社会現象にもなったマンガ『鬼滅の刃』をご存じですか? 主人公が妹を守って戦う姿に感動し、「私も強くなりたいな...」と憧れを感じたした人も多いのではないでしょうか。そこで大ベストセラー漫画の主人公の生き方を参考に、キャリアカウンセラーの井島由佳さんが「強く生きるための教え」を語ります。その井島さんの著書「『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方」(アスコム)から問題を解決する、状況を好転をするためのヒントをご紹介します。
感謝は言葉で伝える
本音をストレートに伝えるべきというのは、感謝の心に関しても同じです。
どうもありがとう。
感謝しています。
本当に助かりました。
心の中でこういうふうに思ったとき、それをちゃんと言葉にして相手に伝えるのは非常に大事なことであり、礼儀です。
言ったほうも言われたほうも、朗らかな気持ちになります。
逆にきちんと伝えないと、不義理や恩知らずといったレッテルを貼られてしまうこともあります。
「恥ずかしくて言えない」という思いにとらわれすぎていると、あなたの人間的な評価を下げることにもつながりかねません。
気をつけたいのは、相手が家族のときです。
「今さら恥ずかしい」とか「言わなくても思いは伝わっているはず」と考える方が多いかもしれませんが、相手が誰であろうと、感謝の気持ちを言葉で伝えることの重要さは同じです。
たとえば、食事をつくってもらったとき、部屋の掃除をしてもらったとき、お茶をいれてもらったとき、洗濯をしてもらったとき、してくれた人にちゃんと「ありがとう」と言っていますか?
言わないこと、言われないことに慣れきっていませんか?
こういうミスコミュニケーションが積み重なると、家族がバラバラになってしまうケースは、実はとても多いのです。
「ありがとう」とお互いに言い合えている家族と、そうでない家族。
どちらがすてきだと思いますか?
どちらが幸せに見えますか?
その答えは、言わなくてもわかりますよね。
『鬼滅の刃』では、第1話の冒頭から、感謝の言葉を家族間で伝えているシーンが描かれています。
雪が降り積もって危険な状況ながらも、山を下りて町に炭を売りに行くという炭治郎に、柔和な表情を浮かべて「ありがとう」と言うお母さん。
そこに、父親が早くに亡くなったのだから長男が家業を手伝うのは当たり前、というスタンスの厳しい母親の姿はありません。
優しく炭治郎を包み込み、素直にお礼を言っています。
下弦の壱の魘夢の血気術で炭治郎が眠らされて夢を見ていたときは、末っ子の弟・六太(ろくた)に「置いていかないで」と泣きすがられたのを受け、涙を浮かべてその場を駆け去りながらこう思います。
「ごめんなあ 六太 もう一緒にはいられないんだよ だけどいつだって兄ちゃんはお前のことを想っているから みんなのことを想っているから」(7巻第57話「刃を持て」より)
家族の存在そのものに対して、「ありがとう」と思っている炭治郎。
離れ離れになってもその思いは変わらないということを、ここからくみ取ることができます。
家族に対してでもここまでできるのですから、他人に対しては言うまでもなく、炭治郎はあらゆる人に対して感謝の言葉を口にします。
とくに、悲しい生い立ちからすっかり性格がすさんでしまった伊之助に対して「ありがとう」を繰り返し、徐々に凍てついた心をとかしていったのは印象的です。
古き良き日本の心とでもいいましょうか。
そんな炭治郎を見ていてほっこりするのは、私だけではないでしょう。
ビジネスの世界で、お互いにメリットや利益が生じる取引を「ウィンウィン」と言いますが、「ありがとう」の声かけは、まさに人間関係におけるウィンウィン。
どちらも損をしないし、減るものでもありません。
自分の思いを伝えるとき、炭治郎ほどストレートにやらなくていいと述べましたが、感謝の心を伝えるときはとことんまねしてください。
素直な気持ちで「ありがとう」と言われて、マイナスの感情を抱く人はいないからです。
ありがたいと思ったら、言葉にして相手に伝えましょう。
家族とか仲間とか他人とか、不要な垣根をつくることなく、「誰にも等しく」の姿勢で、心から伝えるようにしましょう。
◎〔隊士〕竈門炭治郎(かまどたんじろう)
『鬼滅の刃』の主人公。嗅覚にすぐれている。鬼に襲われた家族のなかで唯一生き残ったが、鬼化してしまった妹を人間に戻すために鬼殺隊の剣士となる。家族思いで心優しい炭売りの少年は、厳しい鍛錬と鬼との戦いを重ねることで、心身ともに強い剣士へと成長する。
【まとめ読み】「『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方」の記事リスト
登場人物の相関図や説明をもとに主人公から社会を生き抜く心構えを全5章で学ぶ