年齢を重ねるにつれて、「肩が上がらない」「足元がおぼつかない」など、若いころにはなかった体の不具合が出てきますよね? そんな悩みを解決できる1日たった10秒の運動があるんです。それは、全国で1万人以上に健康体操を教えてきた簗瀬寛さんが考案した介護予防&未病のための健康体操。今回は、簗瀬さんの著書『ごぼう先生と楽しむ大人の健康体操』(あさ出版)から、そのエッセンスを連載形式でお届けします。
危機感と好奇心で気持ちをつくってしまう
運動は体にいい。
わかっている人は多いはずなのに、実際に継続して運動している人は決して多くありません。スポーツジムへ通っている人は、全体の約3%しかいないそうです(経済産業省データより)。
なぜでしょう。
忙しい、運動ができる場所がない、始めてみたものの続けるのがなかなか大変......など、様々な事情はあるでしょうが、やはり「切羽詰まった状況にない」からではないでしょうか。
極端な話、今日、運動しなかったからといって、それが理由で死ぬことはありません。明日も同じです。その結果、なんとなく、だんだんと先送りしてしまったり、せっかく始めても続けられなかったりしてしまうのです。
でも、私はそれでもいいと思っています。無理にすることには意味がないからです。
私は講演会やセミナーで「体操をしましょう」とは言いません。「この体操を、誰か身近な家族や友人にお伝えしてください」と、コミュニケーションのネタとして使うことをご提案します。人に伝えることは、「自らの体を動かして、筋肉に力を入れて、脳を使って考える」とてもいい機会になるからです。
時折、「運動とコツコツが苦手な人は、どうすればよいか」と質問をいただくのですが、私は次のようにお答えしています。
運動を継続するためには、危機感と好奇心を持つこと。
それぞれお話ししていきましょう。
●危機感
どうしてもやる気にならないのであれば、無理やりにでも切羽詰まった状態をつくってしまうしかありません。
私はそれを「生命危機スイッチをONにする」と言っています。
手っ取り早いのは、健康診断を受けることです。何かしら異常が見つかると、その焦りからすぐにスイッチが入るはずです(何も異常がないとONにならないというリスクもありますが......)。
メタボ気味だ、血糖値や尿酸値が高いなど、「このまま放置すると危ないですよ」とお医者さんに言われてなお、「運動したくないしな~」という人は、この本を読んでいる方の中にはいないでしょう。
また、健康診断を受けることで、自分の健康状態が数字によって見える化されます。体重にしても、血圧にしても、内臓脂肪にしても、体の内側が健康かそうでないかが、容赦なく数字で示されるため、「運動をしなければならない現実」が突きつけられ、自然と危機感が生まれるというわけです。
現在の健康診断は優秀なので、過去の自分のデータと比べてくれます。1年前の自分と比べて、少しでも点数がよければ、予防の効果が出ていると受け取っていいでしょう。
●好奇心
人は、好きなことじゃないと続けられません。これは、もう性質なので受け入れるほかありません。
一方で、好きなことは飽きるまでずっと続ける性質も持ち合わせています。
この人間の潜在的な性質を利用して、やりたいと思わせる状況をつくり出すというわけです。
運動を始めるというよりも、好きなことをしていたら結果的に運動をしていた、という流れが理想です。
まずは、「〇〇教室」「サロン」「カルチャークラブ」など、なんでも結構です。体験から始めて、楽しめそうか、好きと思えるかどうかを確認して、やりたいと思ったら飛び込んでみましょう。
何事も味見をしてみないと、好きか嫌いかわかりません。どんどん試してみてください。
農業や園芸もそのひとつです。野菜やお花を育てることは手間がかかります。でも、だからこそ、それがよい運動につながります。実際、80歳や90歳を超えてもなお畑仕事をされている方は、介護いらずの方が多いです。
もちろん、農業や園芸でなくてもかまいません。趣味でスポーツやダンスを習ったり、芸能人の追っかけをしたり、遠くに住んでいる友人や孫に会いに行ったり......。
そのことを考えるだけで楽しくなる、気持ちが軽やかになるというものがひとつでも見つかったならすぐに行動することです。好きなことのために体を動かすことは苦になりません。気づいたら、結果的に運動をしていた、という状態をつくることができているはずです。
どうしても運動が続かないという方は、ぜひ、危機感もしくは好奇心に背中を押してもらってください。
ごぼう先生考案の楽しい介護予防「大人の健康体操」記事リストはこちら!
介護予防・未病にために効果を発揮する、10の「大人の健康体操」が写真でわかりやすく紹介されています