舌が促す鼻呼吸こそ、本来の呼吸
そして舌には、鼻呼吸を促すという大事な役割があります。
そもそも呼吸は鼻で行うもの。口呼吸をするのは、哺乳動物ではヒトだけであり、他の哺乳動物は鼻呼吸しかしていません。
他の哺乳類とヒトとの大きな違いは、ヒトだけが言葉を発するということ。ヒトも新生児のときは鼻呼吸だけをしているのですが、言葉を発するようになると、口呼吸となる機会が増えてくるのです。
舌力の低下で大きな問題となるのは、鼻呼吸から口呼吸に変わりやすくなる点。舌を使う機会が減って衰えてしまい、呼吸筋として正しく機能してくれないと、横隔膜などを駆使する深くゆったりとした鼻呼吸ができなくなり、それを補うために浅く速い口呼吸がメインとなりやすいのです。
また、舌が衰えると呼吸に合わせた横隔膜の上下運動がスムーズにできなくなり、胸郭が上がったままで、猫背など不良姿勢や肩こりなどの原因になります。真正面から見て肩が上がったり、首が短くなったりしている人は要注意。胸郭が上がりっぱなしになり、舌も横隔膜も自在に使えなくなっている恐れがあります。試しに、下アゴを引き、肩をすくめて首に力を入れた状態で息をしてみてください。深呼吸はおろか、唾液をゴックンと飲み込むことすら難しいとわかるはずです。
口呼吸がクセになり、すっかり染み付いている現代人が、吸うときも吐くときも鼻呼吸をするのはちょっと大変でしょう。
しかし、口呼吸の悪いクセを、鼻呼吸へと早期に正しくスイッチするためには、「鼻から吸って鼻から吐く」という意識付けが重要。
タイミングはいつでもOKですが、起床直後、入浴後、就寝前などに、「鼻から吸って鼻から吐く深呼吸を10回する」などとマイルールを決めておくと継続しやすいでしょう。