『80歳の壁』和田秀樹さんが指南!脳年齢を若く保つ「60代の過ごし方」

年齢を重ねると心身ともに変化も多く、不調に悩まされることも増えてきます。そこに大きく関係しているのが「脳の老化」です。

今回は、ルネクリニック東京院 院長の和田秀樹(わだ・ひでき)先生に「60代の思考」についてお聞きしました。

【前回】50代の「やる気が出ない」は要注意。『80歳の壁』和田秀樹さんに聞く、脳年齢を若く保ちうつを防ぐ方法

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60代は好きなことだけすればいい!

何かと変化の多い60代。

これから起こることへの対処法を考えておくことで、この先の不安がやわらぎます。

まずは好きなことをして前頭葉を活性化し、第2の人生を楽しむ準備をはじめましょう。

これから起きる環境の変化を知っておく

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60代になると、「定年退職」「子どもの自立」「親の介護」といった変化を、多くの人が経験します。

こういった環境の大きな変化によって心に不安や疲れがたまると「気分が鬱々とする」「よく眠れない」といった心の問題が起こりやすくなると和田先生。

「年を取るにつれて、変化が起こるのは当たり前のこと。そう知っておくだけで不安が緩和され、これまでなかった変化にも冷静に対処できます」

「食べたいもの」=「体が欲しているもの」を食べる

和田先生によると、低カロリー、低栄養、低脂肪の食事を続けていると、肥満は抑えられても、早く老けるという弊害があると言います。

「60代以降の方は、好きな食事を好きなように食べた方がいいと思います。食べることは人生における大きな楽しみ。暴飲暴食はおすすめしませんが、おいしいものを食べて幸せな気持ちになるだけで、前頭葉には良い刺激になります」

日々、どんなふうに食事をしたら良いのかは、下記を参考にしてみましょう。

【活動時間に合わせた食事の取り方】

下記は、「タイムリー・ニュートリション(※ )」という考え方での食事。時間帯により、臓器の活動に合った食事の摂取を。

※抗加齢医学・予防医学の世界的権威であるクロード・ショーシャ博士によるアンチエイジング理論。臓器の活動時間に合わせた食事をすることで、内臓の負担や細胞の炎症が減るという考え方。

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朝食:7~9時
肝臓が活発になりたんぱく質の合成が進む時間。たんぱく質と脂肪が豊富な卵や魚、鶏肉にご飯1膳ほどの炭水化物を。

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昼食:12~14時
まだ肝臓が活発な時間帯。たんぱく質と野菜をたっぷり摂りましょう。併せて、適量の炭水化物を摂るのが◎。『80歳の壁』和田秀樹さんが指南!脳年齢を若く保つ「60代の過ごし方」 2303_P026_05_W500.jpg

間食:16~17時
膵臓の働きが活発になり、インスリンの分泌も高まるとき。甘いものを食べるなら、この時間帯に摂りましょう。

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夕食:19~21時
肝臓の代謝機能が弱まるので肉類は少なめに。脂肪はエキストラバージンオイルや脂ののった魚がおすすめ。

普段使わない道を歩いて前頭葉を活性化する

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「60歳以降の人に欠かさずやっていただきたい習慣といえば散歩」と、和田先生。

散歩の習慣があるかないかで、筋力をはじめとする生きる力に大きく影響すると言います。

日光を浴びることでセロトニンも分泌され、気持ちが明るくなる効果も。

さらに、普段は使わない道を通ると「新しい体験」となり、前頭葉を使う機会が増えていきます。

「毎日、少しでいいから変化をつけることが大切です」

血糖値や血圧は自分の適正値を知る

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血圧や血糖値が高いからと過剰に塩分を控えたり、言われるまま薬を服用し続ける人がいますが、大切なのは「自分にとってその数値が適正かどうかだ」と、和田先生。

例えば、年齢を重ねた人が塩分を制限し過ぎると、低ナトリウム血症を引き起こすリスクが高まります。

また、薬で血圧を下げたけれどもフラフラして生活に支障が出るケースも。

数値よりも、調子よく動けるかどうかが重要です。

老化を止めたいなら若作りがいい

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「60歳を過ぎて派手な格好は恥ずかしい」と思う人もいるかもしれませんが、見た目のアンチエイジングは、老化のスピードをやわらげることに大きく影響することが分かっているので、積極的にやった方がいいと、和田先生。

老人ホームでの調査でも「お化粧をすると急に背筋が伸びる」といいます。

洋服や化粧など、身だしなみに気を使うだけで、精神的にも身体的にも若返り効果が生まれます。

「年を取ったから」を理由に免許返納はしなくていい

免許の返納はいつすべきか、頭を悩ませている方もいるかもしれません。

しかし、和田先生によると「免許を返納すると外出頻度が減り、足腰はもちろん、脳の機能も衰えてしまう」といいます。

ただし、日常的に薬を服用している場合、運転中に眠気や意識障害を起こし、重篤な事故につながることも。

薬の数を減らすためにも生活習慣を見直したり、かかりつけ医に相談してみましょう。

参考:『年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図』(講談社現代新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)/著:和田秀樹

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/macco

 

ルネクリニック東京院 院長 
和田秀樹(わだ・ひでき)先生

東京大学医学部卒業。精神科医。高齢者専門の精神科医として30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。近著『80歳の壁』(幻冬舎新書)は55万部を超えるベストセラー。他、著書多数。

この記事は『毎日が発見』2023年3月号に掲載の情報です。

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