人生の大転換期である「定年」。その後の暮らしが不安と言う方も少なくないでしょう。そんな人生の後半を楽しむためには、生活空間にあるあらゆるモノを点検し、先の人生を共にしたいモノを選び抜くことが重要だと「断捨離」の考案者・やましたひでこさんは言います。そこで、やましたさんの著書『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(大和書房)から、「不要・不適・不快」を捨てて、「要・適・快」を招き入れられる「人生の断捨離」のヒントを連載形式でお届けします。
「いつも同じ登場人物」ではつまらない
いつも同じ相手と一緒にごはんを食べて、会話をして、テレビを見て......という生活は、平和で心穏やかだといえるでしょう。
これを安定的刺激と呼ぶこともできますが、私に言わせれば、なんの進化もない、すなわち退化ということ。
今、この空間にあるものといえば「人」と「モノ」です。
一緒にいる人も空間にある「気」のうちと考えると、そこには新陳代謝が必要です。
組織もそうですよね。
同じ幹部でがっちりメンバーが固定されていたら、まちがいなくその組織は退化します。
人の人生を1つのステージととらえたら、いつも登場人物が同じということはありえません。
この場面では夫が登場するけれど、別の場面ではボーイフレンドが登場してもいいのです。
こういう話をすると、顔をしかめる男性もいるかもしれませんが、ご自身はどうでしょうか。
仕事や趣味で出会った女性と食事するとき、「やましい気持ちがないから問題ないんだ」と言い張りますが、妻が同じことをすると「けしからん」と言ったりするわけです。
私も老若男女、いろんな友達がいます。
そして、「今日のテーマ」によって登場人物は変わります。
共通の会話を楽しむ人という財産といったらいいのでしょうか。
こう考えると、自分も心地いいし、相手も心地いい。
もし趣味の場に夫を連れてきたら、夫にとっても迷惑です。
編集者の女性もこんな話をしていました。
「仕事の話はわかっている人としないと。1から説明するのが面倒だし、イヤなことを話して追体験するのも気分が悪いので、夫には話しません」と。
趣味の話は趣味の場の人と。
仕事の話は仕事場の人と。
洋服を着替えるように、会う人も変える。
いつも普段着ばかりではなく、時にはドレスも着たいですからね。
相手を気持ちよく送り出す、そんな自分であること
世の中には、夫婦だから何もかも話す、家族だからすべてを共有するという考え方もあります。
しかし人は、それぞれ秘密を抱えて生きているものです。
それがお墓まで持って行くような秘密なのか、一定期間黙っている程度の秘密なのかはともかくとして。
人生はいろいろあってしかるべきなのに、それをことさら明らかにする必要はないのです。
ある受講生さんのお父さんは、社交的なタイプ。
バリバリの仕事人間でしたが、定年退職後は友人とあちらこちらへ出かけていきます。
それについてお母さんは、「お父さんは自分ばかり遊んで、私を映画に連れて行ってもくれない」とグチるそうです。
もし映画が見たければ、ひとりで観に行ってもいいですし、一緒に観に行きたければ、お母さんから誘ってもいいわけです。
相手に依存してしまったら、本人が苦しくなるだけ。
お母さんにも手芸などの趣味があり、それに対してお父さんがとやかく言うことはないようですから。
人生の後半戦、好きなことをして、好きな人と会いましょうよ。
本当は恋愛もめいっぱいしたらいいと思いますが、恋愛となると面倒なこともいろいろあるでしょうから、その一歩手前あたりを愉しむのもいいでしょう。
人生のいろいろな「場面」を共有できる、いい男友達、いい女友達をつくる。
そのためにも、夫婦お互いに、「どうぞ、どうぞ」と相手を送り出せるような自分であることが大切です。
「あなたばかり好き勝手して!」と思うと、夫婦関係がおかしくなるのです。
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