脳は環境によって人の印象をも変える/なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?

夫婦や親子、仲が良い友人でも思っていることはなかなか伝わらないものです。実は、その原因は脳タイプが違うからかもしれません。そこで、脳科学者・西剛志先生の著書『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)より脳タイプ診断、脳には偏りがある現実など脳が作り出す人との違いをご紹介します。

【前回】あなたはどれ? 脳タイプ診断テスト/なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?

【最初から読む】同じものを見ても脳ごとに認識は違う/なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?

あなたは、どちらの人がやさしい人だと思いますか?

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あなたは、ソファに座る人と椅子に座る人、どちらの人がやさしい人だと思いましたか?

もしかすると、ソファに座っているほうがやさしい人に見えるかもしれません。

同じ人なのに、なぜ違ったイメージになるのか、見ていきましょう。

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ソファに座るか椅子に座るかが、あなたの第一印象を変える

2つの絵で描かれている人物は、どちらも同じです。

しかし、ソファに座っている人のほうが、椅子に座っている人よりやさしい人に見えます。

なぜでしょう?

それは、やわらかさをイメージさせるものが近くにあると、人の印象もやわらかくなるからです。

ハーバード大学の研究によると、硬い木のブロックを触りながら登場人物の評価をしてもらうと、やわらかい毛布を触っているときに比べて、登場人物を頑固で厳格な性格だという人が多くなります。

また、やわらかいソファに座った場合、硬い椅子に座って交渉するよりも、交渉相手をより安定的な人と感じて、交渉がより柔軟になることも報告されています。

ふかふかのソファに座るか、硬い椅子に座るか。

それだけの違いで人の印象や、交渉の難易度が変わるのですから、これはぜひとも覚えておいて、日常生活の中でも使っていただきたいコミュニケーションのヒントです。

苦手な人と話をしなければならないとき、親子や夫婦でちょっと言いにくいことや難しい話をするときなどには、ソファに座って話すことをおすすめします。

私も初めてお会いする方や少し難しいお話をするときには、ソファ席を選ぶようにしています。

私の友人からは、オフィスを移転したときに、お客さまとの商談ルームのイスを、それまでのひじ掛けのない硬いタイプから、ひじ掛けが付いてクッションがきいた、やわらかいタイプに替えたところ、成約率がアップしたという話を聞きました。

要因が椅子だけとは思いませんが、やわらかい椅子がお客さまの心理状態に何らかの影響を与えたのかもしれません。

私たちの思考や判断は、あらゆるものに影響を受けています。

環境要因が変わるだけで、よく見えたり悪く見えたり、肯定的にとらえたり否定的にとらえたりします。

私たちは、自分の思考や行動は自分の意志で決めていると思いたいところですが、実際は94~96%が無意識的に決定していることがわかっています。

つまり、自分の確固たる意志というよりはむしろ、環境に左右されているといえるのです。

同様に、あなたが相手の言動にイラッときても、その言動は相手の本意ではなく、そのときのその場の環境が、相手にその言動をとらせてしまった、また自分もそのときの環境でイラっとする印象を持ってしまった、といえなくもないのです。

あなたを取り巻く環境もまた、脳のバイアスをつくっているということをお話ししていきます。

「見えていないもの」に影響される私たちの判断

あなたの判断は環境に左右されている、といわれても、にわかには信じられないかもしれません。

しかも、94~96%が無意識的に決定しているといわれると、自分を信じられなくなりそうですよね。

しかし、誰もがそうだと知ったら、安心するかもしれません。

例えば、こんな実験があります。

被験者に「囚人ゲーム」をしてもらいます。

囚人ゲームとは、ある犯罪で捕まった2人の容疑者が別々の部屋で尋問を受け、「自白するか」「自白しないか」を決断するゲームです。

2人の決断によって、受ける刑罰の重さが違ってきます。

通常は自分だけ助かろうとする人が多くなるそうです。

しかし、ゲームをしているモニターの横に、2つの幾何学図形が一方を助けようとしているスクリーンセーバーを置くと、2人で助け合って「2人とも自白しない」という決断を選択する確率が上がります。

これはにわかには信じられないかもしれませんが、私たちの行動や意思決定がモニターの横にあるスクリーンセーバーの影響を受けたからです。

「見えている」という意識はなくても、目の前にあるものはすべて、視覚情報として脳内に送り込まれています。

昔から脳血管の障害で視野が一部しか見えていない患者が、なぜか障害物をよけて歩けるという不思議な現象が知られていましたが、それは見えていなくても脳に情報が届けられているからです。

つまり、私たちは、「見えている」という自覚がないだけで、身の回りにあるものから影響を受けています。

そして、思考にまで作用します。

買うつもりはなかったけど、つい買ってしまった。

怒るつもりはなかったけど、なんとなくイラついて怒鳴ってしまった。

あなたにも、そんな経験はありませんか?

もしかすると、そのとき傍らに、自分には見えていなかったけれど、その洋服をかっこよく身につけた人が立っていたり、大嫌いなタレントが何気なくつけていたテレビに映っていたりしていたのかもしれません。

その情報が、買う、怒鳴るという行動を誘発させた可能性があります。

同様に、相手の言動も、環境に影響されています。

場所を変えると、180度違った答えや反応が返ってくることもあります。

【次回】脳は思い込みで自然に視野を狭める/なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?

【まとめ読み】『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』記事リストはこちら!

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自分の脳と他人の脳が作り出す違いについて全5章にわたって詳しく解説。脳タイプ診断テスト付き

 

西 剛志

脳科学者(工学博士)、分子生物学者、T&Rセルフイメージデザイン代表/自身の夢を叶えてきたプロセスが心理学と脳科学の原理に基づくことに気づき、2008年に世界的にうまくいく人物の脳科学的なノウハウを提供する会社を設立。企業や個人に至るまで約1万名以上をサポートしている

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『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』

(西 剛志/アスコム)

同じものを見ても、人はまったく同じ認識ができません。なぜでしょうか? そんな不思議を脳科学の観点から例を挙げて解説してくれる良書。脳のタイプを3つにわけ、気軽に診断した上で脳が左右されている環境などについて専門家が語ります。

※この記事は『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(西剛志/アスコム)からの抜粋です。
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