外から入って来た視覚情報を正確に取り込む役割の「目」。目から得られた情報は、視神経を通して脳に伝わり脳で処理されます。しかし、目は加齢とともに見え方の質が少しずつ低下していきます。特に「白内障」は50歳代から患者が増え始め、60歳代では約70%、80歳以上になるとほぼ100%の人に見つかります(※)。長年、目の治療を行っている眼科医の平松類先生に白内障についてお聞きしました。
※出典:Minas「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」(2002年)
水晶体に濁りが生じて見えにくくなる白内障
私たちの目の中で、レンズの役割を果たしている透明な「水晶体」が濁り、見え方が悪くなるのが白内障です。
水晶体はたんぱく質でできていますが、加齢などにより次第にたんぱく質が変化して濁りが生じます。一度濁ってしまうと、元の透明の状態には戻りません。
「水晶体が濁ると、光が通るときに不規則に屈折するため、見えにくさを感じるようになります。見えにくい症状は人によってさまざまです」と平松先生は話します。
正常な目
水晶体が透明なので、光が通ったときに適切に屈曲して網膜に鮮明な像を結ぶ。
白内障の目
水晶体が濁っていて、光がさまざまな方向に散乱するので、かすんだりぼやけたりする。
生活に不便を感じたら手術を検討。年に1度は視力検査を
白内障の治療は、初期では進行を遅らせる点眼薬で様子を見る場合もありますが、最終的に手術になります。
「手術をする時期の目安は、眼鏡をかけたときの視力が0.7未満になったときです。しかし、生活に不便を感じていなければ、もっと遅い時期でもかまいません」と平松先生。
反対に、仕事で細かい作業をする人などは、もう少し早めの方がいい場合もあります。「白内障は進行が遅いですが、自治体などの健康診断で1年に1回程度は、視力検査をしておくことが大事です」と平松先生。
こんな症状がある人は注意しましょう
白内障の症状例
・物がぼやけて見にくい
・物が二重、三重に見える
・視力が落ちたようだ
・向こうから来た知人に顔が分かりにくい
・眼鏡をかけても文字が見えにくい
・夜間、車のライトがまぶしく感じる
これらの症状がある場合、白内障手術の目安は、矯正しても視力が0.7未満のときです。
取材・文/松澤ゆかり イラスト/はせがわめいた