スマホを持っていれば、どこでも情報配信や仕事ができる時代。でも、その使い方はもしかして法律違反かも?

2020年は時代が大きく変化し、「コンプライアンス」の見直しがされるようになりました。たとえば、SNSを使った気軽な副業が可能になりましたが、そのやり方は本当に法律に触れていませんか?そこで、弁護士・菊間千乃先生の著書『いまはそれアウトです! 社会人のための身近なコンプライアンス入門』(アスコム)から仕事、社会生活、人間関係、家族、お金をテーマにトラブル回避のためのヒントをご紹介します。

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【ケース1】市販の本をスキャンして配布する

個人的に開いているお料理教室も、最近はオンラインがメイン。教材は市販の料理本をこちらでスキャンして配布。それが手軽にできるのもオンラインのメリットですね。

【答え】著作権法の複製権侵害にあたる!

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学校教育法に基づく教育機関と個人開催の「教室」で異なる扱い

最近は、お料理教室などをオンラインで開く方も増えています。

市販の料理本のコピーを配ったり、スキャンしてあらかじめ生徒さんに送信したりしておけば、手軽かもしれません。

でもその行為、いずれも著作権法違反だということに気付いていますか?

書籍の無断コピーは複製権侵害にあたります(著作権法21 条)。

教育目的なら例外的に複製が認められることがありますが、このお料理教室は、残念ながら当てはまりません。

著作権法35条は、「学校その他の教育機関」で「教育を担任する者」と「授業を受ける者」に対して、「授業の過程」で著作物を無許諾・無償で複製すること、無許諾・無償または補償金を支払って、公衆送信すること(授業目的公衆送信)、無許諾・無償で公に伝達することを認めています。

ただし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではありません。

お料理「教室」は対象外

そしてこの「学校その他の教育機関」とは、組織的、継続的に教育活動を営む非営利の教育機関で、学校教育法その他根拠法令(地方自治体が定める条例・規則を含む)に基づいて設置された機関とされていますので、カルチャーセンターや個人的に開催する料理教室などは、対象外。

コロナ禍でオンライン授業の必要性が高まる中、本条文の重要性が指摘されていますが、あくまで「学校その他の教育機関」が対象なのです。

市販の本を料理教室のテキストとすること自体は問題ありません。

スキャン(コピー)して配ることが問題ですので、市販書を利用したいのであれば、各自がその料理本を購入することを条件に、料理教室への参加を募るなどとしたほうがよいですね。

【ケース2】コンセントを勝手に使ってスマホを充電する

電車で移動中、大切な取引先から電話がきたのに、運悪く充電切れ。駅のホームにあったコンセントを勝手に借りました。緊急だったし、大目に見てもらえますよね?

【答え】窃盗罪に該当し、書類送検や逮捕の事例も多数あり!

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駅の電気は鉄道会社の「財物」

勝手な充電は「電気窃盗」になる 急を要しているのだから、ちょっとくらいいいじゃないか、そう思って充電をしたのでしょう。

気持ちはわからなくはないですが、これもれっきとした犯罪です。

刑法245条は「電気は財物とみなす」と規定しています。

そして、同法235条で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪として、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とありますので、他人の電気を勝手に盗む(充電する)今回の行為は、窃盗罪に該当します。

実際、コンビニエンスストアで店に断りなく携帯電話を充電していた中学生が窃盗容疑で書類送検された、駅構内で携帯電話の充電をしていた女子大学生が微罪処分を受けた、コインランドリーでパソコンの充電をしていた男性が逮捕されたなど、電気窃盗に関する事例はたくさんあります。

窃盗罪にならない例

一方、例えばカフェの客席にあるコンセントは、客が充電するため、あるいは充電することを見越してその場所に設置していると考えられますので、そこから充電をしても窃盗罪にはなりません。

業務に使うために設置してあるようなコンセントで充電をした場合に、電気窃盗とされるおそれがあるということです。

現在はコンビニでもモバイルバッテリーが購入できますから、緊急だったという言い訳も通用しません。

どうしても、というときは、施設管理者の方に断りを入れてから、電源を使用させて頂くようにしましょう。 

【ケース3】マスクを転売した

新型コロナの第1波では、買い置きしていたマスクの転売がいい小遣い稼ぎになりました。次にマスク不足になったらもっと大規模にウェブで販売しようと、備蓄を始めました。

【答え】国民生活安定緊急措置法違反で、1年以下の懲役または100万円以下の罰金?

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取得価格よりたった1円上乗せするだけでも転売はアウトだった

新型コロナウイルスの第1波では、日本中からマスクが消えて大混乱となりました。

通常よりだいぶ割高だと知りながら、ネットでマスクを購入した方もいらっしゃったと思います。

そこで政府は、「アベノマスク」を各家庭に配布すると同時に、2020年3月、マスク転売を禁じる政令を施行しました。

国民生活安定緊急措置法26条1項は、生活関連物資などの供給が著しく不足する場合などに、政令によって、その物資の譲渡などを禁止することができるとしています。

今回、その生活関連物資に「衛生マスク」(いわゆる一般的に市販されているマスク)が指定され、その転売が禁止されました(同法施行令2条)。

ここでいう「転売」とは、薬局やスーパーなどで不特定多数に向けて販売されたマスクを購入し、店舗やSNSを通じて、自身の購入価格を超える価格で不特定多数の人に販売する行為を指します。

適正な価格とは?

たった1回の転売でも、取得価格よりたった1円上乗せした販売であっても、同法施行令違反として1年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくは両方が科せられます(同法7条)。

実際、2020年5 月には、マスク1千枚を1枚あたり約80円で購入し、それを1枚あたり154円などで販売していた男性が、全国で初めて立件されたとの報道がありました。

今回の転売規制は、2020年8月に解除されましたので、マスクの転売は「アウト」ではなくなりました。

しかし、状況次第では再び規制されるかもしれませんし、買占めや転売が世の中の不安をあおることにつながります。

たとえ法律で禁じられていなくても、周りへの思いやりの気持ちを忘れないようにしたいですね。

「許せない」と排除しますか。自分事として受け入れますか

自粛警察の「正義」と「後ろめたさ」 新型コロナウイルスは、社会の分断を生んだといわれています。

当初は、中国からもたらされたウイルスということで、中国人に対する差別や排斥運動が見られましたが、日本中に広まったいまでは、その差別や排斥が日本人の間で起こっています。

親子連れが公園で遊んでいたら見ず知らずの男性に威嚇された、県外ナンバーの車が石で傷つけられた、営業していた焼き鳥店に無言電話など、いわゆる「自粛警察」に関するニュースが数多く報告されています。

日本では諸外国と異なり、緊急事態宣言や特措法に基づく休業要請などに強制力はありませんから、最終的には国民1人ひとりの自主性に任されています。

ところが、新型コロナウイルスに関する考え方は人により様々なため、自分と同じ考えで行動しない人に対する、「許せない」という思いから、上述のような行動に出る方がいるのでしょう。

自粛警察といわれる行為をしている人は、正義感に基づき、自分が取り締まらなくては、という思いで行動しているのかもしれません。

しかしその一方、面と向かって物申すのではなく、匿名で行っているところからすると、自分でもやり過ぎという意識があるのかもしれません。

大きく拡散するネットへの書き込み ネット上の自粛警察についてはどうでしょうか。

「○○店は、自粛要請に応じていない」とSNSに書くことは、それが事実なら法的に問題にはなりません。

ただし、自分が見たこともない店に関するこういった情報をリツイートして拡散するのは危険です。

すでにその店は休業しているかもしれないのに、あなたのリツイートによって、誤った情報が拡散していく可能性があるからです。

また「あの店で感染者が出たらしい」などの書き込みも危険です。

ウソの情報であった場合、あなたがそれをSNSに上げたことで、店にクレームが殺到し、消毒作業を行わざるを得なくなった、客足が激減し閉店に追い込まれた、などという事態になれば、偽計営業妨害罪に問われる可能性があります。

さらに「○○さんはコロナで入院していた」などの書き込みは、たとえ真実であったとしても、名誉毀損に該当する可能性が高い行為です。

直接的な誹謗中傷ではなくても、病気に感染しているということは一般的には他人に知られたくない個人情報で、みだりに公開されるべきものではないからです。

いつ自分がかかってもおかしくない 「コロナに感染したのは自業自得だと思う、本人の責任だと思う」と感じる割合が、諸外国に比べ日本では高いという調査結果があるそうです。

一連のコロナ報道を見ていても、濃厚接触者を早期に発見し、検査を受けてもらうという目的以外に、感染者のそれまでの行動経路をあぶりだし、バッシングをするような傾向も見られます。

ただ、このようなことをしていると、感染者が本当のことを話さなくなるのではないでしょうか。

それが感染経路不明率の増加につながり、巡り巡って私たちの感染リスクの高まりにもつながりかねません。

世界中でこれだけ蔓延しているウイルスです。

いつ自分がかかってもおかしくありません。

排除するのではなく、自分事として受け入れる、心の在り方が問われています。

【まとめ読み】『いまはそれアウトです! 社会人のための身近なコンプライアンス入門』記事リストはこちら!
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普段の生活で「ついやってちまいがち」な違法行為が6つのテーマでシチュエーションごとにわかりやすく解説されています

 

菊間千乃(きくま・ゆきの)
弁護士法人松尾綜合法律事務所/早稲田大学法学部卒業/1995年にフジテレビに入社。アナウンサーとしてバラエティや情報・スポーツなど数多くの番組を担当。2007年に退社するまでの間に大宮法科大学院大学で法律を学び直す。2010年に新司法試験に合格し、2011年に弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。現在は紛争解決、一般企業法務、コーポレートガバナンスなどの分野を中心に幅広く活動中。

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『いまはそれアウトです! 社会人のための身近なコンプライアンス入門』

(菊間千乃/アスコム)

社会の価値観が多様化して「〇〇ハラスメント」という言葉が飛び交うようになり、日常生活の中でも法律やルールのリテラシーが求められるようになりました。今や「自分の身は自分で守る」時代です。職場での会話、SNSの使い方、交通ルールや家族間コミュニケーションに至るまで幅広いシチュエーションで起こりがちな「コンプライアンス違反」をテーマごとに、全6章にわたってわかりやすく構成した参考書です。

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※この記事は『いまはそれアウトです! 社会人のための身近なコンプライアンス入門』(菊間千乃/アスコム)からの抜粋です。
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