「自分は守られている」と思う人ほど危うい...心療内科医が教える「自立するための処方箋」

40~50代になって「老後の孤独」が頭をよぎるなら、「心の自立」が足りていないからかもしれません。そこで、「孤独との向き合い方が大切です」という心療内科医の反田克彦さんの著書『孤独を軽やかに生きるノート』(すばる舎)から、「無自覚の寂しさ」への対処法をご紹介します。

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自立への心構え

実社会は甘えが許されません。

自分の意思で決めたことを、自らやっているという建て前だからです。

これを自由と感じるか、苦痛と感じるかは人それぞれでしょう。

今までずっと自分は組織や社会に守られていると思い込んできた人たちが、自己責任の感覚を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。

何かに守られていると思っているうちは自立はできません。

自立できない人は、いずれ自分が守られていないことに気づいて孤独を味わうことになります。

ここで、自立するための基本となる処方箋を用意しました。

【処方箋1】違和感を見て見ぬふりしない

現実の世界には唯一の正解はありません。

同僚も上司も経営者も正解を知っているわけではないのです。

ところが日本の学校教育に染まっていると、言われたことに疑問を持つ人は少数です。

そういう習慣がないからです。

組織では誰かがその間違いに気づいても軌道修正はなされません。

間違いに気づいて異を唱えた人に責任が降りかかるからです。

見て見ぬふりをするほうが個人としては得だと考える人が大勢います。

他者の言うことを鵜呑みにせず、自分の頭で考える習慣をつけることが第一のステップです。

【処方箋2】両親や教師の教えはいったん『  』に入れる

両親や先生から「しっかり勉強して、いい学校に行って、いい会社に入れば安泰だ」と呪文のように言われた人もいるかもしれません。

その公式はとっくに破綻しています。

それよりも、当然だと思われていることをすべて一から疑ってみることです。

たとえば、親が結婚しろと言い、友だちがするからといって、焦って判断を誤らないように(誤ったらそのときはそのときですが)。

結婚すれば一生安泰という図式もとっくに壊れています。

専業主婦は絶滅危惧種ですからね。

大切なのは両親や教師の言いつけを忘れることです。

忘れると罰が当たりそうだと思う人は、いったん『  』に入れて保管しておきましょう。

そして、すべてを一から考えましょう。

【処方箋3】評価される側から評価する側になる

人からどう思われるかを考えても仕方ありません。

重要なのは自分が自分をどのように評価しているかです。

たとえば、サービス残業を行わないと決めたとします。

その結果、会社での評価は低くなるかもしれません。

でも、自分の信念に基づいてサービス残業を拒否したことは、自分自身にとっての満足度は高いはずです。

他者があなたを評価する場合と、あなたが自分を評価する場合では、評価軸が違います。

自分で自分の評価をするようになれば、他者から不当な評価を受けたときに落ち込まずに済みます。

評価される側の立場は弱く評価する側の立場は優位です。

評価されるだけの立場から自分が評価する立場になりましょう。

かつて夫婦においては夫にしたがうことが正しい時代がありましたが、現代は夫婦が平等になりました。

視点を変えることで対等になることができるのです。

【処方箋4】自分のためになることを見極める

会社と社員は利益が反することもあります。

会社が一生面倒を見てくれた時代には最終的には帳尻が合いましたが、これからはいつ会社から追い出されるかわかりません。

会社自体がなくなるかもしれません。

ですから、自分が担当している仕事が自分の成長につながっているかを見極めていくことがとても大切です。

やるべきことはやりつつも、会社の利益になって自分も学びがある仕事を積極的に探していくことです。

自分で問題に気づいて仕事を作り出すことで実力がつきます。

フリーランスの方にも同様のことが言えるかもしれません。

【処方箋5】会社に運命を託さない

現状を維持することのリスクを冷静に見積もりましょう。

大企業からリストラされて、途方に暮れてクリニックに来られる方がいます。

ほとんどの人は何の準備もしていません。

会社以外の世界を知る機会がほとんどないからです。

知っている世界のリスクを低く見積もり、知らない世界のリスクを過大に見積もるのは、よくある認知のバイアスです。

現在、労働人口における正社員の割合が減っています。

意に反して会社を辞めた場合には、市場価値のない人は買い叩かれます。

派遣会社のマージン率はとても高いですからね。

ひとつの企業に持ち金すべてを賭けるのは極めてリスキーです。

会社にいるうちから副業を始めたり、他の人には真似のできない技術を身につけましょう。

いつでも会社から出られる準備をしておくことです。

【処方箋6】切磋琢磨し続ける

組織では数少ない席を巡る競争があります。

認められるには、実力はもちろん、冷静に状況を読む力、周りを出し抜く才覚、優れたコミュニケーション能力が求められます。

職種によっては、独自に社外にネットワークを作っておくことも必要です。

上司に指示されないと動けない人は常に後手に回ることになります。

いざというときには、真っ先にリストラの対象になる可能性もあります。

もちろん組織にいることにも利点はあります。

切磋琢磨できる同僚がいるし、組織にいるから得られるサポートや信頼もあります。

ただし、組織はなくなるかもしれないので、平行して他の選択肢も念頭に入れておいてほしいと思います。

将来の不安をてなづけられる「孤独を軽やかに生きるノート」記事リストはこちら!

「自分は守られている」と思う人ほど危うい...心療内科医が教える「自立するための処方箋」 104-H1-kodokuwokaroyakani.jpgノート式の認知行動療法!5章にわたって書き込み、読み進めていけば、「あなたの孤独」がわかります

 

反田克彦(そりた・かつひこ)
1957年生まれ。あさなぎクリニック・心療内科院長。順天堂大学医学部卒業。山梨大学、HANAZONOホスピタルを経て、あさなぎクリニックを開院。家庭裁判所の嘱託医や山梨県教育委員会産業医などを歴任し、講演活動も多い。精神科専門医、精神保健指定医、医療観察法判定医など多くの学会に所属。著書に『人見知りが治るノート』(すばる舎)がある。

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『孤独を軽やかに生きるノート』

(反田克彦/すばる舎)

家庭や職場に居場所がない、訪れる老いが心配…そんな孤独のもととなる拒絶や脱落、喪失といった不安を、「認知行動療法」で軽くしていきます。自分を理解する助けになるチェックリストや書き込み欄も充実。孤独と向き合い、楽しみ、備えるために、役立つ一冊です。

※この記事は『孤独を軽やかに生きるノート』(反田克彦/すばる舎)からの抜粋です。

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