苦労した甲斐あり!2階に住み着いた女ドロボウが...ついに引越し!?/別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!


こんにちは、島影真奈美です。「健康保険証がなくても、これまで通りに通院可能」という状況をつくることで、健康保険証を預けてもらうことに成功した前回。次なるミッションは介護保険証の扱いです。自宅に届く介護保険証をいかになくさず、キープできるか。ケアマネさんと一緒に知恵を絞ります。

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なんとか、義父母から預かることに成功した健康保険証。でも、まだ介護保険証をどう保管するかという問題が残っていた。

65歳になったときに交付されていたはずの介護保険証は、義父母ともに紛失している。ふたりとも「そんなもの、あったかしら?」「もらった記憶もない」と言っていた。大事な書類がしまってありそうな引き出しを探してみたけれど、それらしきものは見当たらない。

ただ、今はまだいいのだ。もうすぐ、要介護認定の結果と一緒に新しい介護保険証が送られてくる。問題は、この新しい介護保険証をいかになくさず、キープするかなのである。

介護保険証は義父母の自宅に郵送で届く。だいたいの発送時期はわかるけれど、ピンポイントで日付や時間の指定はできない。介護保険を使って介護サービスを利用するための手続きには、介護保険証が必要。もしなくしたら、再発行することになる。でも、その再発行される介護保険証も郵送で届くので、受け取った義父母がなくしたら......の無限ループに陥る可能性があった。なんだ、この罰ゲーム!

のちに所定の手続きをすれば、介護保険証は子どもの住所に送ってもらえることを知るのだけれど、当時はその発想がまずなかった。

一刻も早く介護保険証が届いてほしい。要介護度を把握して、それをふまえた介護サービスを導入したい。でも、義父母に介護保険証をなくされると、手続きが滞るどころか、要介護度がいくつかもわからない。マジか!

担当ケアマネの鈴木さん(仮名)に相談すると、すぐに介護保険証の発送日を役所に確認してくれた。また、義父母にも「大切な書類なので、届いたら預からせてくださいね」と交渉してくれた。そして、義父母はとくにいやがる様子もなく、あっさりOKしたという。

この頃、義父は繰り返し、「新しく鍵付きの引き出しを購入したい」と訴えるようになっていた。義父曰く「家内が鍵付きの引き出しにしまったものが、なくなっている。泥棒が鍵を持っているようなので、新しくしたい」という。

義父の希望をかなえたほうがいいのか、それとも逆効果になるのか。判断がつかず、鈴木さんに相談すると、こんな答えが返ってきた。

「認知症の方に限らず、高齢の方は『金庫や鍵付きの引き出しが欲しい』とおっしゃる方が多いんですが、増やしたら増やしたで鍵をなくしてしまったり、使い方がわからなくなったり......と混乱されることも少なくなくて。できれば、これ以上は増やさないほうがいいと思います」

本人では管理が難しくなっているからこそ、トラブルが起きる。そのトラブルを防ぐために、さらに管理しなくてはいけないものを増やすのは本末転倒だというわけだ。

鈴木さんのアドバイスに従い、鍵がかかる収納を増やす代わりに、家族が代わりに預かる仕組みを整えていくことにした。

「自分たちでできる」「他人の助けなんていらない」という思いと、あったはずの場所を探しても、ものが見つからないという現実。その狭間でいらだち、不安に駆られている人たちに納得してもらうには、それなりに時間と手間もかかる。

ただ、労力をかけた価値はあった。口を開けば「2階の泥棒が!」と訴え、45リットルのゴミ袋いっぱいに貴重品(と本人は呼んでいるもの)を詰め込み、風呂にまで持ち込んでいた義母が、少しずつ落ち着いていった。

「2階にいるあの人、どうやら引っ越すみたいなの」と言い出したときは驚いた。さらに、調子のいい日は「今まで泥棒のせいだと思っていたけど、私がどこかになくしちゃったのかも」と言ったりもする。ただ、完全に、ものとられ妄想がなくなったわけではなく、「せっかく出て行ってくれたと思ったのに、また戻ってきちゃった」という話になったりもする。

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こちらも少しずつ慣れてきて、慌てずに対応できるようになっていた。どう対応すると穏やかな反応を引き出せるのか、コツがわかってきた気もする。このあたりはまた別の機会に紹介したい。

●今回のまとめ
・認知症に、書類紛失の心配はつきもの。対応はひとりで抱え込まずに、ケアマネさんや他の家族も一緒に、みんなで知恵を出し合うのが◎
・親の希望であったとしても、鍵付きの収納を増やすのは要注意。増やさずにすむなら、増やさないほうがいい

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イラスト/にのみやなつこ

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。朝日新聞「なかまぁる」にて「もめない介護」を連載中。

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