人生の大転換期である「定年」。その後の暮らしが不安と言う方も少なくないでしょう。そんな人生の後半を楽しむためには、生活空間にあるあらゆるモノを点検し、先の人生を共にしたいモノを選び抜くことが重要だと「断捨離」の考案者・やましたひでこさんは言います。そこで、やましたさんの著書『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(大和書房)から、「不要・不適・不快」を捨てて、「要・適・快」を招き入れられる「人生の断捨離」のヒントを連載形式でお届けします。
抱え込んだ荷物を今、下ろそう
現在、50代以上の人たちは、高度経済成長期からバブルが弾ける1990年代にかけて、「たくさん持つのがいいことだ」という価値観を植えつけられてしまったところがあります。
モノに対する欲求をはじめ、地位、名誉といった社会的な欲求についても同じ。
あらゆるものを手に入れるのが幸せになることだと考えていました。
そして今、その頃にためこんだモノが重荷となっている人が少なくありません。
私が断捨離という引き算の解決法を提案したとき、いちばん多かった反応は、「捨てていいんですね!」でした。
みな、捨ててはいけないと思いこんでいたのです。
「もったいない」という思いにとらわれて、全部抱えこんでいたのです。
今ようやく捨てること、手放すことの方向に少しずつ動き始めました。
生きるために必要なモノは、それほど多くありません。
基本的に、人は目の前にあるモノしか使えないからです。
バッグを10個持っていたとしても、「今」という時間に焦点を合わせたら、1個しか持つことはできません。
そのときそのとき、その場で活用するなら、本当に1個でいいのです。
モノは状況に応じて、流れていくもの。
今、これを手放しても、また目の前に新たなモノ、必要なモノが流れてくるという信頼感があれば、少ないモノで満足できます。
人生の「身軽なランナー」になろう
たとえば、真夏の炎天下でフルマラソンに挑戦するとします。
ゴールにたどり着くまでに飲料水が足りなくなるのではないかと心配し、リュックサックに何十本ものペットボトルを入れて走っていたら、それこそ重くて大変です。
一方、コースの途中にある給水ポイントで水を飲めるという安心感と信頼感があれば、余計な重荷を背負わなくても済みます。
そのときその場で必要な水だけ飲んで、身軽に走ることができるのです。
「所有」にこだわると、過去や未来のぶんまで抱えこんで、「今」が重くなってしまいます。
身軽なランナーと、多くのモノを抱えこんだランナー、その疲労と消耗の度合いに差が出るのは明らかですね。
人生には、そのときどきにかつがなくてはならないモノがあります。
だから、そのとき、その場で、下ろせるモノは下ろしていきたい。
それが、断捨離です。
未来への不安や過去の栄光(経歴・実績)にとらわれていると、今の自分に何が必要なのかわからなくなり、モノを捨てられなくなってしまいます。
逆にいうと、今、自分に何が必要なのかがわかれば、余計なモノを手放すことができるのです。
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