今、多くの人が「老後にお金に困らない生活を送りたいけど、ちょっと不安...」と考えているのではないでしょうか? 元銀行支店長で、3万人以上の相談に乗ってきたお金の専門家・菅井敏之さんは、お金を増やすポイントを「毎月の収支バランス」「親子財産の連結」「不動産を含めた資産活用」だと語ります。そこで、菅井さんの著書『一生お金に困らない!新・お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)から、保険の見直し方やセカンドライフの考え方、夫婦で協力する貯金術など「お金が貯まる超基本」をご紹介します。
【質問】口座を開くのは 「メガバンク」か 「信用金庫」か、お金が貯まるのは、 どっち?
将来、自分はどんな人生を歩んでいきたいか――。
そんなことがわかっている人は、ほとんどいないかもしれません。
でも、人生の選択肢は、できるだけ多く残しておきたい。
「この会社で一生働いていくほかない......」なんて選択肢のない人生は、つまらないですよね。
将来、独立したいと考えるかもしれません。
将来、マンションを買いたいと思うかもしれません。
将来、子どもを3人ほしいと思うかもしれません。
将来、高級車をほしいと思うかもしれません。
そんなとき、望んだ選択をするには、お金が必要になります。
そこで大切になるのが、どんな銀行に口座をつくるのか、ということです。
独立するなら、銀行から事業資金を調達しなければなりません。
ただ、残念ながら、よほどのことがない限り、「メガバンク」と呼ばれる巨大銀行日本では三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)は相手にしてくれません。
三井住友銀行を退職した私は、事業を始めるとき、古巣の銀行で法人口座を開こうとしたのですが、大変な思いをしました。
営業する事務所の賃貸契約がなかったので、自宅の不動産謄本を持ってこいといわれたのです。
以前勤めていた私が口座を開くだけでも大変なのですから、「マイクロ法人」と呼ばれる零細企業がメガバンクから事業資金を融資してもらうことは、もっと難しい。
最初は、ほとんど相手にされないと思っておいたほうがいいでしょう。
住宅ローンも同じです。
大企業の社員や公務員など、将来が安定している(と銀行が判断する)人には、喜んでお金を貸してくれますが、中小企業の会社員や、ましてフリーランスの人には、審査が厳しくなります。
信用金庫なら「王様」として扱ってくれる
そこで、ぜひ活用してほしい銀行があります。それは「信用金庫」です。
マイクロ法人に融資してくれるのは、なんといっても地元の信用金庫なのです。
信用金庫は、地域の役に立つというミッションを持っているため、地元の商店街などの小さな店舗や、個人事業主が主要なお客様になります。
新しく事業を始めようと思ったとき、あなたの力になってくれるのは、地元の信用金庫です。
住宅ローンの審査も同じです。
「コツコツ貯めて信用を得る」という方法は、じつはメガバンクではあまり効果がありません。
いまお話ししたように、メガバンクは大企業の会社員や公務員には優しく、中小企業の会社員やフリーランスにはたいへん厳しいのです。
でも、信用金庫なら「コツコツ戦法」が効果を発揮します。
信用金庫も、もちろんお金を貸したいのです。その金利で商売をしているわけですから。
メガバンクが相手にしないようなお客様を相手にすることで、彼らは食べています。
ですから、コツコツとまじめに積み立ててきた「信用できる人」にお金を貸そうとします。
人生の選択肢をなるべく残しておくためには、信用金庫をあなたのメインバンクにして、給料をここに振り込み、同時に積み立てもおこなうのです。
これが将来、かならず役に立つときがきます。
「給料振込口座」(通称・きゅうふり口座)を信用金庫につくるメリットは、ほかにもあります。
信用金庫にとって、口座に500万円の預金があれば、得意客です。
1000万円の預金になれば、担当者がつくような扱いになります。
ところが、メガバンクの口座に1000万円の預金があったとしても、担当者がつくこともなければ、特別扱いされることもありません。
どちらのほうがお金を借りやすいか。どちらのほうがVIP対応してもらえるか。
そんな視点で見れば、圧倒的に信用金庫のほうが優位です。
中小企業の人はもちろん、大企業に勤めている人で将来の転職や独立を考えている人も、信用金庫に口座を開いて、今から実績(毎月の積み立て)をつくっておくといいでしょう。
メガバンクに口座を開くな、とはいいません。
信用金庫のきゅうふり口座で月々の積み立て、公共料金やクレジットカードの引き落としなどをおこなうのが基本です。
支店が多く旅先でも利用しやすいメガバンクの口座は、緊急にお金を引き出すときのため5万~10万円といった残高を入れておき、補完的に使えばいいでしょう。
地域に根ざす信用金庫ならではのメリットがある!
地域に根ざし、地域の業者と密に付き合っている信用金庫のメリットを、具体的にお教えしましょう。
たとえば、家のリフォームを思い立ったとき。
大手のリフォーム会社に頼もうと、多くの人が考えがちですが、実際のリフォーム工事は地域の工務店が下請けしています。
元請け会社が代金の2~3割くらいを抜いて、地元の工務店に任せているのが現状です。
ならば、最初から信用金庫に相談して、地元の工務店を紹介してもらったほうがいい。
その業者は、信用金庫の顔に泥を塗るようなことはしないでしょう。
インターネットを使って自分で探すこともできますが、安くて工期も早い業者だと思って頼んだら、ぼったくられてしまったなんて失敗をよく耳にします。
信用金庫の助けを借りれば、信頼できる工務店を選ぶことができて安心です。
あるいは、定年後にビジネスを始めるとき。
相談すれば、仕入れ先や潜在的な客先を紹介してくれるかもしれません。
これは、信用金庫をはじめとする金融機関が、日頃から積極的におこなっている「ビジネスマッチング」というサービスです。
信用金庫は、地元の経済に貢献するという使命があります。
顧客には、お金以外の相談も気軽にできるというメリットがあります。
同じことをメガバンクが個人事業主やマイクロ法人相手にやろうとしたら、人件費でパンクしてしまいます。
安定していて沈みにくい巨大な船よりも、見た目は心細いけど小回りのきく小さな船のほうが役に立つ、という場合があるのです。
信用金庫は、地元の顧客が抱える課題を解決することで顧客を引きつけ、ビジネスにつなげようとしています。
もちろんどこの信金もそうではなく、玉石混交です。
「地元の事業者をつないでもらって助かった」と称賛の声が聞かれる信用金庫がある 一方で、「フットワークが重い」「相談しても対応のレベルが低い」などと陰口をたたかれるところもあります。
まずは、地元にどんな信用金庫があるか、調べてみてはいかがでしょうか。
もちろん近所に信用金庫がない場合は、同じような性格がある地方銀行でもかまいません。
【答え】「きゅうふり口座」は信用金庫につくり、そこに積み立てて信用を築く。メガバンクは、緊急でお金を引き出すときのために活用する。
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