質問下手な人もぜひ使ってみて! 会話の魔法の言葉「HOW」の活用法とは?

初めての人と話すのが苦手! 1対1で話すのが怖い! どうでもいい会話の対処がわからない! 最近は、スマホの普及によりそう感じている人が増えていると思います。元コミュ障のアナウンサー・吉田尚記さんは「会話のテクニックを覚えたらちょっと楽しいと思えるようになります」と言います。そこで、吉田さんの著書『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(吉田尚記/アスコム)より、日常生活の中でいろいろ使える会話術をお届けします。

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悩み 初対面の人との会話をどう進めればいいかわからない

答え 会話の最強アイテム「HOW」を駆使しよう!


会話のモニタリングで上達のヒントがつかめる

吉田アナ 私には長年会話に悩んできたことで生まれた得意技がありまして、人の会話を分析できるというか、その会話がどういう構造になっていて、なぜそうなったかがその場で把握できるんです。

白井先生の学術的な研究とは違って、我流ですけどね。そこで、実際の会話を素材として、相づちを含む会話改善のヒントを探っていきたいと思うんです。

特に、私たちがもっとも苦手とする、まったく初対面の人との会話です。

白井先生 ある研究によると、初対面の相手と話しやすくしたければ、相手との距離を45cm以上離して、真正面に向き合うことは避けた方がいいというデータがあるんです。座る位置は斜め前がベターです。

吉田アナ そうなんですか! 実は私も初めての人にインタビューする場合って、真正面には座らないんです。

経験的に。4人掛けの机なら、対角線上になるように座ります。

それを見越してなのかはわかりませんが、ラジオのスタジオに置いてある机って、長方形ではなく台形になっているんです。正面に座っても、相手に対してちょっと角度がつくんです。あれって理に適っていたのか!

白井先生 放送業界の経験則と、こちらの研究が合致しているのかもしれません。

吉田アナ では、サロンでの初対面の2人による会話を、白井先生と私とで分析してみたいと思います。共通する指摘があったら、すごく意味のある要素かもしれません。45cm以上離れて、斜めに座りましょう。ではスタート!

Aさん「こんにちは。初めまして」

Bさん「こちらこそ初めまして。よろしくお願いします。今日はどうやってここまで来たんですか?」

Aさん「えっと、普通に電車です。都内なので」

Bさん「へえ! 都内にお住まいなんて、カッコいい!」

Aさん「でも東の方だからカッコよくは......」

Bさん「そうなんですか」

Aさん「Bさんは、今日はどうやってここまでいらっしゃったんですか?」

Bさん「バスです。高速バス」

Aさん「ええっ!? どちらから来たんですか?」

Bさん「宮城県です」

Aさん「そうなんですね! 何時間かかったんですか?」

Bさん「6時間くらいですかね?」

Aさん「お尻痛くなりそう」

Bさん「めっちゃ痛い。今日は尻芸できないです」

Aさん「......東京に来るときはいつも高速バスなんですか?」

Bさん「そうなんですよ。新幹線のほうがもちろん絶対ラクなんですけど、最近、結構東京に来たくなる機会が多いんで。お金を節約したいと思うと、結局どんどんお尻が痛くなる。絶対尻芸できないです」

Aさん「そうですか......」

吉田アナ はい、そこまでにしましょう! わかりやすいポイントがたくさんある会話になりました。分析がやりやすい! 早速やってみましょう。

まず、冒頭の「こんにちは」とか「初めまして」ですが、挨拶から始まることって、当たり前のようでいてとても大切です。

敵意がないことを明確にしていますからね。

そして、お二人の「疑問で聞き返す」姿勢が、この会話でとても有効に機能していましたよね。

どんどん質問していって、相手から情報を引き出していくことが、会話を加速させたり、思わぬ方向に転換させたりするんです。

Bさんは、遠いところからお越しいただいていたんですね。

だから「都内」に反応したんですよね。

で、「カッコいい」までの流れはよかったんですが、「東のほうなので......」というおそらく謙遜したAさんの返答には、ちょっと疑問を感じませんでしたか?

せっかく東京の東側に住んでいるという情報を引き出したので、なぜ東だとカッコよくないと思うのか、東京の東側はどのようなイメージなのかとか、そこは一度質問してみてもよかったですね。

ちなみに私は、東京の東側の下町、すごく好きです。街頭インタビューを集めるとき、西側の人より断然気軽に答えてくれるから。

それから、Aさんの答えにあった「でも」という接続詞は、極力使わない方がいいですね。「しかし」「だけど」「だが」も同じで、逆接の接続詞は、相手が否定的な印象を受けてしまうので、できれば使いたくない言葉です。

特に意味なく、ついクセで使ってしまう人も多いと思うんですが、共感を得たいと思っている会話では、誰でも「だけど」とか「でも」とはいわれたくないですよね。

白井先生 無意識で発しただけなのに、文脈によっては相手が不快になる危険性がありますよね。

吉田アナ そうなんです。これは意識さえすれば防ぐことができます。反射的に「でも」っていわない、と決めるだけでかなり会話はうまくなります。

私も基本的に禁止にしていますが、どうしても使わなくてはいけない場合は、相手に与えるネガティブな意味合いもしっかり意識して「でも」っていいます。

無意識に使う相づちの「でも」は、本当によくない。

質問者 でも......(笑)、自分から自虐的なことをいう人がいますよね。相手から「そんなことないよ」っていってほしい人というか......。その人を励ますつもりで、否定で使う「でも」もNGですか?

吉田アナ 「でも、そんなことないよ」ではなく、ただ「そんなことないよ」といえばよくないですか?

逆接を使わなくても、自虐的な人を励ますことはできます。そして、宮城から高速バスで来たという驚きの情報に「ええっ!?」って反応したAさんはナイスですね!

思いもよらぬ答えが返ってきたら、誰でも驚く。

その気持ちを素直に表して相手に「報酬」を送れました。先ほど述べた「あっ!」とか、もう少し疑問に寄せた「えっ!」って最高の相づちです。

私はしゃべり手をやっているわけですが、結局この仕事は「えっ!?」っていいたくなるような話を相手から引き出すためにしているようなものですね。インタビューなんかを「えっ!?」だけで終えられたら、むしろ大勝利です。

しかも、「えっ!?」という相づちは、もっと話してほしい、しゃべってくれというメッセージを伝えながら、自分が相手の話を面白がって聞いていることも伝わるから、だいたい相手のテンションは上がります。

ある意味、相手が「あっ!」とか「えっ!?」っていうタイミングを探して、あれやこれやと会話を進めている感じなんですよね。とにかく「えっ!?」が有効に使えたのはすごくいい。

そして、この流れを引き出すきっかけになったのは、Aさんが「『どうやって』ここまで来たか」と聞いたことなんです。疑問で聞いていくという原則は理解したとして、疑問にはいわゆる「5W1H」があるじゃないですか。

その中でも、「どうやって=HOW」がもっとも会話が伸びやすいんです。

これは使いやすい武器ですよ。

【武器】魔法の言葉「HOW」を活用しよう!

「どうやって?」と聞かれると、相手は必ず自分がどうしたかを具体的に描写しますから、新しい情報を大量に引き出せる可能性が高まるんです。反対に、「WHY=なぜ」だとすぐに話が終わってしまうことも多いですね。

白井先生 「なぜ山に登るのか?」「そこに山があるから」って答えられてしまうパターンですね。

吉田アナ もちろんジョージ・マロリー(イギリスの登山家)がそう答えるのはカッコいいけど、「この前、山に登りました」という人に理由を聞いても、好きだからとか、休みだったからとか、そんな理由しかないですよね。

それよりは「どうやって」を使って話を広げた方が断然いい。山登りに使った道具とか、日程の組み方とか交通手段とかについて聞くと、どんどん話が広がりますよね。

高速バスから「宮城県」という情報を得たので、たとえ関心がなくても、ここはもう少し質問を続けてもよかったかもしれない。

天気の話でいえば、東京と宮城県では天気や季節の進み方が違うじゃないですか。そのあたりでも会話のラリーが続けられそうですね。

最後に、Bさんは「お尻が痛い→尻芸できない」を2回繰り返しました。

Aさんは反応しなかったけど、ここもポイントになります。

Bさんがツッコミどころを用意してくれていたのに、スルーしちゃいましたね。

普通の会話からだんだん熱がこもってきて、少し自分を出せたところでそれをスルーされると心が折れちゃいます。

初めての相手に対していきなり笑ったり、ツッコんだりしていいのかと思うかもしれないけれど、ツッコミって「愛のある対応」だと思うんです。

少なくとも2回繰り返したということは、Bさんは絶対にツッコんでほしくて渾身のパスを出していたはずなんです。

相手が自分を面白がらせようとしてきたら、たとえ自分が別のことを考えていても、早く次の話に展開したくても、100%受け取った方がいい。

質問者 乗っかると面倒なお調子者もいるんじゃないですか?

吉田アナ そう、確かにちょっと面倒な人はいる。そんな人でも、人生の貴重な時間を共有しているわけじゃないですか。

お互いの時間を大切にするために、勇気を出してツッコんでほしいですね。

Bさんが会話にスキを作ったのはとてもいいことだし、それは絶対不利にはならない。

こういう相手の発言や変化を聞き逃さないようにしたいし、もしスルーしてしまったのを後から気づいたら、「あれ?さっき○○っていいましたよね!」って、戻ってもいいと思うんです。


悩み 質問が下手で話がすぐ終わってしまう

武器 魔法の言葉「HOW」を活用しよう!


質問を投げかけるのは会話を継続させるための基本スキルですが、「5W1H」のうち一番使えるのが「HOW=どうやって」です。

「なぜ・どうして」と聞くところを「どうやって」に変えると、話が広がっていきます。

それは、相手が「単語」で返答するのではなく、描写として「文章」で答えなくてはならないからです。

より具体的で面白い情報を話してくれる可能性が高く、よいカードがドローできることになります。

× 自分「○○さんは登山が趣味なんですね。なんで山がお好きなんですか?」

相手「ええまあ、何となく昔から......」

○ 自分「○○さんは登山が趣味なんですね。山って、どうやって登るんですか?」

相手「山にもよりますね。この間行った○○山は、まず登山口まで車で行くんですけど週末は駐車スペース確保が大変で。それで金曜の夜から......」

《実践例1》

質問者 HOWで聞くと質問も具体的になるし、道具や経緯など細かいアイテム名が出てきて話が広がりました。聞かれている相手も、好きなことだとうれしそうに説明してくれます。

吉田アナ 相手が楽しそうにしてくれるのは重要なことです。会話は相手の話を聞くことが目的ですから、楽しそうに話してくれたり、いろいろ細かく説明してくれたりしたら大成功ですね。

結果として、いいカードもドローし放題。

ぜんぜん知らないジャンルの話でも、自分の知っていることと思わぬ共通点が見つかったりもします。登山に興味がなくても車のことならわかることがあるかもしれない。

登山用具には詳しくなくても、登山関係の店がいっぱいある御茶ノ水や神保町のことなら、「あそこにあるカレーのおいしいお店、行ったことありますか?」なんて話になるかもしれません。

あなたの得意分野にも、そういうプラスアルファ、ありますよね?

《実践例2》

質問者 新入社員に「どうやって会社まで通っているの?」と聞いてみたら、交通手段から経由地、途中にある便利な店、買い物の中身など、すごく話が広がって親しくなれました。

吉田アナ いいですね! 大成功! 初めての相手とのなんということのない会話だからこそ、HOWが有効的に活用できたんですね。

新入社員も緊張をしていたでしょうけど、自分が経験していることなので比較的楽に答えられたのではないでしょうか。

これであなたは、新入社員にとって「話しやすい先輩」という印象になったかもしれませんね。

「サロン」では、スーツを着ていた参加者に「今日はどのような仕事をしてきたのか?」と描写を促す実験をしたところ、「普段はオフィスカジュアルで勤務しているが、今日はたまたま取引先と打ち合わせがあった」という返答がありました。そこから話がどんどん広がりました。

どんな仕事?

広報の仕事

広報の仕事ってどんなことをするの?

広報と広告ってどんな違いがあるの?

最近自分も金曜はオフィスカジュアルになったんだけれど、服装困らない?

そのネクタイってどこで買ったの?......

などなど、会話が尽きることはありませんでした。

HOWが引き出す物事の描写は具体を呼び、具体はそのまま会話のカードになるわけです。

本当は「WHY」で答えを聞きたい場合でも、HOWを経由した方が、深くて本質的な返答にたどり着けたりもします。

【登場人物】

吉田アナ=吉田尚記 

白井先生=白井宏美先生

(慶應義塾大学SFC研究所上席所員)

※コミュ障は「コミュニケーション障害」の略称。本来、言語障害や語音障害など、医学的な診断基準に基づく疾患として分類されるもの。現在は一般的に「他人とコミュニケーションをとることが苦手であることを表す俗称」として使われることが多い

【まとめ読み】『会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』記事リスト

H1_話し方・聞き方の教科書.jpgキャリア20年のアナウンサーが自身の学んできた会話術を全4章にわたって紹介。心理学の研究者などの解説付き。

 

吉田尚記(よしだ・ひさのり)
ニッポン放送のアナウンサー。ラジオ番組のパーソナリティのほか、テレビ番組やイベントでの司会進行など幅広く活躍。またマンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、「マンガ大賞」発起人となるなどアナウンサーの枠にとらわれずに活動中。2012年に「第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞」を受賞。著書も多数。

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元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書

(吉田尚記/アスコム)

自身も「コミュ障だった」と語る現役アナウンサーが「会話が苦手だ」と思う人のために書いた一冊。実際に「どんなことで困っているか?」をアンケートで集計し、その中から日常生活でコミュニケーションにしんどさを感じている人のために「会話の仕方」を具体的に説明してくれます。心理学の研究者などにもわかりやすく解説してもらい、一般人向けに会話術をやさしく教えてくれる良書です。

■『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』の紹介動画もチェック!

※この記事は『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(吉田尚記/アスコム)からの抜粋です。
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