「一人じゃ無理だったけど、仲間が助けてくれた」。鬼滅の刃から学ぶ多様な人間関係で自らを変える考え方

社会現象にもなったマンガ『鬼滅の刃』をご存じですか? 主人公が妹を守って戦う姿に感動し、「私も強くなりたいな...」と憧れを感じたした人も多いのではないでしょうか。そこで大ベストセラー漫画の主人公の生き方を参考に、キャリアカウンセラーの井島由佳さんが「強く生きるための教え」を語ります。その井島さんの著書「『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方」(アスコム)から問題を解決する、状況を好転をするためのヒントをご紹介します。

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人と人の絆は積み重ねることで深くなる

これまで、さまざまな経験を積み重ねることによって、強くなるために必要な技術、精神力、判断力、感性などが磨かれることについて話してきました。

しかし、積み重ねることで向上するもの、深みを増すものはこれにとどまりません。

他人との人間関係についても同じことがいえます。

日本には「絆」というすてきな言葉がありますが、それが強くなるイメージです。

人間関係の深さや強さを表す絆には、2つの種類があると個人的には考えています。

ひとつは家族との絆。

もうひとつは家族以外の人との絆です。

いずれも大切な絆で、深ければ深いほど人生は豊かになると思いますが、深め方、育み方には大きな違いがあります。

「言うはずが無いだろう そんなことを 俺の家族が!! 俺の家族を 侮辱するなァアアァアアア!!!」(7巻 第59話「侮辱」より) 

これは炭治郎が、相手を意のままに眠らせて夢を見させることのできる血気術を使う、下弦の壱の魘夢(えんむ)との戦いのときに、家族が炭治郎に叱責と侮蔑の言葉を浴びせる悪夢を見せられ、怒りが頂点を超えて叫んだセリフです。

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炭治郎といえば家族愛。

そんな彼の思いや生き方がこの言葉には凝縮されています。

原作をご覧になられている方はご存じの通り、竈門家は全員がとても仲良し。

絵に描いたような理想的な家族です。

家族間の絆は、生まれたときにすでに存在するものであり、自分1人の意思で簡単に断ち切ることはできません。

最近は、愛し合ったり支え合ったりできない家族が増えてきていることが気になりますが、それでも人生のあらゆる局面でかかわり合いを持つことになります。

そこにいて当たり前、今さら気恥ずかしいという意識がどうしても生じるため、朝起きて目が合ったら「おはよう」、なにかを手伝ってくれたら「ありがとう」という、基本中の基本の言葉が出てこない人もいます。

でも、その殻を破ってみてください。

竈門家とまったく同じようにはいかなくても、家族全体が、そしてみなさんの心が、今よりもずっとあたたかく幸せな気持ちに満ちあふれるでしょう。

これに対し、他人との絆というものは、最初はありません。

同じ時間を何度も共有し、会話を交わし、関係を深めていかない限り生まれないものです。

「姉さんに言われた通り仲間を大切にしていたら 助けてくれたよ 一人じゃ無理だったけど 仲間が来てくれた」(19巻 第163話「心あふれる」より) 

圧倒的な劣勢を跳ね返し、伊之助と力を合わせた死闘の果て、上弦の弐の童磨(どうま)を倒した直後に、炭治郎の同期の女剣士・栗花落(つゆり)カナヲは、人買いから自分を救ってくれた恩人であり、剣の師匠でもあり、姉のように慕っていた胡蝶(こちょう)カナエ・しのぶ姉妹に対してこんな思いをめぐらせます。

とりわけしのぶは、この鬼を倒すために直前で自らが犠牲になっており、命をかけて力を合わせて戦うことの重みを教えてくれたばかりであったことから、カナヲのなかでその存在はさらに大きなものになっていました。

『鬼滅の刃』は、仲間との友情や信頼、すなわち絆というものがなければ、絶対に乗り越えることのできない壁があるということを教えてくれます。

人間は1人では生きていけません。

必ず家族以外の人とかかわりを持つシーンが訪れます。

学校や会社がその際たる例で、合う合わない、好き嫌いに関係なく、誰かと一緒に行動することが求められます。

もちろん、どんな人ともうまくいくとは限らないでしょう。

むしろ、うまくいかないことのほうが多いかもしれません。

だから、いじめが起こったり、陰で互いのグチや悪口を言い合ったりすることが、残念ですが、なくならないのです。

しかし、嫌なことから逃げてばかりで幸せになれるでしょうか? 

自分が思うような人間関係ではないからという理由で、その場から立ち去ったり、会社を辞めたりする人は、次の場所でも同じような問題を抱え、なかなかひとつのところに定着できないものです。

このような状態を青い鳥症候群といいます。

合わない人や嫌いな人と、無理やり仲良くしたほうがいいとまではいいません。

でも、我慢のリミッターや怒りの沸点を、今よりもほんの少し上げることはできるはず。

そうすることによって、関係がよくなったり、それまで見えなかった相手のいいところが見えてきたりするケースがあると思います。

これを心理学では、「欲求不満耐性(よっきゅうふまんたいせい)」を高めるといいます。

家族のほかに自分の味方になってくれる人は、1人でも多いに越したことはありません。

いざというとき、困ったときに、きっと助けてくれます。

積み重ねることで人間関係を深めるときも、失敗はつきものです。

すべての人と気が合うことはないと割り切ったうえで、面倒くさがらず、怖がらず、傷つくことを恐れず、自ら積極的に接点を持つようにはたらきかけてみてください。

その積み重ねが、自分を変える、相手が変わるきっかけになるはずです。


◎〔隊士〕竈門炭治郎(かまどたんじろう)
『鬼滅の刃』の主人公。嗅覚にすぐれている。鬼に襲われた家族のなかで唯一生き残ったが、鬼化してしまった妹を人間に戻すために鬼殺隊の剣士となる。家族思いで心優しい炭売りの少年は、厳しい鍛錬と鬼との戦いを重ねることで、心身ともに強い剣士へと成長する。


【まとめ読み】人生に行き詰まった人は必読!「『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方」記事リストはこちら!

「一人じゃ無理だったけど、仲間が助けてくれた」。鬼滅の刃から学ぶ多様な人間関係で自らを変える考え方 H1_kimetu.jpg

登場人物の相関図や説明をもとに主人公から社会を生き抜く心構えを全5章で学ぶ

 

井島由佳(いじま・ゆか)
大東文化大学社会学部社会学科助教。専門は教育心理学、キャリア心理学。キャリアデザインに関する教員研修、キャリアカウンセラー養成講座を担当し、大学のキャリアセンター長として学生も支援。「鬼滅の刃」「ワンピース」「NARUTO」などマンガを活用した講義・研修・セミナーが人気。

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「『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方」

(井島由佳/アスコム)

「目標達成に努力は欠かせない」「人間は一人じゃ生きていけない」「相手を認め、敬い、大切にする」…。6000万部のベストセラー漫画の主人公を中心にした登場人物の言動や立ち振る舞いから「人生の心構え」を紹介。現代人が忘れかけている当たり前のこと、やって然るべきことなど「人間の強さ」を心理学的な視点で解説し、人生に活用する一冊。

※この記事は『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方(井島由佳/アスコム)からの抜粋です。

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