あなたは「糖質制限」ダイエットをしたことがありますか?そのダイエットは成功しましたか? 実は巷にあふれる「糖質制限」ダイエットの方法は結構ハンパなものが多いのです。
数々のダイエット方法を実践した医師自身による「1日5g以下の徹底した糖質制限=糖質制限2.0」は正確な理論に基づいたシステマチックなダイエット方法。その驚くべき効果を次に体験するのは、あなたです。
※この記事は『ハードワークでも疲れないカラダを作る 糖質制限2.0』(西脇 俊二/KADOKAWA)からの抜粋です。
前の記事「「疲れやすさ」も実は糖質のせい!? 糖質制限のマルチな効果を体感せよ/糖質制限2.0(2)」はこちら。
「ハンパな糖質制限」が事態を悪くする
糖質制限を勧めると、必ず出てくるのが、「体験者」を自称する方々からの反論です。
「自分もやってみたけれど、痩せなかった」
「リバウンドしないなんて嘘だ、やめたら前より太った」
など。しかし、それは「やり方が甘かったからだ」と私は断言します。
「糖質制限、やってみたけど微妙だった」という方の99%は、少なくともここで推奨する「正しい糖質制限」を実践していません。
従来の糖質制限の中には、「いきなり断つのが辛かったら、夕食の白飯を抜くだけでもOK」といった、生半可なやり方を推奨するものも多々あります。
はっきりいって、それでは意味がありません。体重がちょっと軽くなる、数字を減らすことが目的ならば、米をたくさん食べていた人なら効果はあるといえるでしょう。
しかし、糖質制限の本当の効果である「疲れにくい身体」や「冴えた頭」などを体験するには、炭水化物をちょっと抜くなどでは到底ダメです。
なぜダメなのか。最大の理由は、糖質が中毒性を持つことです。
糖質を摂ると、脳内ではβエンドルフィンという快楽物質が分泌されます。これが「甘いものを食べると幸せ!」という、あの感覚のモトです。
この幸福感は「糖質を摂らないと物足りない」という感覚と表裏一体です。
糖質を入れ続け、脳がこの快感を味わっている限り、誘惑はいつまでたっても消えません。糖質制限実行中も「本当はもっと食べたいのに......」と感じ続けることになります。
となると、少しばかり体重が減った段階で「もういいや」と挫折、糖質をドカ食いしてしまいかねません。
これがリバウンドのモトです。なまじ摂取量が減っていたところに糖質を再注入してしまうと、前述の倦怠感や交感神経の過活動が急激に戻ってきて、何もかも元の木阿弥になります。
成功を得たいなら、「減らす」のではなく、一時でも「断つ」のが正解です。
「断つ」というとすごく大げさに聞こえますが、みなさんが思っているほど決して辛いことではありません。
3日間糖質を断てば、中毒状態から抜けられます。
そうなれば、糖質への欲求自体が収まります。目標体重に達した後も、たまに「たしなむだけ」に抑えられるでしょう。
1日5g以下の「断糖」で健康な身体になる
世の糖質制限本の推奨する1日の糖質摂取量は、いささか生ぬるいものです。
「ダイエット中は60gくらい」
「目標に達して維持期になったら、130gくらい」
といったものが主流です。
対して糖質制限2.0が推奨するのは、「1日5g以下」。維持期でも、50g以下に抑えることをお勧めします。
「そんなことをして大丈夫なのか?」
「身体を壊さないか?」
「頭が働かなくなるのでは?」
再び反論が聞こえてきそうですが、大丈夫です。
人間の身体は、糖を摂らなくても生きていけます。
それを証明しているのが、カナダやアラスカに暮らす「イヌイット」の人々です。
1950年代から約20年間、デンマークの大学がイヌイットの暮らしを取材し、「食」と「疾病」の関係を研究しました。
そこでわかった彼らの食生活は、徹底的な断糖食でした。
米や麦などの穀物はいっさいナシ、野菜や果物もナシ。氷雪地帯とあって、農業はいっさい営めないからです。1日の糖分摂取量は5gどころか、2gにも満たないものでした。
彼らが食べていたのは、アザラシなどの海獣類や魚介類だけ。栄養学的な常識からみると、あまりにも偏った食生活です。しかし彼らの中に、がんや心臓病や生活習慣病はほぼ皆無。虫歯さえ見られませんでした。
「新鮮な生肉が身体に良い作用を及ぼしているのでは?」と当初は考えられましたが、彼らは保存食として干肉も食べていたので、その説は却下。
「イヌイットだけの特別な体質なのでは」という仮説も、ほどなく覆されました。なぜなら、時代が下り、街に定住するイヌイットが増える中、その人々の中にがんや心筋梗塞や虫歯の症例が現れたからです。
これは糖質が身体をむしばむことの、強い証拠といえるでしょう。
断糖は、決して極端なことでも、危険なことでもありません。むしろ生活習慣病のリスクを絶ち、健康の基盤を作る食生活なのです。
「30品目で健康になる」に根拠はない
それでも、栄養が偏ることに抵抗感や不安感を感じる方の頭の中には、「1日30品目を食べるべし」という、例のキーワードが浮かんでいることでしょう。
少し詳しい方なら、農林水産省と厚生労働省が作成した「食事バランスガイド」というコマの形をした図を思い浮かべているかもしれません。小中学校や病院には、この図を描いたポスターがよく貼り出されていますね。逆円錐形のコマに、様々な料理の絵が描いてあります。1日でこれらのメニューを取り揃えれば、自然に30品目の食材が摂れますよ、というあのガイドです。
しかし、この「30品目」という数字には、実は根拠はありません。
これくらい多くの種類の食材を摂っていれば栄養バランスが整う、といった程度のアバウトな基準です。その「バランス」とは、いわゆる三大栄養素──炭水化物・タンパク質・脂質をそれぞれしっかり摂る、ということを意味します。
タンパク質と脂質は、たしかにしっかり摂らなくてはいけません。しかしこれらと、炭水化物=糖質の間には、決定的な違いがあります。
「必須アミノ酸」「必須脂肪酸」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
前者はタンパク質の、後者は脂質の構成成分です。これらは体内で作ることができません。食べ物などから摂取しなければならないという意味で、この2つは「必須」なのです。
対して、「必須炭水化物」や「必須糖質」という言葉はありませんね。それは糖質が、外から摂取しなくても体内で作れるからにほかなりません。
ではどうして、炭水化物は「三大栄養素」の1つに祀り上げられているのか。
ハッキリいってしまえば、単なる習慣です。
はるか昔、狩猟で食糧を得ていた人類は、もっと確実な食糧確保の術として、穀物の栽培=農業を発明しました。その当時なら、確かにこれは生命線だったでしょう。狩猟で獲物を何も取ってこられなければ、穀物に頼るしかないからです。
しかし現代の豊かな食生活において、その心配がないのは明らかです。
米や小麦はもう、なくてはならぬものではありません。小さなころから教え込まれてきた「30品目」は、私にいわせれば栄養神話とでも呼べるものです。
ここで疑問に思われる方もいると思われるのが、子どもについてはどうなのかということです。果たして、小さな子どもも糖質制限をするべきなのでしょうか?
患者さんを見ていてもわかりますが、糖が与える影響は人それぞれで差があります。私は子どものころから、ご飯(白米)を食べると極端に眠くなり、喉がつまるような感じがありました。だから他の人と比べて、積極的には白米を食べてはいませんでした。
「成長」という観点からいうと、糖質はほとんど必要ないと思います。ただし、子どもは脳のエネルギー(中枢神経のネットワークは、10歳ころまでにほぼ完成するといわれています)と身体のエネルギー(子どもは大人よりも多く動き回り、代謝も高いです)が必要なので、「断糖せよ」とまではいいませんが、やはり食事中のタンパク質や脂質の比重を高めるほうがいいと思います。すると結果的に、糖質の比重は下がります。
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