認知症()に移行する前であれば、元の状態に回復させることも可能だからです。

また、アルツハイマー型認知症と診断された場合でも、進行を遅らせることができます。

「脳の老化は、生活習慣病などにより体が衰える→それにより体、加えて脳の血管が衰える→体調不良による意欲の低下や脳血管障害により脳の神経細胞が衰える、という段階を経て進んでいきます。そして、体、血管、神経細胞の老化は、やがて精神面にも影響を及ぼし、脳にダメージを与えます」(新井先生)。

脳の健康寿命を延ばすためには、体と心を健康に保つことが重要だといえそうです。

※アルツハイマー型認知症とは、認知症の種類の一つで、全体の約7割を占めます。脳内にたまった異常なたんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」により神経細胞が破壊されて脳が萎縮し、軽度のもの忘れから徐々に進行します。

脳が老化する4つの仕組み

1.体全体の老化

糖尿病、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病は、体の機能を衰えさせ、脳にもダメージを与えます。認知症の発症にも直結するため、まずそれらを予防・治療することが脳の老化予防につながります。

2.脳の血管の老化

生活習慣病は、どの病気であっても血管を傷つけ、老化させます。これが生活習慣病を予防・治療すべき最大の理由。血管から脳の神経細胞に酸素をきちんと行き渡らせることができなくなると、脳の働きが衰えます。

3.脳の神経細胞の老化

脳の神経細胞は、認知症でなくても加齢に伴って働きが衰え、全体の数も減っていきます。これを防ぐキーワードは「意欲」。楽しみながら何かに取り組もうとする「意欲」が、脳の機能を維持・活性化させる最大の秘訣です。

4.メンタルの老化

血管や神経細胞の老化によって現れるのが精神面の衰え。抑うつ感のほか、気弱になったり、普通にこなしていたことが面倒になったりします。会社や家庭などでするべきことをきちんとこなせなくなったら、注意信号です。

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詳しい記事はこちら:2025年には5人に1人が認知症!? 「脳が老化する4つの仕組み」を知って老化予防を心がけよう

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【新常識】ながら行動がいいんです

二つのことを同時に行って脳を活性化

認知症の予防策として注目されているのが、「ながら行動」です。

これは、二つのことを同時に行うことで脳の別々の場所を働かせ、その機能を活性化させるというもの。

例えば、簡単な運動をしながら、頭の中で計算するなど、体の運動機能と一緒に頭を働かせると、相乗効果が得られます。

国立長寿医療研究センターが認知症予防のための運動法「コグニサイズ(※)」を開発したのもこの理由からです。

「難しい二つに取り組む必要はありません。歌でも計算でも自分の好きなことや楽しめることを、できる運動にプラスして、自分なりの方法を見つけましょう。認知症の予防のためにただ日課として行うのではなく、楽しみながら日々続けることが、将来の認知症の予防につながります」(新井先生)

※コグニサイズとは、軽い運動と認知課題(しりとりや計算など)を組み合わせた運動法。軽度認知障害(MCI)の段階からの認知機能の低下を抑制できることが示唆され、自治体などが普及を進めています。

例えば、こんな"ながら行動"がおすすめです

●料理をする+歌を歌う

認知症にならないために!「脳寿命」を延ばす10の新常識【まとめ】 2106_P041_01.jpg●簡単な運動+計算する

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●ウォーキング+しりとり認知症にならないために!「脳寿命」を延ばす10の新常識【まとめ】 2106_P041_03.jpg

詳しい記事はこちら:二つのことを同時に行って脳を活性化! 「脳寿命」を延ばす「ながら行動」で認知症予防

【次ページ:脳が働く散歩法】

 

<教えてくれた人>
新井平伊(あらい・へいい)先生
アルツクリニック東京院長、順天堂大学医学部名誉教授。専門はアルツハイマー病を中心とした老年精神医学。1978年、順天堂大学医学部卒業。1999年、同大学病院で国内唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を導入。2019年、アルツクリニック東京を開業し、世界に先駆けてアミロイドPETを含む「健脳ドック」を導入した。

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この記事は『毎日が発見』2021年6月号に掲載の情報です。

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