人生の大転換期である「定年」。その後の暮らしが不安と言う方も少なくないでしょう。そんな人生の後半を楽しむためには、生活空間にあるあらゆるモノを点検し、先の人生を共にしたいモノを選び抜くことが重要だと「断捨離」の考案者・やましたひでこさんは言います。そこで、やましたさんの著書『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(大和書房)から、「不要・不適・不快」を捨てて、「要・適・快」を招き入れられる「人生の断捨離」のヒントを連載形式でお届けします。
定年後の「食」空間とは
ひとり暮らし、ふたり暮らしであるにもかかわらず、とても食べきれる量ではない食品が隙間なく空間に詰めこまれている――そんな冷蔵庫、心当たりはありませんか?
私の実家もまさにそんな冷蔵庫でした。
父と母、ふたりの生活なのに、あるいは父が亡くなって母ひとりの生活になったのに、「いったい何人家族?」と考えこんでしまうような有様です。
食べ物の鮮度もさることながら、こうまでして食品をためこんでしまうのはなぜなのでしょうか。
冷蔵庫に食品をためこみつつ、毎日スーパーに買い物に行くのです。
そんな奇怪な行動には、こんなシンプルな理由があります。
私たちは、毎日気分で食べる。
私たちは、毎日気分が変わる。
だから、昨日仕入れた食品は、一昨日仕入れた食品は、1週間前仕入れた食品は、奥へ奥へと詰めこまれていく。
当然、食品は賞味期限切れに。
スーパーで画一的な量で提供されている食品が、個々の家庭の消費量と一致することじたいが稀です。
たとえどんなに気をつけていたとしても、使いきれず余りものが出てしまうのは無理もないこと。
そう、私たちは、今日食べたいものを、今日食べたいのですから。
冷蔵庫が冷蔵庫でなく、食品の墓場と化している冷蔵庫を、どれだけ見てきたかわかりません。
一方で、やみくもに奥へ奥へと押しこんだ目も当てられないような冷蔵庫とは別に、一応全体を把握し、一見統制のとれている冷蔵庫もあります。
残りものはタッパーに移し、作り置きもし、そのタッパーを幾重にも重ね、空間を埋めている冷蔵庫です。
賞味期限は逐一チェックされ、管理は行き届いています。
しかしながら、こんな冷蔵庫の空間の有様がどうかが問題なのではなく、肝心なのは、冷蔵庫にいったいどれだけの「自分の食べたいもの」が保存されているかどうかです。
冷蔵庫にいっぱい食品が詰まっていればいるほど、なぜかそこに食べたい食品がないと感じませんか。
まるで、ぎっしり詰まったクローゼットに着たい服が見当たらないように。
冷蔵庫の中のほとんどが、食べたくない食品、食べられない食品と化しているのです。
定年後は、「食」を制限する外的要因はありません。
朝、電車の時間を気にしながら朝食をかきこむことも、昼の1時間で同僚と社食を食べることも、夜、接待を兼ねた宴会でお酒を飲むこともなくなります。
定年後は、食べたいものを、食べたい時間に、食べたい人と、味わって食べることができるのです。
ぜひ、「食」の喜びを取り戻してください。
冷蔵庫の断捨離3ステップ
毎日使う冷蔵庫。だからこそ、新陳代謝が命。
賞味期限切れの食品、数年前から眠っている調味料が、ファーストステップでこんなに出てきましたよ。
【ステップ1】冷蔵庫を開け放ち、中身をすべて水平面に出して俯瞰する。
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【ステップ2】賞味期限が切れているものから断捨離し、「食べたいもの」を意識して絞りこんでいく。
↓
【ステップ3】「見えない収納」は、空間に対して7割以下の量を目安に、「とり出しやすく、しまいやすく、美しく」を念頭に収めていく。
イラスト/福々ちえ
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