2020年は時代が大きく変化し、「コンプライアンス」の見直しがされるようになりました。たとえば、SNSを使った気軽な副業が可能になりましたが、そのやり方は本当に法律に触れていませんか?そこで、弁護士・菊間千乃先生の著書『いまはそれアウトです! 社会人のための身近なコンプライアンス入門』(アスコム)から仕事、社会生活、人間関係、家族、お金をテーマにトラブル回避のためのヒントをご紹介します。
自転車で歩道を走る
【ケース1】自転車で歩道を走っていたら、「車道を走れ!」と注意されました。自転車専用の通行帯がない道路だったし、車が怖くて車道なんて走れません!
【答え】道路交通法違反で2万円以下の罰金?!
自転車は車道走行が原則。例外的に歩道を走る際も守るべき規則あり!
道路交通法では、自転車は「軽車両」に分類され、自動車やバイクと同じ「車両」の一種として扱います(2条1項11 号イ)。
そして同法17条は、「車両は、(中略)車道を通行しなければならない」と定めているので、自転車は原則歩道ではなく、車道または自転車専用道を通行しなければなりません。
また車道走行の際は車と同じく左側通行、右折時は原付バイクと同じように二段階右折をしなければなりません(同法34条3項)。
これらに違反すると、2万円以下の罰金または科料に処せられます(同法121条1項5号)。
ただし、①自転車の「歩道通行可」の標識がある場合、②運転者が13歳未満または70歳以上の場合、③運転者が身体に障害を抱えている場合、④車道や交通の状況からやむを得ないと判断できる場合には、普通自転車で歩道を走行することもできます(同法63条の4、同法施行令26条)。
④のやむを得ないと判断できる場合とは、㋐路上駐車している車両が多い、㋑自動車の交通量が多い、㋒車道が狭いなどが客観的に認められる場合とされています。
なお、このように歩道走行が認められている場合でも、自転車は基本的には車道寄りを徐行しなければいけませんし、歩行者の通行を妨げるような走行をしてはいけません(同法63条の4第2項)。
車道を走る際の危険行為 私も毎日のように自転車に乗りますが、車道を逆走する自転車も多く見かけます。
これは、他の自転車やバイクと正面衝突する危険があり、危険行為の1つである「妨害運転」として取締りの対象になっていますので、お気を付けください。
ホテルの備品を持ち帰る
【ケース2】ホテルのタオルがあまりに気持ちいいので、つい持ち帰ってしまいました。直後に、ホテルから問い合わせが......。しらを切り通したけれど、内心ビクビクです。
【答え】窃盗罪で10年以下の懲役や50万円以下の罰金もありうる!
シャンプーや歯ブラシは持ち帰ってよくても、タオルはアウト
バスタオルにハンドタオル、部屋に備え付けの雑誌。
これらは、宿泊客がホテルや旅館から持ち帰ってしまう備品で上位にランクされているものです。
シャンプーや歯ブラシは持ち帰ってもいいのだから、タオルもいいでしょと思っているあなた、ダメですよ。
タオルやバスローブ、枕、ヘアドライヤーなどを持ち帰ると、窃盗罪(刑法235条)に問われかねません。
雑誌も同じです。
法定刑は10年以下の懲役または50 万円以下の罰金です。
昭和31年とかなり昔ですが、最高裁で、旅館の丹前、浴衣、帯、下駄を着用したまま旅館から立ち去る所為は、窃盗罪にあたると判断された判例もあるんです(最高裁昭和31年1月19日)。
窃盗罪になるか否かの境界線
洗面所においてある小分けのアメニティや、個別包装されたスリッパ、インスタントパックのコーヒーなどを持ち帰ることが問題とならないのは、ホテル側のサービスとして提供されている消耗品だからです。
繰り返し使うようなタオル類、電化製品などは基本的にホテルや旅館の所有物ですから、持ち帰ってはいけません。
ただ、ホテル予約サイトのHotels.comの2013年の調査によれば、世界28カ国の宿泊者約8600人のうち約35%が、こういった備品(シャンプー、歯ブラシなどのルームアメニティ以外)を持ち帰ったことがあるそうです。
消耗品で小分けされているものは持ち帰っても大丈夫と覚えておけば、迷うことはなくなるのではないでしょうか。
売店で売っているかどうかも判断ポイントになると思います。
それでもわからないときは、自己判断をせずに、直接フロントに聞いてみましょう。
1人が並んだ行列に友人数人が合流
【ケース3】アトラクションの長蛇の列に自分1人が並び、後から友人が合流。後ろの人に「割り込み禁止!」と言われて、「俺が並んでただろ!」と強く言ってしまいました。
【答え】軽犯罪法により拘留または科料が科される可能性あり!
遊園地内のアトラクションは軽犯罪法では「公共の乗物」
遊園地の人気のアトラクションに効率よく乗るため、綿密なタイムテーブルは欠かせません。
そこで、1人が先に並んで、あとのメンバーは昼ご飯を食べてから合流、などと考えてしまいがちです。
しかし、こういった割り込み行為は、軽犯罪法1条13号後段に該当し、拘留または科料が科される可能性があります。
同条では、①威勢を示して、②汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物を待っている公衆の列に、③割り込みなどをした者は、軽犯罪法に違反するとされています。
さて、遊園地内のアトラクションは、②の「公共の乗物」といえるでしょうか。
軽犯罪法において、公共の乗物とは、不特定かつ多数の人が同時に自由に利用できる乗物のことで、特に交通機関には限定されません。
よって、不特定多数人が利用する遊園地のアトラクションも、「公共の乗物」といえるでしょう。
①「威勢を示す」とは、例えば、「すごむ」とか「脅す」といった、何らかの害を被るような印象を相手に与える態度を示すことをいいます。
後ろに並んでいる人に「俺が並んでただろ!」などと語気強く言って、相手が怖くなって合流を許したとすれば、「威勢を示す」とされる可能性があります。
1人並んでいればよい?
最後に、③「割り込み」です。
1人が並んで、前後の人に「後から何人かきます」と了承を得たとしても、それは一部にすぎず、列のずっと後ろなどには不同意の人がいると考えられるので、やはり「割り込み」になります。
行列に並ぶのはストレスですが、周りもみんな同じです。
割り込みをされていい気分になる人はいないですから、やめましょうね。
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