咳には「止めてはいけない咳」と「止めたほうがいい咳」があります

ここ数年、「止まらない咳」を訴えて病院を訪れる人が増えています。「1カ月前に風邪をひいて、咳だけが治らずに今も出る」「カラ咳が1年くらい続いている」といった症状です。咳は本来、異物を体内から出すための生理的な反射反応ですが、長引く咳、特に2週間以上続いている咳の場合は、風邪ではなく、さまざまな病気の可能性があるので、注意が必要です。咳の仕組みや咳が止まらない原因、治療法などを、日本内科学会総合内科専門医・日本呼吸器学会専門医で、「池袋大谷クリニック」の院長、大谷義夫先生にお聞きしました。

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咳は異物を体外に出して体を守る反射反応です

そもそも、咳とはどういった仕組みで起こるのでしょうか? 「咳は、鼻や口から吸い込んで気管や気管支に入ってきた異物を、体外に吐き出そうとする防御反応です。気道の内側の粘膜には、線毛(せんもう)という細かい毛がブラシのように生えていて、異物を口のほうに排出しています。しかし、線毛だけで排出できない時は、粘膜から多くの粘液を分泌して異物をからめとり、痰として外に排出するのです」と、大谷先生は言います。

つまり、咳というのは、異物を感じたのどの粘膜から脳に情報が送られ、情報を受け取った脳が「異物を吐き出せ」と体に指令することによって起こるもので、これを「咳反射」といいます。この"異物"というのは、ウイルスや細菌、ほこりや粉じん、ペットの毛、花粉などさまざま。例えば、ウイルスや細菌などの病原体がのどに取りついて炎症を起こし、咳や痰、鼻汁、発熱などを起こすのが、いわゆる風邪です。病原体を体外に出すために咳をするということです。

このように咳には体を守るための大切な役割がありますが、咳が長く続くと体力を消耗してしまいます。1回の咳で消耗するエネルギーは約2キロカロリーと言われており、風邪をひいた時などに1時間に10回の咳をすれば、約20キロカロリー。1週間、2週間と続けば数千キロカロリーを消耗し、夜もよく眠れず、体力が弱って他の病気を引き起こしてしまう可能性も考えられます。

「咳には、止めてはいけない咳と、止めたほうがいい咳があります」と、大谷先生。止めてはいけない咳は、風邪の時にゴホゴホと咳込むような、生理的に起こる反射によるものです。一方、止めたほうがいい咳は、2週間以上続くもので、この場合は何かほかの原因があると考えたほうがいいでしょう。長引く咳は、呼吸器だけでなく、鼻や食道、胃などのさまざまな病気のサインでもあるので、放置するのは禁物です。

 

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取材・文/岡田知子(BLOOM)

 

 

<教えてくれた人>

大谷義夫(おおたに・よしお)先生

「池袋大谷クリニック」院長。日本内科学会総合内科専門医・日本呼吸器学会専門医。群馬大学医学部を卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、アメリカ・ミシガン大学留学などを経て、2009年に「池袋大谷クリニック」を開業。呼吸器内科のスペシャリストとしてテレビや雑誌への出演も多い。著書に『長引くセキはカゼではない』(KADOKAWA)、『止まらない咳を治す!』(扶桑社ムック) 、『長生きしたければのどを鍛えなさい』(SB新書) 。

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