ここ数年「止まらない咳」を訴えて病院を訪れる人が増えているといいます。咳は本来、異物を体内から出すための生理的な反射反応。でも、特に2週間以上続く「長引く咳」は、さまざまな病気の可能性があるので、注意が必要です。
咳の仕組みや咳が止まらない原因、治療法などを、日本内科学会総合内科専門医・日本呼吸器学会専門医で、「池袋大谷クリニック」の院長、大谷義夫先生にお聞きしました。
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咳が続く期間によって症状を分類できます
通常の風邪やインフルエンザ、急性気管支炎によって出る咳は、2週間ほどで増殖力を失うウイルスが体内に入って起こる感染症によるもので、約2週間、長くとも3週間以内には治まります。ですから、それ以上長く咳が続く場合は、風邪や急性気管支炎ではなく、ほかに原因があると考えます。
咳は、風邪や肺がんなど、さまざまな呼吸器系の病気によって起こります。日本呼吸器学会の「咳嗽(がいそう。咳のこと)に関するガイドライン第2版」では、咳が続く期間によって、以下の3種類に分類しています。
■0~3週間...急性の咳
風邪やインフルエンザ、急性気管支炎などの感染症である場合がほとんど。
■3週間以上~8週間未満...遷延性(せんえんせい)の咳
咳ぜんそく、副鼻腔炎、胃食道逆流症、アトピー咳嗽、感染後咳嗽などの病気が考えられます。
■8週間以上...慢性の咳
気管支ぜんそく、咳ぜんそくなどの可能性があります。
「初期でも激しい咳が出る場合は、肺がんや肺炎、咳ぜんそくの初期かもしれないので、病院のX線検査などで確認します。また、遷延性の咳でも慢性の咳でも、いずれにせよ2週間以上続く場合は、呼吸器科を受診して咳の原因を特定し、適切な治療を行う必要があります」と、大谷先生。
大谷先生の「池袋大谷クリニック」で使用している、咳のチェックシートも参考にしてみましょう。
【咳のチェックシート どのような時に咳が出ますか?】
※カッコ内は症状がよく見られる主な病気。
1. 夜中に咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそく、心不全<心臓ぜんそく>、胃食道逆流症など)
2. 明け方に咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそく、心不全<心臓ぜんそく>など)
3. 冷気を吸い込んだ時に咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそくなど)
4. 会話中に咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそく、心因性咳など)
5. 笑った時に咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそく、心因性咳など)
6. 吐くような咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそく、胃食道逆流症など)
7. エアコンをつけると咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそくなど)
8. 電車に乗ると咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそくなど)
9. 香水の香りを嗅ぐと咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそくなど)
10. タバコの煙を吸うと咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそくなど)
11. ラーメンを食べていると咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそくなど)
12. お風呂などの湯気で咳が出る(咳ぜんそく、気管支ぜんそくなど)
13. 過去にも同じような「長く続く咳」を経験している
14. 咳が出ない時は出ないが、一度出始めると止まらない
上記のうち1つでも当てはまれば、刺激に対して気道が敏感になっている可能性があるそうです。
また、一日じゅう咳が出る場合は後鼻漏(こうびろう。鼻汁がのどに落ちる状態)、起床後から午前中に咳がよく出る場合はアレルギー性鼻炎などが原因の場合もあります。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)