詳しい仕組みや制度はわからなくても「老後のお金を増やす方法は山ほどある」と、月間700万PVを誇る『マネーの達人』の編集長・北山秀輝さんは言います。その北山さんの著書『「マネーの達人」が教える 老後のお金が増える手続き事典』(アスコム)から、「老後のお金を増やす手続き」をご紹介します。
年金の新制度で、誰が得する!?
早ければ2020年からスタートする新制度の活用法を伝授!
「働きすぎると年金が減額して損する」現制度(2020年3月現在)が大幅に改正される予定です。長く働くシニアが得をする新制度の誕生は近い!
知ったら得をする3つの改正ポイント
実施開始時期は未定ですが、現在厚生労働省から発表されている改正のポイントは以下の3つです。
①「在職定時改定」の導入、②厚生年金加入期間を75歳まで延長できる(現在70歳)、③繰下げ受給の上限が75歳になる(現在70歳)
働きながら年金額が毎年アップ
①「在職定時改定」の導入
これまで65歳から年金をもらいながら働き続けた場合(在職老齢年金制度)、65~69歳までの年金額は同額でした。
65歳から5年間払い続けていた保険料は、70歳で再計算され、70歳から年金額がアップするシステムでした。
しかし新制度では、65歳から保険料を払い続けることで、毎年年金額がアップするようになったのです。
これを「在職定時改定」といいます。
たとえば65歳時点の年金額が月額22万円だった人が、月給20万円で働き続けると、毎年、年金額の月額が1100円増加します。
すると、年金額が1年で1万3200円ずつ上乗せされていくので、70歳になったとき、現行制度より合計13万2000円得することになります。
75歳まで働けばさらに年金額が毎年アップ
②厚生年金加入期間を75歳まで延長できる
改正によって厚生年金の加入可能期間が75歳まで延長されます。
75歳まで年金をもらいながら働き続ければ、年金額は「在職定時改定」によってさらにアップします。
65歳の年金月額が22万円の人が、月収20万円で働き続ければ、75歳になるまで毎年月額が1100円あがり続け、現行制度に比べて85歳までの年金額は総額85万2000円も得することになります(上図)。
次に、概算となりますが、85歳までの年金額の合計を、老後の月収別に計算してみました(65歳時点で年金月額が22万円だった場合)。
■65歳で引退:年金総額5280万円
■75歳まで月収10万円:年金総額5376万円 ← 65歳引退より95万円増
■75歳まで月収20万円:年金総額5464万円 ← 65歳引退より184万円増
■75歳まで月収30万円:年金総額5567万円 ← 65歳引退より287万円増
このように新制度は、元気なうちはできるだけ働きたいと考えている人には、大きなメリットがあるのです。
75歳からの繰下げ受給で82%年金がアップ!?
また今回の改正により、繰下げ受給の上限年齢が、70歳から75歳に変更される予定です。
もし上限の75歳まで繰下げれば、年金額は65歳からの受給に比べて、82%も金額がアップします。
しかし、10年間年金をもらっていない期間がありますので、75歳からの繰下げ受給をして得をするのは、92歳まで長生きした場合となります。
「さすがにそれは...」という人も多いと思います。
そこで、新制度を最大限に活用した年金のもらい方を次ページで紹介します。
新制度からはこの裏ワザを!
「在職定時改定」と「基礎年金だけ繰下げ」のダブルで年金額をアップさせる!
新制度となってからも「基礎年金だけ繰下げ」の裏ワザが使えます。
① 65歳になったら厚生年金は受給しつつ働き続ける
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② 「在職定時改定」により厚生年金額が毎年アップしていく
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③ 「基礎年金の繰下げ」で基礎年金額が受給時にアップする
このようにダブルで年金額を増額させることができるのです。
65歳のときの年金額の合計が月22万円(夫の厚生年金10万円、夫婦の基礎年金6万円)の人が、このもらい方をした場合、70歳で受給できる年金額は約25万1000円になります。
75歳まで基礎年金を繰下げた場合は、約28万円にアップします。
【Check】まもなく、稼ぎながら年金が増える時代に!
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