人生の大転換期である「定年」。その後の暮らしが不安と言う方も少なくないでしょう。そんな人生の後半を楽しむためには、生活空間にあるあらゆるモノを点検し、先の人生を共にしたいモノを選び抜くことが重要だと「断捨離」の考案者・やましたひでこさんは言います。そこで、やましたさんの著書『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(大和書房)から、「不要・不適・不快」を捨てて、「要・適・快」を招き入れられる「人生の断捨離」のヒントを連載形式でお届けします。
「不要・不適・不快」になったら家も手放す
私たち夫婦は沖縄移住を選択しました。
厳密にいえば、私の仕事の拠点は東京の賃貸マンション、生活の基盤は沖縄の所有マンションという二重生活に。
ただ、これを二重生活と呼ぶには違和感があります。
そのときその場、必要に応じてふさわしい道具(モノ)を使用するかのように、家も必要に応じて移動しているだけのこと。
断捨離は、「モノとの関係性」をまず自分に問いかけることから始めます。
今、この目の前にあるモノたちは、今の私に、
要......「必要なのか?」
適......「ふさわしいのか?」
快......「心地よいのか?」
を問いかける行為です。
その結果、「不要・不適・不快」と自分自身が判断したならば、潔く手放します。
「不要・不適・不快」と「要・適・快」の入れ替え、代謝を促してこそ、私たちの人生はより健康的に機能します。
つまり、以前住み暮らしていた北陸・石川の家も、このような理由で「断捨離」したのです。
子どもが巣立ち、夫が事業を引退した今、もはや私たち夫婦の暮らしに合う家ではなくなりました。
そうです、家が「不要・不適・不快」になったのです。
具体的には、
不要......夫婦ふたりには家が大きすぎること。計5部屋のうち、使っているのは2部屋。使わない部屋があるということは、空間が不要、その家が不要ということ
不適......間取りが合わないこと。2階は主に夫の仕事場だったが、引退した今、その空間が必要なくなった
不快......暖房効率が悪く、室内の温度差が激しいこと。冬は縮み上がるほど寒い
家も、そのときどきの「要・適・快」に合わせるということです。
「不要・不適・不快」に縛られて、人生を重たくしたくないですからね。
定年後、どこで暮らすかは自由
「家」について考えを巡らせたら、土地、コミュニティーにも広げて、「要・適・快」と「不要・不適・不快」を考えてみましょう。
たとえば、家は古くて使いづらいけれど、地域のコミュニティーは気に入っていて捨てがたいと思うなら、その場所に留まって家をリフォームしてもいいでしょう。
あるいは、同じ地域の中で、小さい家に引っ越すのもいいでしょう。
しかし、たいていの人は、何も考えず、何も決断せず、今住んでいる家にただ住み続けているのです。
住み続けることがあたりまえ、とでもいうように。
定年後は、会社に縛られることはありません。
突然の転勤もありません。
自分が好きなところに住めるチャンスです。
現在、日本全国各地で空き家問題があります。
たとえば、田舎にある古い家を思いきって買い、都会と行ったり来たりする生活をするのもおもしろいかもしれません。
あるいは、旅行で訪れたよさそうな場所に移り住むのもいいでしょう。
各地で移住支援プログラムもあります。
選択は自由です。
今住んでいる土地で一生暮らさなければいけないということはなく、「田舎」に帰らなければいけないということもないのです。
私が何より伝えたいこと、それは「もっと自由に生きよう!」ということです。
家に縛られずに、土地や地域やコミュニティーに縛られずに。
今は自分の手で、「足かせ」を全部はずしていく時代です。
私は結婚した当初、「地方半分、都会半分で暮らすのが私の理想」と夫に話したことがありますが、40年の年月を経た今、ようやくそれが実現したのです。
もともと私は、「縛られたくない」という欲求が強いタイプ。
縛られていると感じると、腹立たしく感じたり萎縮したりしてしまいます。
40年間の地方暮らしは、そんな欲求を内部にふつふつとためていた時期でもあり、50歳を過ぎてそのマグマが一気に噴き出たカタチです。
家も心も人生もすっきりする『定年後の断捨離』記事リストはこちら!
流行語にもなった「断捨離」の著者が移住先の自宅を初公開。常識に縛られない「断捨離」の考え方や実践法が詰まっています