老後資金に「2000万円の準備を...」と言われても、すぐに作れる人はなかなかいません。そこで、社会保険労務士歴20年の岡久さんが著した『2000万円もってないオレたちはどう生きるか―60歳からのリアル』(自由国民社)から、老後の不安を解消できる60歳からの生き方のヒントを連載形式でお届け。人生のシミュレーション、今こそやるべきです。
周りの人が絡みやすい「定年人」になれ!
再雇用制度は一見雇われる側に有利なように見えますが、そうでない面もあります。
企業側にとっては長くてあと五歳で定年の人に在籍してもらうよりも、可能性のある若い社員を雇ったほうがよいに決まっているのです。
いずれにしても、現役時代より働く環境や周りの人たちの目は厳しくなると理解してください。
そんなマイナス要因を跳ね返すためには、予め相当の覚悟と頑張りが必要だと肝に銘じ準備しておくとよいです。
ここで再雇用された際の注意点を四つあげておきます。
(1)すべてを一旦リセットする...
いくら同じ会社の同じ職場で再雇用されたといっても、まずは退職して雇用契約を再締結するわけですから、これまでの経験や人間関係を一旦リセットする必要があります。役職がなくなれば、これまでの部下が上司になることもあり、それまでの言葉遣いも変わらざるを得ません。
役職がなくても自分が先輩なのだから、年下の上司でもタメ口でもよいだろうと、勝手に解釈していると、周りから疎まれ嫌われて次の契約時に更新されない可能性もあるのです。まずは「そこまで気を遣わなくてよいです」「丁寧にし過ぎですよ」と言われるくらいの応対を目指しても間違いないでしょう。
(2)自分の役割を再認識する...
再雇用によって、自分に求められることも変わってくるので、それを自分なりに確認することから始めます。周囲の人たちも本人に対しては気を遣って「これをやってください」とは言いづらいので、周りを見ながら自分で感じ取っていくことが大切です。さらに、担当する仕事がなさそうなら、自ら「これをやりましょうか」と率先垂範するとよいでしょう。
(3)自分でできることは自分でする...
これまで部下や周りの人に依頼していたコピーや資料作りなどの単純作業も、すべて自分でこなすことを基本にします。新入社員に戻った感覚で仕事に従事するなど、真摯な態度で取り組めば、周りからもリスペクトしてもらえるようになります。
(4)自分の話をするより人の話を聞く...
自分から発信するより受信して、それに対して応えてあげるようにすれば、経験豊富な年上の相談相手として認識されます。そういう噂はすぐに広がって、あなたの存在価値が上がること間違いなしです。まずは話しやすい雰囲気を造り出すだけでもよいので、日頃から心がけることが大切です。
至極当然のことと思われるかもしれませんが、自分のことになるとなかなか行動できないものです。これらを常に意識しておくとよいでしょう。
再雇用時の"奥の手"のメリットとデメリット
"定年人"にとって再雇用制度は優先して検討すべきですが、もう一つ"奥の手"があります。「再雇用」契約ほど収入も減らず、業務内容もこれまで通り、そしてモチベーションも保てるという一石三鳥の方法です。それは、会社と雇用契約ではなく業務委託契約を結ぶ方法です。つまり会社という組織に所属して働くのではなく、会社から業務を請け負うというやり方です。
形式としては会社員ではなくなりますが、個人事業主ということになるので、"定年人"が気になる老齢厚生年金支給停止の対象にはなりません。
ここで本題から少しそれますが、再雇用と年金支給の話をしておきましょう。
年金受給が可能になる六十歳や六十歳を過ぎて働く場合、一定以上の収入を得ると、年金の一部または全部が支給停止になります。
現在、年金の支給開始年齢は徐々に六十五歳支給開始へ移行しつつありますが、前述したように「特別支給の老齢厚生年金」というものがあり、まだ一部の年齢の人については、六十歳代前半で年金を受給することが可能です。
年金支給と給与所得を受ける場合には、「支給される年金額」と「給料の合計額が月に二十八万円を超える場合」に年金が一部支給停止となるのです。六十五歳以降になると、その金額が四十七万円となります。
ですから契約を結ぶ際には、その辺をよく理解しておくことが大切です。
60歳になると迎えるあなたのリアル「2000万円もってないオレたちはどう生きるか」記事リストはこちら!
誰もが将来不安を覚える「生活、仕事、お金、心、住まい、健康」の6テーマを章ごとに紹介。60歳になると何に対峙しなければならないのか、リアルな状況が理解できます